DJIが本気の“ロボット掃除機” ドローン技術×透明ボディで競争市場に一石

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ドローン世界最大手のDJI(大疆創新)が今年8月、同社初のロボット掃除機「DJI ROMO」を発表し、消費者向けロボット掃除機市場に本格参入した。ラインナップは「P」「A」「S」の3モデル。中国での販売価格は4699元(約9万9000円)からで、中・高価格帯の市場を狙う。

同社の参入は耳目を集めた。ドローンで知られるテック企業がなぜ、すでに競争が激化しているロボット掃除機市場に参入したのだろうか。

「先頭争いよりも最良の一台」

DJIの意思決定は拙速ではない。2020年にはロボット掃除機の調査研究に着手し、翌年に開発プロジェクトを立ち上げた。当時、中国市場ではすでにエコバックス(科沃斯)やロボロック(石頭科技)などのブランドがシェアを握り、消費者への浸透も進んで、各社が技術力を競う段階に入っていた。ここでDJIが選んだのは、先頭争いをせずに最良の製品を追求する「後発戦略」だ。

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ROMOは、DJIがドローン分野で10年以上にわたり蓄積してきた技術を生かして、スマート性/清掃性能/使いやすさ/静音性を徹底的に磨いた点が特徴だ。

・高度なナビゲーション:LiDARとセンサーフュージョンシステムを搭載し、独自に開発したSLAMアルゴリズムを組み合わせて、センチメートル単位でのマッピングや正確な障害物回避を実現した。テーブル脚やコードのほか、床に落ちたつま楊枝も検知し、従来のセンサーをはるかに上回る安定性を有している。

・効率的な掃除:モップを2つ搭載する一方、メンテナンスを面倒にする複雑な構造をなくした。また、難しい隅部の掃除用に搭載されたロボットアームが、障害物に近づくと自動的に作動して壁際や家具周りを掃除し、効率と信頼性を両立させた。

・究極の静音性:自動車の排気音を抑える原理を応用し、ベースステーションのエアダクトに3段階騒音低減システムを採用した。吸引力や集じん効率を損なうことなく、本体の騒音を80%低減した。

「見せるデザイン」で勝負

DJIは、ロボット掃除機を単なる道具ではなく「インテリア」と位置付けた。ROMOは半透明の本体カバーとベースステーションを採用し、内部の構造をあえて見せることで、デザインや品質に対する自信を示している。そのコンセプトは、ロンドン発の透明スマートフォン「Nothing」(創業者は華人)も想起させる。

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画期的なのは、ベースステーションのセルフクリーニング機能だ。従来のフィルター構造を廃止し、一体型洗浄トレイと16mmの超大型吸引口(断面積は業界平均の6~7倍)を採用。4方向からの高圧水洗浄によって、本体のメンテナンスフリーを実現し、不快な臭いの発生を防いだ。

ロボット掃除機はDJIの終着点ではなく、空間知能技術の開発を進める事業戦略から自然に生まれたものだという。“空から地上へ”と視点を広げ、、検知やナビゲーション、制御などのコア技術をより多くの消費者向け製品に活用する方針だ。ROMOの登場によって、一般消費者にもDJIの技術力による恩恵が及ぶことになるといえる。

世界のロボット掃除機市場は依然として成長基調にある。2024年の世界の売上高は前年比19.7%増で、30年には中国の掃除用家電市場が600億元(約1兆3000億円)に達すると予測されている。DJIの参入は、この巨大市場の勢力図を変えることになるかもしれない。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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