Vibe Codingはコードを書けるが、仕事は理解しない——“結果を出すAI”に挑むInfCodeが資金調達

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自然でAIに指示を出すことでプリケーションやシステムを構築する新しい開発手法、「バイブコーディング(Vibe Coding)」が注目を集めている。代表的なAIコーディングツール「Cursor」を打ち出す米「Anysphere(エニースフィア)」は、年間経常収益(ARR)が2023年の100万ドル(約1億6000万円)から、24年11月には6500万ドル(約103億円)へと急増し、評価額もわずか4カ月で6倍以上に膨らんだ。

ただ、エンタープライズ(B2B)市場では、こうしたAIツールが本格的に浸透するまでにはまだ時間がかかるとみられる。一般的なAIコーディングツールは、コード生成のスピードが速く、小さなアプリを複数開発するには有効だが、コンプライアンスやリスク管理など企業が求める社内ルールに対応するのが難しく、レガシーコードにも適応できない。

さらに、ツールが担保するのは「コードが正しく生成されたかどうか」だけで、業務上の成果には責任を負わないため、企業の「生産ツール」として定着するには至っていない。

その典型的な例は金融業界にみられる。規制当局は、口座開設にあたりコンプライアンスチェックを必須要件として明確に定めているが、AIツールは一般の公開情報を頼りに、業界ルールを反映しないまま業務プロセスを勝手に設計してしまう。生成されたコード自体は正しくても、企業側からすれば実務では役に立たない「無効なコード」でしかない。

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必要なのは「使える」コードを生成するエージェント

バイブコーディングを企業の実運用にまで落とし込むため、シリコンバレーでは「フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)」という概念が再び注目を集めはじめた。

これは2010年にソフトウエア開発の米Palantir(パランティア)が打ち出した方式で、単にソフトウエアを販売するのではなく、技術と業務の双方を理解したエンジニアを顧客の現場に派遣し、複雑なシステムを実際に運用できるよう支援するというものだ。AI時代を迎えた今、このアプローチが再び脚光を浴びており、AI開発を手がける米OpenAI(オープンAI)や米Anthropic(アンソロピック)なども、FDEを配置した「実運用重視のAIチーム」の拡充を進めている。

こうした流れを受け、中国バイトダンス出身のエンジニア楊萍氏は2025年7月、法人向けにコーディング用AIエージェントを提供するスタートアップ「詞元無限(Tokfinity)」を立ち上げた。同社はすでに、エンジェルラウンドでソフトウエア業界のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)から数千万元(数億円超)を調達している。

主力のコーディング用AIエージェント「InfCode」は、2025年12月に初版が公開され、プラグインと企業向けAIコーディングプラットフォームを組み合わせた形で提供されている。一般的なプログラミング支援ツールとは異なり、InfCodeは単にコード生成を肩代わりする存在ではなく、企業の開発現場で「中堅クラスの開発エンジニア」として機能することを目指す。

AIが生成するコードを企業の実務レベルにまで引き上げるため、InfCodeでは二段階の仕組みを取り入れている。第一段階では、内蔵するMCPサーバーを通じて一般的な業務システムと連携し、AIが社内文書やルールをリアルタイムに参照できるようにする。第二段階では、企業ごとに異なるマイクロサービスアーキテクチャや社内プロセス、レガシーシステムに対応するためのインターフェースを提供し、企業のITチームが軽微な調整を施すだけで運用できるようにしている。

詞元無限が実施した概念実証実験(PoC)によると、提携企業のプロジェクトの開発効率が40%近く向上し、AIが生成したコードの使用可能率が88%以上に達したほか、コードのクオリティーも中堅エンジニアの水準に匹敵したという。

注目すべきは、同社が途中段階におけるAIの生成精度に重きを置くのではなく、人員効率や納期短縮といったプロジェクトそのものの成果を評価軸としていることだ。

AIのコーディング能力を評価する国際的なベンチマーク「SWE-Bench Verified」で、InfCodeは79.4%のスコアを記録し、最高水準(SOTA)を達成した。これはOpenAIの「GPT-5」やAnthropicの「Claude」といった最先端モデルの65%前後というスコアを大幅に上回る結果だ。

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楊氏は、AIエージェントのビジネスモデルは最終的に、RaaS(Result as a Service)という成果ベースの方式に向かい、企業の管理者は投資対効果を明確に算出できるようになると語る。そのうえで「消費者向けコーディングツールの普及により、AIでコードを書くこと自体はすでに企業の開発者にも浸透している。残る課題は、実際の現場を理解するという『最後の1キロ』だ」と説明した。

バイブコーディングが効率化ツールから生産ツールへと変わる転換点に立ち、詞元無限は、スピードではなく確かな成果こそが勝敗を決める鍵であることを実証しようとしている。

*1ドル=約158円、1元=約23円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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