工作機械の高度化・国産化が追い風。中国メーカー、スピンドルモーターで10億円を調達

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工作機械用スピンドルモーターの製造を手がける中国メーカー「博華精密主軸(Bohua Precision Spindle)」がこのほど、5000万元(約10億円)の資金調達を実施した。出資者は公表されていない。

博華精密主軸は1999年に設立され、高性能なスピンドルモーターの設計や開発、製造に特化しており、江蘇省蘇州市に本社を、無錫市に工場を置いている。主な製品は、旋盤やマシニングセンター、研削盤向けのスピンドルモーターで、3C(コンピュータ・通信機器・家電)や自動車、航空宇宙、医療機器などの分野で幅広く活用されている。

スピンドルとモーターが一体となったスピンドルモーターは、工作機械の「心臓」と呼ばれる中核部品で、工具やワークを回転させ、加工の精度や効率、仕上がりに影響を及ぼす。製造業の高度化とスマート化に伴って普及が進んでおり、高速回転で精度が高く、騒音が少ないなどの特長がある。

国家統計局のデータによると、中国で2023年の金属加工用工作機械の出荷台数は61万3000万台で、スピンドルモーターの市場規模は27億8900万元(約590億円)に上った。高性能な工作機械の導入が進めば、スピンドルモーターの市場規模は30年までに100億元(約2100億円)を超えると予測されている。

同社の朱文博社長によると、中国ではスピンドルモーターの普及が加速しており、国産の製品への切り替えに伴う大きな需要が見込まれるという。「工作機械メーカー世界トップ20社のほぼ全てがスピンドルモーターを採用しており、工作機械の90%にスピンドルモーターが使われている。一方で中国の状況は全く異なる。中国にある工作機械のうち90%は依然としてモーターを内蔵していないスピンドルを使っており、スピンドルモーターの普及率は10%に満たないうえ、そのほとんどを輸入に頼っている」と説明した。

博華精密主軸は設立当初からスピンドルモーターの開発と製造に力を入れ、中核技術を開発することで技術的な優位性を確立してきた。2012年に米アップルのエコシステムに参入したほか、ODMの藍思科技(Lens Technology)にはガラス彫刻マシニングセンター用スピンドルモーターを供給している。

主力製品は、次世代の軸心冷却式スピンドルモーターだ。朱社長によると、中国では最先端の製品で、国産のスピンドルモーターへ切り替えるニーズに応えた。軸心冷却技術は超精密加工用の工作機械に使用され、スピンドルモーターの回転子と軸受けを循環水で冷却しながら温度上昇や熱膨張、振動を抑え、剛性と回転速度を向上させる。同社はその他にも、穴あけ・フライス加工や彫刻のマシニングセンター用スピンドルモーター、研削盤用スピンドルモーターなどさまざまな用途の製品を展開している。

スピンドルモーターを構成する中核部品の90%以上は自社で生産している。人工知能(AI)を使った有限要素法シミュレーションによる設計やミクロンレベルの加工技術によって、スピンドルモーターの効率的な設計と量産を実現させ、歩留まりは99.1%以上に達するという。朱社長は「当社はスピンドルモーターの設計にニューラルネットワーク・アルゴリズムを導入し、開発の効率と製品の性能を大幅に向上させた。そして、この技術革新が他社との競争に打ち勝つためのカギを握る」と話した。

また、中国にはスピンドルモーターのメンテナンスサービスを提供する企業が極めて少ない中、同社の専門チームは、難しいメンテナンス作業をこなせるだけでなく、その成功率も95%を超えるという。

3C向けガラス製品の彫刻マシニングセンター用スピンドルモーター市場で、同社のシェアは50%を超える。今年はアップルのサプライチェーンに関わる企業と共に、スピンドルモーターの新製品を開発する予定だ。

朱社長は「新エネルギー車や航空宇宙などの業界が発展するのに伴い、高性能な工作機械の部品に対する需要が拡大している。中国が精密加工のレベルを上げるためには、スピンドルモーターの技術進歩が必要になる」との見解を示した。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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