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ロボットハンドを手がける中国スタートアップ「源升智能機器人(Dexcel Robotics)」はこのほど、初の製品となる5本指ロボットハンド「Apex Hand」を発表した。バランスのとれた性能が特徴で、21の自由度を備え、応答速度や加速度は人間の手に近い水準。指1本で物を押す力は2.5キロ、可搬重量は30キロ。独自開発の電子皮膚を搭載しているため表面が柔らかく、硬質な素材だけで作られているロボットハンドに比べ、対象物や作業環境に柔軟に適応できる。
Apex Handはとても器用で、片手でスマートフォンを操作できるほどの細かなマニピュレーションが可能。人間の指の機能を評価するカパンジーテストで満点を獲得した数少ないロボットハンドのひとつだ。さらに脈をとる、マウスを操作するといった動きはもちろん、表面がつるつるした物をつまんで容器から取り出したり、はさみなど日常的な道具を使ったりすることもできる。
源升智能は2024年末に設立された。創業者の楊思成CEOはかつてテンセント(騰訊控股)のロボット研究部門「Tencent Robotics X」の中心メンバーを務め、李望維CTOはシンガポール国立大学で博士号を取得している。同社はこれまでに50本近い論文を発表し、100件以上の特許を出願、25年8月には追加のエンジェルラウンドで数千万元(数億円超)を調達したことを発表した。資金は量産ライン建設と実用化の検証に使われる。
ロボットハンドと触覚センサーすべてを内製しており、脳を模倣した世界初の超高時空分解能触覚処理技術も開発した。通信遅延1ms未満、同時1万点超の触覚データ伝送、1000Hz超のリフレッシュを実現。
ロボットハンドの市場では、安定して納入できる高性能製品が不足し、エンボディドAIの実用化にあたって大きなボトルネックとされてきた。しかし、2024年以降にAIモデルの性能が飛躍的に向上し、強化学習によって自由度の高いロボットハンドを制御する技術が徐々に現実のものとなってきたことから、楊CEOは創業の機が熟したと判断した。
Apex Handの初期導入は、既存の自動化では対応が難しかった柔軟組立など半構造化の工場現場を最優先とする。家庭など非構造化環境への本格展開は、ハードの堅牢性・データ運用・AI能力の三位一体が十分に熟した段階で進める方針だ。
「自由度は多いほど良い」という通念に対し、楊CEOは「21の自由度があれば人の手の機能をほとんどカバーできる」と考えている。これ以上はアクチュエータ数の増加に伴い制御の複雑化とコスト膨張が急増し、商用バランスを損なうと判断している。
中国の市場調査会社QY Researchは、世界のロボットハンド市場規模は2030年に50億ドル(約7400億円)を上回ると予測する。この巨大市場で攻勢に出るためには、製品の出荷能力もカギになる。Apex Handが量産段階へ滑らかに移行できるかが、同社の次の成長カーブを決める。
*1元=約21円、1ドル=約148円で計算しています
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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