中国自動車世界販売台数トップも、覇権はまだまだ遠い?

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2025年、中国の自動車メーカーによる世界販売台数の合計が、初めて世界首位に躍り出たと言われている。すでに輸出台数で首位を確立していたなか、さらなる躍進を遂げた格好だ。しかし、それが直ちに「中国車の覇権」を意味するかと言えば、疑問が残る。次なる自動車大国としての潜在能力を見せつける中国に対し、いま何が欠けているのだろうか。

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日本経済新聞は2025年12月30日、中国メーカーは2025年に全世界で約2700万台の新車を販売、日本メーカーの約2500万台を超えて首位に立つ見通しだと報じた。ただしこの数字は同紙独自の集計であり、3カ月以上経った現在も最終的な確定値は明らかになっていない。筆者の独自計算でも、約2650万台近い数値を確認できた。日本勢を圧倒する結果とは言えないが、少なくとも数では超えたと言って良いだろう。

「メーカー数の多さ」が支える中国の販売台数

この結果には、メーカー数の違いも影響している。日本はダイハツや日野自動車、「レクサス」を含むトヨタグループがもっとも大きく、資本提携も含めるとスズキやスバル、マツダが加わる。三菱を含む日産自動車や、単独ながらも存在感を発揮するホンダと合わせて「3陣営・8社」が日本の乗用車メーカーとなる。

対して中国では公道走行可能な自動車を生産するメーカーは40社前後、各社が擁するブランドを含めると約70ブランドまで増える。それぞれが束になることで中国勢全体の販売台数はここまで大きくなったわけだが、一方で依然として淘汰のフェーズは続いていることにも留意が必要だ。

新エネルギー車(NEV)の販売で黒字転換を達成したメーカーは5〜6社まで増えたものの、すべてが2030年までに生き残れるわけではない。内需ではシェアを海外勢から取り戻せるほど価格と先進性において優位に立っているが、今後は持続的な経営や商品開発、アフターサポートが焦点となってくる。

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海外市場で活路を見出す中国メーカー

2025年は多くの中国メーカーが海外市場での成長を記録した年となった。例えば、BYDは販売目標を当初550万台としていたものの、のちに460万台へ下方修正、そして最終的に460万2436台を通年で販売した。全体の伸び率は前年比7.73%増にとどまったのに対し、海外販売台数は前年比150.74%増の104万6083台を記録した。

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ここ2、3年の海外進出ブームよりも前から積極的に輸出していた「奇瑞汽車(CHERY)」も、前年比17.4%増となる134万4020台を海外で販売した。値引き競争で国内市場が停滞気味なのに加え、過剰な生産能力を少しでも活かそうと海外市場に着目するメーカーが増えている。これが国内よりも海外でより良い伸び率を記録している一因だ。

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成長市場は東南アジア、次の焦点は欧州

中国車の海外成長を支えているのは東南アジアなどの「成長市場」だ。特にタイでは政府のEV補助金政策により、中国メーカーの電気自動車(EV)は大きくシェアを伸ばした。ただ、この補助金は2025年末で終了したため、今後のEV販売はある程度鈍化するだろう。以前ほどの購入優遇策に頼れない中、どれだけの消費者がEVを求め続けるかが2026年の見どころとなる。

こうした市場に対し、まだ伸びしろがあると言えるのが欧州などの「成熟市場」だ。現状、欧州市場における中国勢のシェアは5〜6%程度にとどまるが、いくつかのメーカーでは欧州での販売拡大を見据えた現地工場や、欧州メーカーの小型車種に勝負を挑む新モデルの投入を計画している。

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その代表例が新興EVメーカー「零跑汽車(Leapmotor、リープモーター)」である。

同社は2025年11月に発表したコンパクトEV「A10」は2026年下半期に欧州で「B03X」として発売予定なのに加え、2026年第3四半期からはスペインのサラゴサ県にて複数モデルの生産を開始する。

2023年に数多くの欧州ブランドを傘下に擁する「ステランティス」がリープモーターの株式を20%取得して以降、同社の支援を受けて中国国外での生産・販売計画を推進している。2024年にはポーランドにあるステランティスの「ティヒ工場」にて最小モデル「T03」の生産を開始したが、計画の見直しですぐに中断された。新たに選ばれたサラゴサ工場では、中国の車載電池大手「CATL(寧徳時代)」のLFPバッテリー用生産ラインも稼働予定だ。そこで生産されたバッテリーを現地生産のリープモーター車種へ供給することで、これまで以上にコストを抑え、欧州市場での競争力を高められることだろう。

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最大の壁は北米市場

中国メーカーは、欧州連合による中国製EVに対する追加関税を回避するべく、欧州メーカーとの提携や欧州圏内での生産、サプライチェーンの構築を進めている段階にある。欧州市場はすでに対策済みといって良い一方、ハードルが依然として高いのが北米市場、特に米国である。

BYDは2024年ごろからメキシコにて完成車工場の建設を計画していたが、中国政府は米国への技術流出を懸念して計画承認を延期、メキシコ政府は米国からの圧力で、板挟み状態のまま一旦白紙となった。

メキシコ市場ではBYDや吉利汽車(Geely)が乗用車を販売しているが、2026年1月よりメキシコ政府は米国に同調する形で、中国製自動車に対する関税を20%から50%へ引き上げた。関税回避とさらなる北米事業の拡大を見据えて中国各社はメキシコでの現地生産を目論むが、ここで注目されているのが日産と独メルセデスベンツが共同で設立した工場だ。この工場は日産の事業再編の一環として売却予定で、BYDと吉利、そしてベトナムの「ヴィンファスト」が獲得に動いている状況だ。新工場を一から建設するのには多くの懸念点がある中、既存の工場の買収はよりハードルが低い選択肢として各社が狙いを定めている形となる。

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トランプ政権はまさに朝令暮改の連続で、中国メーカーにとって参入タイミングを見極めるのは困難なことだろう。また、いざ販売を開始したとしても、欧州やアジア各国とは大きく異なり米国独自の需要を理解して適応、シェアを拡大させるまでにはかなりの時間を要すると見ている。サプライチェーン構築の難しさに起因するコスト増も懸念点だ。2010年代後半からいくつかの中国メーカーが北米進出計画を打ち出してはなかなか実現しないのにはこういった背景がある。争点は「進出するか否か」よりも「いつ進出するか」だろう。

中国メーカーに求められる「次の競争力」

中国メーカーは価格競争力と技術革新を武器に世界市場で存在感を高めてきた。しかし、単なる価格競争だけでは業界全体の消耗を招きかねない。海外市場でシェアを拡大させて煌びやかな新技術をアピールすれば注目されるが、その下には消費者というものが存在し、その存在なくして持続的な経営は実現しないことを自覚する必要がある。

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クルマを売って終わり、充電器を設置して終わりではなく、市場と消費者のことを考えた「長いお付き合い」を築くことができるかどうか。それが、中国メーカーが新の自動車覇権を握るための次の試練となる。

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(中国車研究家・加藤ヒロト)

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