過剰生産に価格急落、欧米の関税…苦悩する中国の太陽光メーカー 中東が救世主に

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業編集部お勧め記事注目記事

過剰生産に価格急落、欧米の関税…苦悩する中国の太陽光メーカー 中東が救世主に

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国の太陽光発電産業は世界有数の規模を誇る。2023年にはシリコン材料、シリコンウエハー、電池、モジュールの生産能力が世界一となり、モジュールの生産能力に至っては全世界の80%以上を占めている。太陽光発電のコンサルティングを手がける資源総合システムによると、23年1~6月の太陽光発電モジュールの世界出荷量は、1位がジンコソーラー(晶科能源)、2位が天合光能(トリナ・ソーラー)、3位がロンジソーラー(隆基绿能)と、いずれも中国企業だった。

しかし急速な発展は生産能力過剰と価格急落という深刻な問題をもたらした。業界全体で生産能力は4倍になったが、利益率は7割低下した。ジンコソーラーの李仙徳会長は、中国市場では太陽光発電産業の全体的な製品価格がすでに低水準にあると述べている。中国太陽光発電大手・協鑫集団(GCL Holdings)の朱共山会長も、業界の無秩序な競争に対し警告を発している。過去2年間、資本の煽り立てと企業のやみくもな拡張の結果、生産能力は急増し、それに伴って利益率は急激に低下した。 現在、大手のロンジソーラーが巨額の損失を計上し、多くの企業の株価が半減しているのも、業界全体が危機に直面していることの表れだ。

中国の太陽光パネル、生産過剰で24年7〜9月期も価格下落の見通し

このようななか、過剰な生産能力を解消するための鍵となるのがグローバル市場であり、これまで欧米市場がその主要な役割を担ってきた。2011年以前は、中国の太陽光発電製品の57%が欧州へ、15%が米国へ輸出され、国内で販売されたのはわずか6%だった。しかし11年に欧米で反ダンピング関税・反補助金関税が実施され、中国の太陽光発電企業は壊滅的な打撃を受ける。大企業はこれを回避するため、14年から東南アジア経由で欧米に販売することに決め、現地に工場を建設した。

しかし欧米は中国企業への圧力をさらに強めている。欧州では今年「ネットゼロ産業法(The Net-Zero Industry Act)」が採択され、太陽光発電モジュールの4割をEU域内で生産し、現地の生産能力を優先して調達することが求められた。米政府も5月14日、中国製の電気自動車(EV)やEV用リチウムイオン電池、太陽光パネル、鉄鋼・アルミ、クレーンなどの輸入関税を大幅に引き上げると発表した。EVの関税は現行の25%から100%に、太陽光パネルは25%から50%に引き上げられる。また、東南アジア経由の迂回輸出を防ぐため、東南アジア4カ国に対する調査を開始した。

米国、中国製EVの関税100%に引き上げ 太陽光パネルも50%へ

一方、中東地域は中国と貿易面で蜜月関係にあるため、太陽光発電製品の重要な輸出先となりつつある。

中東地域は石油や天然ガス資源が豊富だが、新エネルギーの分野は立ち後れている。世界的なエネルギー構造の転換に伴い、中東諸国もクリーンエネルギーを重視するようになった。また、中東地域は日照時間が長いため、太陽光発電を開発する環境としては非常に恵まれている。

現在、アラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアなどの国々は壮大なクリーンエネルギー計画を打ち出しており、その中でも太陽光発電に重点が置かれている。サウジアラビアは2030年までに太陽光発電の設置容量を40GWに増やし、今後7年間で約5倍増加させる計画を立てている。

中国の太陽光発電製品は、この2年間で続々と中東市場に進出してきた。2022年~23年にかけて、北アフリカと中東への太陽光発電モジュールの輸出容量は連続して10GWを突破し、特にサウジアラビアとアラブ首長国連邦で急速に増加した。たとえば、サウジアラビアへの太陽光発電モジュール輸出額は、22年の3億1000万ドル(約499億円)から、23年は13億4000万ドル(約2160億円)に伸び、第6位の輸出先にもなっている。なお、日本は8位だった。

産油国も「脱石油依存」。中東諸国が中国EVメーカーへの投資を選ぶわけ

中国企業は製品の輸出だけでなく、現地に工場を建設し、中国の設備や技術の海外進出もけん引している。半導体ウエハー大手のTCL中環新能源科技(TCL Zhonghuan Renewable Energy Technology)やトリナ・ソーラーなどはサウジアラビアに工場を建設することに決め、太陽光発電大手・協鑫科技(GCL Technology)も海外でシリコン材料工場の建設を進めている。また、電力インフラ建設大手・中国能源建設(China Energy Engineering)がサウジアラビアで請け負っている2.6GWの太陽光発電所プロジェクトは、建設中の単一の太陽光発電所としては世界最大規模を誇る。

2024年に入ってもこの勢いは衰えていない。中国が24年1~4月に中東へ輸出した太陽光発電モジュールは容量ベース約10.3GWに達し、前年同期から188%もの増加となった。このうち、サウジアラビアは4月だけで、アジア太平洋市場の59%にあたる1.4GWを購入している。

強力な生産能力と先進的な技術・効率を備える中国の太陽光発電産業にとって、中東地域への進出には大きな価値があるのかもしれない。

*1ドル=約161円で計算しています。

(翻訳・浅田雅美)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録