世界的ヒット「LABUBU」の裏側──中国下請け工場で1個0.7円で削る手

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中国アートトイ大手のPOP MART(ポップマート)が打ち出すキャラクター「LABUBU(ラブブ)」のぬいぐるみは、社会現象を巻き起こすほどの世界的ヒット商品となった。初代モデルはオークションで100万元(約2000万円)の高値で落札され、その他の商品も一時は転売価格が1000元(約2万円)以上に跳ね上がり、販売店では転売業者たちが商品を手に入れようと小競り合いするシーンが日常になった。

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しかし、この人気商品の裏側には、何層にも連なる下請け構造が存在する。ぬいぐるみは部位ごと、工程ごとに外注され、末端の労働者は完成品の姿を目にすることもない。自らの手でつくる「何か」が、世界的ヒット商品の一部になるとも知らず、ただ黙々と作業を続けている。

60代の胡さんは江西省出身で、現在は広東省深圳市の郊外に住んでいる。日々の仕事は自宅でソフトビニール製の赤ちゃん人形の顔を仕上げることで、金型成型後に残ったバリ(余計な突起物)をナイフで削り取り続けている。報酬は1個あたり0.035元(約0.7円)、1日に1500個仕上げても50元(約1000円)程度にしかならない。

彼女はLABUBUのことも、ましてやPOP MARTのことも知らず、自分が仕上げた人形の顔がフワフワの体に縫い付けられ、1000元以上で市場に出回っていることも知らない。

夕方になると、胡さんは完成した顔と端材を台車で数百メートル先まで運び、三輪リヤカーに乗った「社長」に引き渡す。周囲には同じ仕事に携わる同年代の女性たちが10人以上集まっている。彼女は「1個あたり0.035元という報酬は、社長がピンハネした後の金額だろう」と語る。実際、工場で人形の顔を作る工程の報酬が1個あたり0.1元(約2円)だと聞いたことがあるからだ。

「この人形の顔、何人の手を経ていくのだろう」と彼女は小さくため息をついた。

胡さんの住む深圳市郊外から6キロメートルほど離れた東莞市は、中国最大の玩具輸出の拠点として知られ、数千社の玩具メーカーが集まり、全国の85%近くのアートトイが生産されている。中国メディアによると、2020年だけでも30社以上の企業がPOP MARTから製造を受託したという。金型へのポリ塩化ビニル(PVC)注入、高温成形、バリ取り、着色、ラベル貼り、ぬいぐるみ部分の縫製、包装などの工程を、それぞれ別の工場や胡さんのような内職者が担当し、高度に細分化された分業ネットワークを形成している。

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ある工場の責任者は、LABUBUの顔の加工費は1個あたり約5元(約100円)で、内職者が受け取るバリ取り工賃0.035元は、何層もの中間マージンを差し引いた「残り」にすぎないと明かす。一方、サプライチェーン上流のソフトビニール工場では、LABUBUの顔を成型する技術者に月給1万元(約20万円)余りが支払われているという。

LABUBUの着せ替え服の縫製も、工場が受け取る工賃は1点あたり2元(約40円)だが、下請けの内職者が受け取る報酬は0.35元(約7円)にすぎない。ところが、完成品の卸売価格はスカートやヘッドドレス付きの3点セットで30元(約600円)近くになり、市場での販売価格は2〜3倍以上に跳ね上がる。

現在、LABUBUの人気は失速傾向にあり、転売価格も下落し始めているが、胡さんの暮らす世界には微塵も関係ない。彼女は今も毎日、彼女は今日もまた、黙々と人形の顔のバリを削り続け、わずか50元の報酬を手にしている。

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*1元=約21円で計算しています。

原文:深圳微時光(WeChat公式ID:szdays)

(編集・36Kr Japan編集部、翻訳・田村広子)

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