100万円で“遊べるマイクロEV”が話題に。「タイヤ付きテック」ASTRAUX、欧州Z世代を直撃

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毎年独ベルリンで開催される国際コンシューマ・エレクトロニクス展(IFA)。今年の会場で最も注目を浴びたのは、スマート家電でもスマートフォンでもなく、新興テックブランド「ASTRAUX」の超小型電気自動車(マイクロEV)だった。同じく独ミュンヘンの国際モビリティ見本市・IAA MOBILITY 2025ではなく、コンシューマ・エレクトロニクス展への参加を選んだことから、製品の差別化を図るASTRAUXの戦略が透けて見える。このマイクロEVは、従来の自動車の概念を覆す「タイヤの付いたテック製品」とも言えるものだ。

ASTRAUXは、中国自動車大手・吉利控股(Geely)の傘下企業とスマホメーカー・魅族科技(Meizu)の合併によって設立された星紀魅族(DreamSmart)でCEOを務めていた蘇静氏が、アラブ首長国連邦のドバイで立ち上げた。コアメンバーには、極星科技のCOOだった陳思英氏やスマホ大手・シャオミ(Xiaomi)出身の解生氏が名を連ねている。スマホと自動車の両発想をかけ合わせる布陣だ。

エンタメ満載のマイクロEV

このマイクロEVには、エンターテイメント機能が数多く搭載されている。カラオケやアンビエントライト、アプリ連携のほか、オプションで車載プロジェクターを付ければ、車内を映画館やゲームセンター、カラオケボックスに変えられる。また、ハイエンドモデルには車載ドローンが標準装備され、ワンクリックで離陸・自動追尾・撮影ができるなど、モビリティのエンタメ要素が強化されている。

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外観デザインも魅力的だ。アニメキャラクター「ミニオン」を思わせるイエローモデルは、レトロなダッシュボードや大きなヘッドライト、パノラミックサンルーフが備わっている。車体側面の8割以上を占める大きなドアを採用し、10カ所以上のマグネット式収納スペースも設けられた。今後は99種類のボディカラーや季節限定モデルを展開し、個性を求める若年消費者のニーズに応える方針だ。

もちろん、自動車としての実用性もある。駐車しやすいコンパクトな車体で、自宅でも公共スタンドでも充電が可能。米アップルのスマホと車載システムを連携させる「CarPlay」にも対応し、リモートエアコン起動、キーレスエントリー、メンテナンスリマインダーなどの機能を搭載している。

ターゲットは欧州のZ世代

欧州で急速に普及しているマイクロEVは、14歳から運転できる国もあり、環境への配慮や価格の安さがZ世代に注目されている。現在は、シトロエンの「AMI」やフィアットの「Topolino」が市場シェアを握っているが、ASTRAUXは優れたスペックや航続距離に加え、価格の安さで消費者に新たな選択肢を提供しようとしている。

販売価格を見ると、ASTRAUXの小売価格は6990ユーロ(約120万円)、予約購入なら5990ユーロ(約100万円)と、競合製品よりも12.5~60%安い。海外メディアは「ASTRAUXのハイテク感とスペックに触れると、シトロエンのAmiが時代遅れに見える」と評価する。コンシューマ・エレクトロニクス展の会場では、ASTRAUXの展示車や撮影スポットに人だかりができ、体験コーナーは長蛇の列となった。

“ライフスタイル・テック”としての多角化

ASTRAUXは自らを「グローバルなライフスタイルを提案するテックブランド」と位置づけ、従来の自動車メーカーと差別化を図っている。IFA2025では、AIポケットペットとデジタルサングラスも発表し、多彩なラインナップをアピールした。

AIポケットペット「Aimon」は価格89ユーロ(約1万5000円)で、丸みを帯びた球体のデザイン。正面のディスプレイでペットの表情が分かり、デバイスに触れる、揺らすなどの触れ合いを通じて感情が変化する。

価格79ユーロ(約1万4000円)のデジタルサングラスは、800万画素のファースト・パーソン・ビュー(FPV)カメラとオープンイヤー型ヘッドホンを搭載し、米OpenAIの「ChatGPT」との対話や多言語翻訳が可能。紫外線をカットする「UV400」の認証を取得しており、サングラスとスマートデバイスという2つの性能を併せ持つ。

中国EVの新様式

中国のEVメーカーがここ数年にわたり急速に成長する中、ASTRAUXが特に際立っているのは、コストパフォーマンスだけでなく「クールなデザイン、エンタメ機能、ソーシャル性」を前面に、欧州Z世代へ刺さる文法で勝負をかけた。発表の場にIFAを選んだ判断も、同社のマイクロEVを「テック製品」として認知させるうえで効果的だった。

“クルマを家電化する”のではなく、“テックをモビリティ化する”。 ASTRAUXはその転換点を、ベルリンで鮮やかに描いてみせた。

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*1ユーロ=約174円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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