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飲食店の経営には「三高一低」、すなわち高額な家賃、人件費、材料費と低い利益率がつきものだ。
飲食業界も他の業界と同様、コスト構造改善に向け段階的な自動化を進めている。ロボットが人手に替わり作業を行うことで、価格面でのメリットもさらに高まるほか、標準化された料理の提供が可能となるため、同一基準に基づく店舗数の急拡大が実現できる。だが飲食業界の自動化推進における最大の課題は、ロボットが料理人の作業プロセスを完璧にコピーし、同水準の料理を提供する必要があるという点だ。
このため、現時点での業界の活用例をみると、自動化設備が最初に導入されたのは洋食やドリンクといった調理工程のシンプルな分野となっている。例えばロボットを活用したピザの調理・宅配を手掛ける米スタートアップ「Zume」はソフトバンクが15億ドル(約1600億円)の投資を行ったことで知られる。またミルクティースタンド「茶里小怪獣(TEA MONSTERS)」やカフェ&バー「Ratio」もロボットアームをキッチンの調理器具と組み合わせ活用している。
スマート調理器「超小厨(SUPERCOOK)」を手掛ける「北京故亭科技(Beijing Gutingkeji)」は、中華料理の調理法の中でも最も複雑で、標準化が難しい「炒め物料理」でのブレイクスルーを優先課題としている。同社は3年間の研究開発を経てスマート調理器を製品化し、関連特許も取得した。この調理器は本体と具材パックからなり、使用時には具材と調味料が入ったパックを本体の上に乗せ、スマートフォンのアプリで該当するメニューを選べば料理が自動で完成するというものだ。
飲食業界で20年の就業経験を持つ創業者の楊剛氏は、中華料理をめぐる標準化の重要性とその難しさを身に染みて感じていると話す。店舗数拡大の過程では、料理人の募集と育成、料理のレベル、提供効率などがいずれも制約となり得る。
数ある中華料理のジャンルの中でも、「炒め物」の標準化が最も難しい。市場には数多くの自動炒め機がすでに存在するが、人間が材料を投入すると、本体が回転するかまたは具材を混ぜる回転羽が作動する仕組みのものが多い。実際の利用者の話を聞くと、一度に全ての具材を投入すると満足のいく料理が完成しなかったり、機械のふたを開け数回に分けて具材を投入する必要があったりするなどのデメリットがある。このほか、利用者自身で具材の分量をコントロールする必要もあり、完成度も安定しないという。
超小厨は具材と調味料が全て詰められた「具材パック」によりこの問題の解決を図っている。また、調理器は料理人の手順と同じように材料を順序よく自動投入してくれる。楊氏によると、同社は調理工程を細分化した上で各ステップの主要パラメータを固定し、これによりレベルの高い完成度を実現している。同社は現時点ですでに100種類以上のメニューを準備しており、将来的にはバックエンド機能を大手飲食店や料理人に提供していく計画だという。
具材パックについては、まずは事業者向けから始め、それから一般消費者向けに開発を進める。大手飲食店は一般的に自社のセントラルキッチンを保有しており、具材を準備できることから、専用の具材パックを作るにも最後にパッキングの工程を追加するだけで済む。パックは食品衛生基準を満たした耐熱性のものを採用しており、コストは一つ当たり1元(約16円)以下だが、将来的に量産が進めば価格がさらに下がり、再利用も可能になるという。
事業者向け調理器の価格は1万6800元(約26万円)で、料理人の2カ月分の賃金に相当するものの、調理の効率は料理人に引けを取らない。人件費削減に加え、調理場のスペースもコンパクトに抑えられる。
同社はさらに、価格を大幅に抑えた一般消費者向け調理器の開発も進めており、リースや無償提供といった方法で消費者にリーチしていく。一般消費者向けの具材パックについては、レストランや社区(中国独自の地域コミュニティ、行政単位)と提携し、消費者が社区で受け取れるようにする。今月には大連で初のモデル店舗のオープンも予定している。
楊氏は、飲食業界のサプライチェーンにおいて中間流通を短縮し、川上の原材料生産の段階で具材パックを作り、レストラン、家庭、企業および学校などの最終顧客に直接配送できるようにしたいと考えている。同社の初代製品は市場に投入されたばかりで、現在は初回の資金調達活動も進めているところだ。
(翻訳・神部明果)
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