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中国の動物園はかつて親が子どもを連れて遊びに行く場所だったが、ここ数年、若者たちが足しげく通う場所となっている。1~5日の労働節(メーデー)連休期間中、四川省成都市の成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地と都江堰繁育野生化研究センターの「パンダ谷」には延べ32万3千人の市民や観光客が訪れ、江蘇省南京市の紅山森林動物園の来園者数は上海ディズニーランドと肩を並べるほどだった。
動物園ブームの背景には何があるのか。多くの若者は何よりも、目新しいものを追い求める傾向がある。動物園には種々様々な「スター」が数えきれないほどおり、魅力的な容姿の動物や独特の習性を持つ動物が、いつの間にかネット上で人気を集め、若者たちの足を動物園に向かわせている。
紅山森林動物園(南京市)のトップスター、シロガオサキの「杜杜(ドゥードゥー)」は、全身が黒で顔だけが白いというインパクトのある容姿からネットで人気となり、多くの若いファンや観光客の注目を集めている。統計によると2023年の同園の来園者は、60%近くが20~30歳の若者だった。他にも、北京動物園の「脱走名人」として知られるパンダの「萌蘭(モンラン)」や成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地で暮らすネット界のスーパーアイドル「和花(ホーホワ)」、ガチョウに「いじめられた」子どものトラとして有名になった山西省の臨汾動物園の「奶豆(ナイドウ)」など、いずれも高い人気を誇る。
ネットで新たに象徴的な意味が与えられた動物たちは、若者に「情緒的価値」を提供するようになった。例えば、カピバラはいつも気分が安定しているように見え、目を細めてゆったりと草を食べる姿が「サラリーマンの30年後」と評され、通信アプリのスタンプで人気のキャラクターとなった。同園の白亜麗副園長によると、人々は野生動物に自身の感情を投影している。トラが木の幹に頭を乗せ、目を細めて水中に横たわって休む姿を見ては、くつろぎぶりが絶妙だと感嘆し、眠っているコアラの前で長い間立ち止まりその気楽な生活をうらやむといった具合に、動物に感情移入するネット上の投稿に多くの人が共感し、その動物に会うために動物園へやって来るという。
圧倒的な人気を誇る「スター動物」ともなると、当然ながらグッズにもなる。紅山森林動物園の場合、入場料は40元(約900円)、年間パスポートは80元(約1800円)だが、「40元払って入り、関連グッズに400元(約9000円)使って出る」のが多くの来園者にとって、お決まりのパターンとなっている。「杜杜」のブラインドボックス(箱入りのおもちゃ)、ウインクする金絲猴、ペリカンのポーチ…愛らしいグッズの魅力には抗えず、人々は思わず財布のひもを緩める。あるネットユーザーは「手ぶらで紅山から出られる人はいない」と冗談めかして投稿をする。この購買意欲を刺激する強力な能力は、上海ディズニーの人気キャラクター、ダッフィー&フレンズにも匹敵する。
紅山森林動物園の沈志軍園長は「もっと若々しくなるためには動物園らしくないことも必要だ」と語った。今日の動物園は、動物を見たいという来園者のニーズを満たすだけでなく、エンタメ性やサービス体験を提供し、より流行に敏感で活気のある場所に変化を遂げた。(新華社北京)
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