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米テクノロジー見本市「CES」では、中国企業は長らくコストパフォーマンスが良いというイメージを持たれてきた。来場者の1人によると、2020年のCESでは中国企業の展示ブースで、価格が15ドル(約2200円)の電気ポット、30ドル(約4400円)のペット用ウォーターサーバー、10ドル(約1500円)を下回る米アップルの「AirPods」類似製品を見かけたという。
しかし、今年のCESにおいて中国の多くの出展業者は低価格のイメージ脱却に力を入れていた。ここ数年、東南アジアは国を挙げて製造業を発展させ、中国から低価格の大旗を引き継ぎつつある。東南アジアのメーカーが参入したことで、ローエンド市場で利益をあげる余地はますます小さくなった。そのため多くの中国メーカーは、利益を拡大できそうなハイエンド市場に路線を変えざるを得なくなっている。
さらに、消費市場の回復によりハイエンド製品に有利な市場環境が生まれ、人工知能(AI)技術の進歩も家電製品に新たな展開をもたらして利益の余地を生み出した。
ハードウエアメーカーがハイエンド市場に参入
3年にわたる消費の低迷を経て、2023年7~9月期に家電メーカーはようやく回復の兆しが見えてきた。また、大規模言語モデル(LLM)の普及がもたらしたAIの追い風も、メーカーがハイエンド市場に進出するきっかけとなった。
東南アジアがサプライチェーンの土俵に上がったことで、ハードウエア製品から得られる最大利益がますます低くなった。多くの家電メーカーは製品の付加価値を高めるため、システムや機能、コンテンツ、エコシステムといったソフトウエアに工夫を凝らすようになった。
さらにAIを導入すれば、家電製品はパーソナライズやカスタマイズといったハイエンド市場のニーズに応えられる。今年のCESでは多くの企業がAIを使ったハイエンド製品を発表した。
ホログラフィック・ディスプレイを手がける「達斯琪全息(DSeeLab Hologram)」はCESで、ホログラフィック文字映像生成スピーカーを発表した。これまで企業と官公庁をターゲットにしてきた同社は、消費者向けのハイエンド製品を初めて発表。AI生成コンテンツ(AIGC)技術が採用された透明なスピーカーの表面には、メロディーに合わせて歌詞が自動的に表示される。
周全CEOによると、スピーカーの価格は決して安くない。それにもかかわらず、歌詞が浮かび上がるこのスピーカーは、パーティー好きな多くの外国人来場者を魅了したという。
LEDライトのメーカーとして海外進出している「智岩科技(Govee)」は今年のCESで新製品「Sync Box Kit 2」を発表した。
この製品はHDMI経由でGoveeのライト製品をゲーム機やPCに接続し、AIアルゴリズムによって、ライトの光をゲームやビデオコンテンツと連動して変化させるものだ。北米市場で発売される予定で、まだ価格は明らかにされていないが、第1世代「Sync Box Kit」の200〜300ドル(約3万~4万4000円)を下回ることはないだろう。
6年前に設立されたGoveeは海外で、価格が最高99.99ドル(約1万5000円)のLEDラインライトや、音楽に合わせて色が変わる169.99ドル(約2万5000円)のフロアライトといったハイエンドライトを発売してきた。ハイエンドなスマートライトはホリデー文化の色濃い欧米市場で実需のあることが証明されている。2020年に同社の売上高は年間2億ドル(約300億円)を超えた。
同社の広報責任者は海外のスマートライト市場について、DIYからスマート制御、そして現在のIoTへとかなり速いスピードで移り変わっており、製品や技術の改良が追い付かなければすぐに市場から淘汰されるとの見方を示した。
一方で、中国市場のマーケティングや販売チャネルは海外に比べて複雑かつ過酷なため、それを乗り越えてきた中国企業は海外のハイエンド市場で生き残る強さがあるという。
*2024年2月4日のレート(1ドル=約148円)で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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