「ラブホテル」と「ガチ中華」が合体する池袋、経営者に「相乗効果」を聞いたら意外な答えが返ってきた 【中華ビジネス戦記】

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ガチ中華の集積地として知られるようになった池袋北口エリア(東京)は、昔からラブホテル街の顔も持つ歓楽街だ。そして最近、ラブホテルの1階に広東料理のガチ中華「老鴨大( ヤミーダック)」が出店した。芸術点が高すぎる絵面が気になり、大きなお世話ながら店の経営者に出店の狙いを聞いてみた。

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ネオン街とガチ中華の相性の良さ

香港・広東スタイルのローストダックやローストポークなどを提供するヤミーダックは、シドニー在住の中国人が創業し、本店はオーストラリアにある。

日本の店舗は在日中国人がフランチャイズで展開しており、2023年オープンの駒込店(東京)を皮切りに、2024年に池袋(同)、2025年に高田馬場(同)に出店した。駒込のセントラルキッチンで料理を作り、各店舗へ配送しているそうで、どの店舗でも同じ味を楽しめる。


池袋の店舗はラブホテルの1階にあり、ホテルのネオンと中国語の看板が1枚の写真に収まるが画角に、心のざわつきを抑えられない。

池袋や西川口などガチ中華で有名なエリアは、昔からの風俗街であることが多い。ガチ中華に限らずベトナム系などの外国系料理屋全般もそうした立地に積極的に出店する印象がある。

日本人を相手にした飲食店なら、キャバクラや風俗店が入居しているようなビルだと客が入りづらいだろうし、経営者も出店を躊躇するだろう。

だが中国人オーナーはまったく気にせずに出店する。客が中国人ばかりなので、日本社会で共有されている「入りづらさ」を気にする必要がなく、かつ利便性の割には賃料が割安な傾向があるからだ。

そもそも西川口は風俗店の摘発でテナントが空いたところに、そのエリアの評価やイメージを気にしないガチ中華料理店が入居したことでチャイナタウン化していった歴史がある。

風俗店と接するガチ中華の店はかなり多い

勇気を出して行ってみた

6月上旬、件(くだん)のヤミーダックに足を運んでみた。店内はテーブル席が4つしかなく、最大でも8人しか座れない小さな店だ。

中国人女性店員は「ウーバーイーツやハングリーパンダ(日本で展開する中華系フードデリバリー)の注文の方が、店内で飲食するお客さんの数より多い」と話す。たしかに筆者が滞在した30分の間に、ハングリーパンダのアプリから注文が入ったことを知らせる音が4〜5回響き渡り、ウーバーイーツの配達員が商品を受け取るために2〜3回来店した。フードデリバリーメインの店であるならば、ラブホテルの1階で営業するデメリットはさらに小さくなる。

ヤミーダック経営者にラブホテルの1階に出店した理由を聞くと、「なぜそんなことを気にするんですか?」と逆に聞き返されてしまった。オープンから1年以上経っているが騒音や客とのトラブルも無いという。

店内はテーブル4席のみとかなり小さくフードデリバリー中心だ

店内はもちろんホテルとつながっているわけでもなく、入口など含め完全に切り離されている。女性店員によると、ホテルから直接出前するシステムもなく、「もしホテルの客がうちの料理を食べたいなら、ウーバーイーツかハングリーパンダで頼むしかないね」という。

ホテルの利用前後に店を利用する客がいるのかも気になったが、「そんなこと言われてもわからないわよ。まぁお客さんの大半は中国人だよ」と「質問の意図が分からない」とでも言うような返事だった。経営者にも同じ質問をしたところ「知らんわ」と一言だけ返ってきた。筆者が食事をした際も他の客は仕事の合間に来たとみられる男性2名連れだけだった。

絵面的にはホテルとガチ中華が「合体」しているようにも見えるが、客層も違い、客も店舗側も互いを気にすることなく各々営業しているようだ。それはそれで勿体ない気がするが……。

広東系の料理人が駒込のセントラルキッチンで調理しているだけあってヤミーダックのローストダックとローストポークはおいしかった。入りにくいのは承知の上で、一度足を運んでみてはいかがだろうか。

ローストダック、ローストポークのレベルは高い

文:阿生

東京で中華を食べ歩く会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。X:iam_asheng

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