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乗用車向けバッテリーの分野で激しい価格競争を繰り広げている中国の車載電池大手「寧徳時代(CATL)」が、EV化の進む商用車市場にも照準を合わせている。
CATLは7月4日、商用EV向けバッテリーの新ブランド「天行」を発表した。CATL商用車部門・最高技術責任者(CTO)の高煥氏によると、天行は小型商用車向けバッテリー「Lシリーズ」を打ち出し、超急速充電版と長距離版という2つのバージョンで展開しているという。超急速充電版は4Cで急速充電ができ、12分で60%の充電が可能、長距離版は500kmの航続距離を持つ。
CATLによると、天行Lシリーズは30~200キロワット時(kWh)、実航続距離150~500kmで、急速充電とレンジエクステンダーに対応しており、あらゆる物流シーンをカバーできるという。天行のバッテリーはすでに、自動車会社13社の商用車21車種と量産協力に至っている。
商用車のEV化率は2024年に入って上昇している。全国乗用車市場情報連合会(CPCA)の崔東樹・秘書長によると、19~21年には商用EVの普及率はまだ3%程度だったが、24年5月には19%に達しており、23年の9%から10ポイント上昇するなど、急速に普及が進んでいる。
しかしCATLの調査によると、商用EVは充電速度が遅い、輸送距離が短い、総合コストが高いなどの欠点を抱えている。例えば、片道の輸送距離が230kmの場合、ドライバーは往復で4回充電しなければならず、充電1回には概ね1時間を要する。思い通りに充電できないことや、高すぎるコストを心配するあまり、エネルギー節約のためにエアコンをつけず、汗だくで運転するドライバーもいるという。
天行Lバッテリーの2つのバージョンもそれぞれ、こうした課題に照準を合わせたものだ。例えば超急速充電版は、容量が140kWhで航続距離は350km、わずか12分で60%まで充電することができるので、都市近郊や都市内での配送など、時間の制約がある場合でも柔軟に対応できる。
長距離版は長距離輸送に特化して作られ、航続距離は500km、200kWhの大容量設計だ。重量も車両全体で最大300kgの軽量化に成功し、1000km以上の都市間長距離輸送の際にも、充電回数を大幅に減らすことができる。例えば、北京市から内モンゴル自治区フフホト市まで、あるいは雲南省昆明市から貴州省貴陽市まで輸送する場合、長距離版の商用車ならば途中で充電する必要はない。
バッテリーには非熱拡散技術を導入し、航空機クラスの断熱材などを採用している。負極材料には低リチウム消費グラファイトを用い、4C急速充電と共に電池の寿命を100%向上させることに成功した。また、チップにはモジュールが不要な第3世代CTP(Cell to Pack)技術を採用し、大面積の二層液冷と組み合わせることで、バッテリーを軽量化しながら航続距離を向上させた。
このほか、8年間・80万kmの品質保証も付属しており、商用車ドライバーのコストを効果的に削減するだけでなく、中古車の残存価値を高めることも可能だ。
天行Lシリーズは主に物流分野向けだが、CATLによると、さらに多くの分野の商用車に向けた製品のリリースを計画しており、商用車のEV化を支援していくという。
(翻訳・北村一仁)
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