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人工知能(AI)を搭載した医療支援ツールを開発する「零假設信息科技(Null Hypothesis Information Technology)」(以下、零假設)がこのほど、シリーズAで1億元(約20億円)近くを調達した。出資には、荷塘創投(Lotus Lake Capital)や既存株主の元禾原点(Oriza Seed)などが参加。資金は医療支援AIツールの改良や、製薬会社と医師をつなぐプラットフォームの構築に充てられる。
医療支援AIは、画像診断や手術支援ロボット、製薬など幅広い領域で普及が進む。一方、医師に最も負荷がかかる根拠(エビデンス)に基づく医療「EBM(Evidence-based Medicine)」の分野では、効率的な検索・検証ツールが不足していた。
医師は一般的な疾患の診察には慣れているが、希少疾患や先進医療に対しては、世界中の膨大な医学文献やガイドライン、臨床試験の進捗から迅速かつ正確にエビデンスを探し、それをもとに治療方針を決定する必要がある。医師の意思決定を支援するAIツールがあれば、臨床や研究の効率を大きく向上させることができる。この課題に対し、2019年に設立された零假設は、「医療従事者のAIアシスタント」の役割を担うAIツールの開発に注力してきた。
同分野では、米スタートアップOpenEvidenceが今年10月、Google Venturesの主導するシリーズCで2億ドル(約310億円)を調達、評価額は年初の10億ドル(約1600億円)から60億ドル(約9300億円)へと急増した。資本市場がこの分野の可能性を高く評価していることが分かる。
零假設は中国の医療環境に最適化した独自路線を採る。中国の医師は臨床と研究を同時にこなすケースが多く、AIには「簡便さ」「信頼性」「引用可能性」に加え、製薬企業のコンプライアンス要件への適合が求められる。
創業者の顧飛氏は「当社は中国のOpenEvidenceだと思われがちだが、中国では医師の業務スタイルや医薬品の規制が米国と大きく異なるため、医師や製薬会社のニーズを十分に考慮して、サービスの設計やビジネスモデルの構築を進めなければならない」と話す。
同社はターゲットを医師と製薬企業の双方に設定する。製薬会社向けでは、AIによる医学資料作成、コンプライアンスチェック、研修・マーケティング支援を行う。現在、国内外の大手製薬会社30社以上で採用され、医学コンテンツ制作やデジタルマーケティングを支援しているという。
医師向けには医療知見をAIで整理・可視化し、医師の臨床判断を支援するプラットフォーム「KnowS」を提供する。また、製薬会社向けサービスで得た医学データやノウハウを医師向けAIの学習に活用し、より精度の高いサービスを改良していく方針だ。
医療支援AIにとって致命的な弱点は「ハルシネーション(幻覚)」の発生率だ。零假設はこれを抑制するため、独自の医療データベースと検索エンジン、そしてAI監査モデルを開発。ガイドライン、論文、臨床試験データを世界規模で収集し、毎日自動更新している。回答はすべてデータベースに基づき生成され、AI精査により再検証される仕組みだ。顧氏によると、幻覚率は専門家が利用可能な1%未満に抑えたという。
零假設はすでに欧州や日本など海外市場への展開も計画しており、各国の医療制度や医師の業務スタイルに合わせたサービスのローカライズを進める方針だ。
*1元=約22円、1ドル=約155円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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