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ロボットの触覚センサーを開発する中国スタートアップ「戴盟機器人(Daimon Robotics)」がこのほど、追加のエンジェルラウンドで1億元(約20億円)を調達した。出資には、金鼎資本(Jinding Capital)や国中資本(Guozhong Capital)、レノボ・キャピタル(聯想創投)、大手銀行系の投資機関などが参加。資金は、光学式触覚センサーや触覚機能付きロボットハンド、ロボットに触覚などの機能を持たせるマルチモーダルAIといった製品および技術の開発に充てられる。
2023年8月に運営を開始した戴盟機器人は、香港科学技術大学(HKUST)ロボティクス研究所の初代所長・王煜教授と段江嘩博士が共同で設立した。人間が指先で物に触れた時と同じように、ロボットハンドに力覚や振動感覚、滑り覚などを正確に感知させる触覚センサーの開発に注力している。メンバーは30人以上で、うち研究開発担当が8割以上を占める。
人型ロボットは大きな可能性を秘めた巨大市場だ。市場予測によると、世界の人型ロボット市場には10兆元(約210兆円)を超える成長の余地があり、2030年の市場規模は1000億元(約2兆1000億円)近くに達すると見込まれる。
しかし、人型ロボットの量産が実現するにはまだ時間がかかるという。創業者でCEOの段博士は、人型ロボットにさまざまなタスクをこなす能力が備われば、業界が急速に発展するとの見方を示した。
ロボットに視覚センサーを搭載しただけでは、実世界を正確に理解させ、情報を効率的にやり取りすることは難しい。視覚センサーで、物体の検知や環境理解は向上させられるが、物体が別の物体で隠されると感知できなくなってしまう。触覚センサーを通じて取得したデータが少ない現状では、ロボットの汎用AIをトレーニングするのが難しいため、ほとんどのロボットハンドは物をつかむという単純な機能しか持てていない。
そこで同社は、厚さをセンチ単位からミリ単位に薄くした視覚・触覚センサーを開発した。このセンサーはロボットハンドの内部に設置しやすく、周囲に対するロボットの検知能力を向上させる。
段博士によると、人間の指先には1平方センチ当たり約2400個の触覚受容器があるが、同社の視覚・触覚センサーは、触覚受容器数十万個分の感度を持つという。「当社の視覚・触覚センサーは、従来のアレイ式センサーよりも解像度が数万倍から数十万倍も大きい。解像度が高いほど、触覚センサーは微小な空間を検知できる」と話した。
光学式触覚センサーは、人型ロボットのほかに手術支援ロボット、スマートコックピット、柔らかい素材の加工・組立装置などにも搭載可能だ。すでに小ロット生産と実用化が進んでいる。
触覚はロボットの動作だけでなく、エンドツーエンド(E2E)のトレーニングと論理的推論でも重要な役割を担う。ロボットに器用な動きを習得させるため、同社は触覚・視覚・動作のデータを融合したAIモデルを開発し、ロボットが触覚と視覚を通じてリアルタイムで動作を調節し、細かいタスクをより効率的に進められるようにした。
人型ロボットの大規模な活用を難しくしている別の要因は、実世界のトレーニングデータを大量に集めなければならないことだ。視覚や言語、姿勢のデータをもとに、リモートコントローラーやセンサーなどに使うAIをトレーニングする従来の方法では、必要なデータ量は極めて多くなる。
同社の触覚センサーを導入すれば、ロボットAIのトレーニングに必要なデータ量は従来の1000分の1となるうえ、ロボットが実行できるタスクの種類が増え、成功率も向上するという。
段博士によると、同社はデータ収集の効率化と質の向上を目的に、ロボット本体を使わずにデータを集めるための外骨格を開発した。人がこれを装着しながら仕事や日常生活で動作をすれば、外骨格の触覚センサーがデータを収集・転送し、それをマルチモーダルAIのトレーニングに利用できる。また、試験的にこの外骨格を社外にも開放し、一定期間にわたり装着した人には相応の報酬を支払うことにした。すでに一部のホテル従業員が使用しているという。
*1元=約21円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)
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