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日本にいながら海外の雰囲気を味わえる点が受け、コロナ禍でブームになったガチ中華。人々が気軽に海外に行けるようになった現在はどうなっているのだろうか。筆者も直近1年海外で生活しており変化を追いきれていないので、ガチ中華の店舗にQR コードメニューを提供している「ID」の楊さんに聞いた。
競争は激化、中国国内同様の「内卷」
2024年1月に公開した記事で、ガチ中華が供給過剰になり、これまで日本では食べられなかった中国の地方料理を出す店が増えたり、居酒屋やカフェなど中華料理以外の店を経営するなど「脱ガチ中華」の動きが出ていることを紹介した。
楊さんによると2024年も東京・上野、池袋、新宿ではガチ中華出店がまだまだ活発だ。一方で、「神田、新橋、田町などで居酒屋やラーメン屋を出店する店も多いです。中華は競争が厳しいので日本人向けの店に切り替えているケースもある」という。
中国では競争が激しすぎて消耗戦に陥る「内卷」という言葉が流行語になっているが、同じような状況が日本の中国人社会でも起きているのだ。
筆者も1年ぶりに海外から帰国して、Google Mapで都内の店舗をチェックすると、保存していたガチ中華の店が10店舗以上閉店していた。自身のブログで紹介した店もぱらぱらと閉店している。四川料理や火鍋など、似たような店が増えていたので客の奪い合いになったり、あるいは料理人の奪い合いになったりして、経営が行き詰まるケースが増えている。
閉店した店舗に別のオーナーが新たにガチ中華を出店することもあれば、日本人をターゲットにしたラーメンや居酒屋をオープンすることもある。
コロナ後は出店が難しい
楊さんの会社はスマホからQRコードを読み取って注文できるメニューを、ガチ中華や居酒屋などに提供しているが、中国人オーナーから「立地が良い出店場所がないか」という相談を受けることが増えたそうだ。
緊急事態宣言が発令され飲食店が大きな打撃を受けたコロナ禍の数年間は、飲食店の撤退が相次ぎ、不動産オーナーにとってテナントを借りてくれる中国人経営者はありがたい存在だった。しかしコロナ禍が収束すると出店が活発になり、駅前や1階などの立地が良い場所は軒並み埋まっている。賃料もコロナ禍前の水準に戻った。マンションやアパートも同様だが、外国人に物件を貸したがらない不動産オーナーが多いこともあり、中国人経営者が立地のいい場所に安い賃料で出店するのが非常に困難になっているのだ。
10月に上野を歩くと、駅前に中国でチェーン展開する湖南料理や火鍋店がオープンしているのを見かけた。資金力があるから駅チカの好立地に開店できたのだろう。コロナ以降、中国から先進国に移民することを意味する「潤」(潤の拼音がrunで、run[逃げる]と同じで、原義の潤うとのダブルミーニング)が話題になった。大型チェーン店のオーナーは中国で資金を持っており、日本へ移住したいと考えている人も少なくない。飲食店を経営することで日本の経営・管理ビザが容易に取得できることもあって日本へ出店を検討しているという背景もある。
楊さんの会社にも中国でチェーン展開している飲食店から日本での出店に関する相談がきており、店舗探しをサポートしているという。競争が激しくなる中で「潤」が背景にあるガチ中華の出店というのも今後増えていきそうだ。
(文・阿生)
阿生
東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng
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