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テンセントの子会社で中国最大手の音楽配信サービス「テンセント・ミュージック・エンターテインメントグループ(TME、騰訊音楽娯楽集団)」が、音楽コンテンツ制作領域での発言権獲得に向けたさらなる動きをみせている。同社は先日、シンガポールで開催された音楽見本市「Music Matters」の場で新たな「CTS」戦略を発表した。コンテンツ、テクノロジーおよびサービスの3大要素によって事業成長を図り、音楽を軸として音楽の大衆化に向けた各業務を拡充させるというものだ。同社は今後も、音楽をメインとしたバラエティ番組、ショートMV(ミュージックビデオ)、オーディオブック、インターネットラジオ番組といった多様な体験をユーザーに提供していく方針を示した。
それと同時に、同社はシンガーソングライターを支援するプラットフォーム「騰訊音楽人」や音楽ライブ配信、カラオケアプリ「全民K歌(We Sing)」などでのイベントを通じて、さらに多くの人々が創作活動に参加することも支援していきたいと考えている。このほか、業界を超えた協業も強化し、ゲーム、映画、ドラマ、スポーツなどのオリジナル音楽制作も手掛けていく。
TME副総裁でコンテンツ協力・著作権管理部の総責任者を務める潘才俊氏は、ゲームや映画を音楽と掛け合わせることで、大きな相乗効果が生まれると考えている。同社は2019年第2四半期に20作品以上の映画・ドラマに100曲以上の楽曲を提供しており、その中から同社傘下の三大音楽プラットフォーム「QQ音楽」、「酷狗音楽(Kugou)」、「酷我音楽(Kuwo)」上で合計2000万元(約3億円)以上の販売額を記録したヒットアルバムも誕生している。また今年5月には大人気ゲーム「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」とのコラボレーションを実施し、ゲーム音楽作品をリリースした。
潘氏によれば、国外では映画・ドラマ音楽を非常に重視し、1000万ドル(約10億7500万円)以上の資金を投入するケースも少なくないという。だが中国では、映画・ドラマ制作側が主体的に楽曲の制作や宣伝に取り組むことをまだそれほど意識していない。
とはいえ、国内でもこれまで数多くの映画・ドラマ音楽作品がヒットし、世の中の話題となってきたのも事実だ。TMEはすでに「騰訊視頻(テンセントビデオ)」や「騰訊遊戯(テンセントゲーム)」と提携しており、今後はさらに多くの映画・ドラマ制作会社や国内外のゲーム制作会社との協業を進める計画だ。同社の場合、親会社のテンセントが映画やゲームといった数多くの自社リソースを傘下に抱えている。また音楽コンテンツは生活シーンとのつながりが最も密接なコンテンツでもあり、ほぼ全ての生活シーンを活性化させることができる。各業務との協業は、より大勢のユーザーに接触する上で有効な手段なのだ。
映画やドラマ、ゲームといったチャネルの開拓によって、ミュージシャンにさらなる活躍のチャンスを提供することもできる。有名ミュージシャンを支援するだけでなく、無名のシンガーソングライターにとっても良いアピールの場となる。著作権料の上昇に伴い、「網易雲音楽(ネットイース・クラウド・ミュージック)」やTMEは近年、シンガーソングライターのサポートに注力することで、高額な著作権料をめぐる負担を軽減すると同時に、著作権市場のパイを獲得することにも成功している。インターネット関連調査会社「艾瑞(iResearch)」のデータによれば、中国の音楽著作権市場の規模は、2013年の18億4000万元(約280億円)から昨年には188億3000万元(約2830億円)にまで拡大している。
とはいえ、利益をめぐってはレコード会社と音楽ストリーミングプラットフォームとの駆け引きが発生する。潘氏によれば、TMEはレコード会社との共同制作という方法で協業を進めるという。音楽ストリーミングプラットフォームの提供する多元的なアピールの場は、新人の売り出しも進めたい既存の著名レコード会社にとって魅力的であり、この協業チャンスをみすみす見逃す手はない。コンテンツでは一歩秀でた既存の音楽レーベルも、デジタルプラットフォームの重要性に気づき始めている。
(翻訳・神部明果)
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