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3Dプリンティングソリューションを手掛ける「黒格科技(HEY GEARS)」はこのほど、シリーズB1で6000万ドル(約65億4000万円)を調達したことを明らかにした。出資者はアラブ首長国連邦の人工知能(AI)、クラウドコンピューティング企業「Group 42」。調達資金は研究開発、川上・川下統合、世界規模での市場開拓、組織強化に充てる。同社は昨年11月、シリーズAでベンチャーキャピタルの米「IDG Capital」などから3億2500万元(約48億7500万元)を調達している。
黒格科技はイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校出身の7人が2015年に設立。歯科、整形外科、クリエイティブ産業、家電機器、小型ウエアラブルデバイスなど多くの分野で3Dプリンティングソリューションを提供している。中でも歯科医療分野に力を入れ、樹脂製の歯(クラウン、ブリッジ)、インプラント用サージカルガイド、歯科模型、歯科精密鋳造などに対応している。
2019年第3四半期(7~9月)時点で、同社の歯科医療分野向け付加製造ソリューションを導入している国・地域は20以上に及ぶ。同社のソフトウエア、ハードウエアを直接または間接的に使用し、世界中で1日に1万点を超える歯科用人工物が作り出されているという。
3Dプリンティング技術をめぐり、同社は材料、設計、生産、設備に関して100以上の特許を取得している。さらに高精度のDLP(デジタルライトプロセシング)光造形スマート3Dプリンターシステム「Ultracraft」を自主開発しており、歯科医療、消費財、電子機器など多くの分野で導入されている。
歯科医療分野での活用広げる
黒格科技は事業発展について、完結したデジタル生産モデルを確立することを理念の中心に据えている。
歯科医療分野では▽歯科用高分子材料メーカーの独「DETAX」と共同で3Dプリンター専用樹脂を開発▽アリババクラウドと共同で自己学習を可能とする3Dプリンター用ソフトウエアアルゴリズムを開発▽3Dプリンティング総合サービスのベルギー「Materialise(マテリアライズ)」と共同で3Dプリンター制御ソフトを開発▽歯科用CAD/CAMを手掛けるデンマーク「3shape」と共同で口腔内スキャナーを設計――などの協業を進めている。
材料、歯型作成、アルゴリズム、ハードウエア、ソフトウエアなど多くの段階で研究開発に関与することで、同社は医療機関、歯科医、歯科技工所などの顧客に原料、技術、製品、サービスを網羅する全面的なソリューションを提供することが可能となっている。
同社の創業者兼CEOの桂培炎氏は歯科医療分野に重点を置いていることについて、同社の価値判断基準を次のように説明した。一つは業界のニーズが3Dプリンティング技術と合致しているかどうか。もう一つはデジタル生産の垂直統合、さらには完結したデジタル生産モデルの構築が可能かどうか。新技術の導入は製品単体での活用、業界での活用、川上・川下業界での活用の順に進んでいくとし、歯科医療業界のように、デジタル生産の垂直統合が実現すれば、スケールメリットによって大きな収益が生み出されるとの考えを示した。
歯科医療分野では比較的3Dプリンターの活用が進んでおり、インプラント、修復、矯正の3つの治療分野で大規模に使われ始めている。競合には3Dプリンターメーカーの米「EnvisionTEC」、米「Stratasys(ストラタシス)」、米「3D Systems」ら海外勢のほか、中国の「聯泰科技(UnionTech)」「先臨三維(SHINING 3D)」らがいる。黒格科技の強みは歯科医療分野を深く理解し、業界が抱える課題に対して全面的なソリューションを提供でき、専門性が高いことから、川上・川下業界の顧客にも認知してもらいやすい点だ。
同社は顧客に無償で3Dプリンターを提供しており、主に消耗品から収益を得ている。このビジネスモデルは顧客側の新技術導入のハードルを引き下げるだけでなく、顧客企業に設備の稼働率を向上させるよう促すことも可能にする。顧客サービスに力を入れることで、3Dプリンターを使用頻度が高い生産ツールへと変えていくのが狙いだ。桂氏は顧客企業が「気持ちよく」使えるようにすることが大規模な収益につながり、販売効率も向上すると考えている。
(翻訳・池田晃子)
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