没入型オーディオ技術開発の「LEONIS」 業界一のチャンネル数で米ドルビーに匹敵か

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モノラルからステレオ、ステレオからサラウンド、そして没入型オーディオへとオーディオ技術は常に進化し、高音質を求めるユーザーのニーズを満たしてきた。米「ドルビー(Dolby)」と「DTS」の2社は長らくハイエンドオーディオ技術の代名詞だった。

「中科雷欧(LEONIS)」は没入型オーディオ技術の開発を行う。同社が開発したHOLOSOUNDは最大256チャンネルで独立した音を流すことができる。「DCI(Digital Cinema Initiatives)」「SMPTE(全米映画テレビジョン技術者協会)」の規格に対応、互換可能で、ハリウッド映画など海外映画にも利用できる。

簡単にいうと、没入型オーディオ技術とはリアルな音を再現する技術のことで、観客は現場と全く同じ音場を体験することができる。映画に使用すれば映像に合わせた音を遠近感を含めて実現可能だ。

具体的なHOLOSOUNDの強みは次の5つだ。

第一に、最大256チャンネルで独立した音を流すことができる。このチャンネル数は他の没入型オーディオ技術の4~16倍となっている(ドルビーは64チャンネル、DTSは16チャンネル)。

第二に、音声オブジェクトと天井スピーカーでリアルなサウンドを実現した「ドルビーアトモス」に比べ、HOLOSOUNDは音場技術にも対応、音の空間分布を再現し、立体空間で動くような音を再現できる。

第三に、点音源(ポイントソース)に対応しており、全てのスピーカーが独立で動作可能。

第四に、スピーカーのレイアウトとして、トップスピーカーとサイドスピーカーのほかに同社独自の「下部スピーカー(Beneath Speaker)」も用意している。

第五に、「没入感の評価指標(Immersive Index)」がドルビーやDTSなどの大手を大きく上回っている。この指標は中科雷欧が作成し、SMPTEやオーディオ技術者と研究者の専門団体「AES(Audio Engineering Society) 」などの国際基準組織に採用されている。

HOLOSOUND技術は主にデジタル映画及び家電の分野で利用されている。

映画分野では、同社の事業はコンテンツの制作から放映まで全プロセスをカバーしており、エンドツーエンドのソリューションを提供している。

同社によると、HOLOSOUNDオーディオ制作システムは現在のところ、国内の映画制作会社「和声創影(Soundfirm Beijing)」「金知了(GOLDEN CICADA FILM)」や米国やインド、欧州などのポストプロダクション会社に導入されている。同システムを採用して制作した映画は300本を超え、大ヒット作品も多い。

上映の際、HOLOSOUNDの効果を最大限引き出すには専用劇場が不可欠だ。中科雷欧は映画館向けに関連機器を提供するなどHOLOSOUND専用劇場向けのソリューションを提供している。注目すべきなのは、HOLOSOUND上映システムが他社の没入型オーディオ及び5.1chや7.1chといったオーディオシステムにも対応していることだ。また、同社はAIを利用した映画館におけるスピーカー配置のソリューションも提供しており、最大で256のスピーカーを設置可能だ。

しかし、同社の馬士超CEOによると、256チャンネルを使うソリューションは一般的にミュージカル劇場やコンサートホールなど、より大規模な会場での没入型体験に利用されているという。現在、HOLOSOUND専用劇場は中国国内で300以上にのぼる。欧州とインドでもそれぞれデモンストレーションを行う劇場を建設済みだ。

経済ニュースサイト「界面新聞(Jiemian.com)」によると、中国ではドルビーアトモスを導入している劇場の数は2000以上にのぼるという。HOLOSOUND専用劇場はもっと増やしていく必要がある。より多くの劇場でより多くの作品を上映することにより、HOLOSOUND採用映画の制作コストを希薄化することができると同時に、より多くの優れた映画がHOLOSOUNDを選択することにもなるからだ。

HOLOSOUND専用劇場を増やす上でカギとなるのは、没入型体験が観客のニーズを満たすことができるか、優れたHOLOSOUND採用映画の数が十分どうか、コストが市場シェアを拡大できるほど十分に低いかどうかだろう。

家電分野では、HOLOSOUNDは主に2つのシーンで利用されている。1つはスマートフォンやタブレット、パソコンなどにその機能を組み込むといった利用方法だ。もう1つはHOLOSOUNDを採用したコンテンツの制作だ。「愛奇芸(iQiyi)」「優酷(Youku)」「騰訊視頻(Tencent Video)」などの動画配信プラットフォームのストリーミングコンテンツのほか、没入型オーディオを必要とするVR(仮想現実)・AR(拡張現実)コンテンツやテーマパーク等での体験型コンテンツにも利用されている。

中科雷欧はすでにスマホ大手の華為技術(ファーウェイ)、愛奇芸などの企業とHOLOSOUND没入型オーディオ技術について高度な提携をしている。

同社開発チームの主要メンバーは「中国科学院計算技術研究所(ICT)」の博士やポストドクター、オーディオ業界で長年にわたる経験を持つ技術者だ。馬CEOはSMPTEやAESの中心メンバーも務めている。
(翻訳・山口幸子)

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