中国でネット利用者数が頭打ち、IT各社の「アプリ工場」化進む

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業編集部お勧め記事注目記事

中国でネット利用者数が頭打ち、IT各社の「アプリ工場」化進む

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国IT大手は2018年以降、一様にソーシャルアプリの集中リリースを始めた。

昨年だけでもテンセント(騰訊控股)は「朋友」や「灯遇交友」などソーシャルアプリ7種をリリース。アリババからは音楽アプリ「唱鴨」が、中国最大のSNS「微博(Weibo)」を運営する「新浪(sina)」からは中国版インスタグラムとも呼ばれる「绿洲(Oasis)」がリリースされている。

「唱鴨」(左)と「绿洲(Oasis)」(右)のアイコン

個人のインターネット利用拡大によるビジネスチャンスが目減りする中で、インターネット各社が共通して選んだのはアプリ分野で成長戦略を描くことだった。その結果、新作アプリが次々にリリースされ、「アプリ工場」と化す企業が増えていった。

快手、バイトダンス、テンセントの新作アプリリリースに見られる経営戦略

短編動画投稿アプリ「快手(Kuaishou、海外版はKwai)」は2018年以降、急激にアプリ工場化を進めており、ゲーム実況と動画投稿を中心に4カテゴリー14種の新作アプリをリリースしている。

新作アプリの布陣からは、主力アプリへの依存度低減、カテゴリーの細分化による潜在的ユーザーの発掘、新たな方向性の模索といった快手の戦略が見て取れる。この戦略の背後には、1日当たりの利用者数(DAU)3億人突破とユーザー規模の拡大という快手の目標がある。

快手のライバル「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)は2018年以降、中国国内で新作アプリ8種を発表している。快手に比べれば数は少ないが、短編動画の他、電子商取引(EC)や電子書籍、SNSなど、アプリのバリエーションは豊富だ。

バイトダンスのアプリは快手に比べ、対象とする市場や製品カテゴリーの範囲が広い。加えてSNS的性質を強調しており、ビジネスモデルが明確で収益化も容易だ。

テンセントは2018年以降、動画投稿アプリ12種、SNSアプリ9種を含む28種に及ぶ新作アプリ(ゲームや一部ツール類を除く)をリリースしている。

テンセント(騰訊控股)が2018年以降にリリースしたアプリ一覧

テンセントは動画投稿やニュース配信分野で遅れをとったが、ITの巨人である同社にとって、特定の分野でトップに立てないことなど痛くもかゆくもない。テンセントにはMAU(月間アクティブユーザー数)が11億人を超えるSNSアプリ「微信(WeChat)」がある。

しかし、バイトダンスが多領域エンターテインメント(汎娯楽)分野で攻勢を強め、テンセントの製品が占めていたユーザーの利用時間を徐々に侵食している。

QuestMobile「TRUTH中国モバイルインターネット・データベース」(2019年9月)より、左からテンセント、アリババ、バイドゥ、バイトダンス

調査会社「QuestMobile」の昨年9月のデータによると、バイトダンス傘下のニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」系(表中では右端)のMAUは前年同期比18.6%増となっており、テンセント系のMAUは伸びてはいるが、その幅は小さいことが分かる。しかもテンセントのアプリは市場シェアを昨年同期より減少させている。

加速を迫られる新作アプリのリリース

中国のモバイルインターネット利用者数の増加は2017年下半期以降、急激に減速し、現在の増加率は3%以下となっている。これは市場全体が既存利用者の奪い合いに入ったことを意味している。

QuestMobile「TRUTH中国モバイルインターネット・データベース」(2019年8月)より

しかし、地方市場および高齢者層や2000年以降に生まれた若年層などの新たな利用者層に関しては、依然として利用時間の増加によるビジネスチャンスが存在する。ECアプリ運営の「拼多多(Pinduoduo)」とニュースアプリ運営の「趣頭条(Qutoutiao)」が過去2年間で台頭したことは、業界に地方市場のポテンシャルを再認識させた。また、短編動画アプリの抖音や快手が地方市場で獲得したアクセス数や利用時間の長さによるビジネスチャンスは、ニッチな市場と顧客層の価値を知らしめた。

QuestMobileのデータより。黄:テンセント系、灰:バイトダンス系、青:アリババ系、赤:バイドゥ系

QuestMobileの昨年9月のデータによると、検索大手の「百度(バイドゥ)」系、アリババ系、テンセント系、今日頭条系と言った業界トップ4社以外のアプリの利用時間が前年同期より3.4%伸びており、中堅以下の企業が力を付けつつあることが分かる。

業界トップ各社は短期間で多くの新作アプリを投入するが、アプリの運営を停止するのも早い。既に完成している製品モデルを踏襲し、投資対効果によって追加投入の可否を決定する。この手法はリソースの利用率を最大限に高め、IT製品の更新をさらに加速する一方、新たな試みや方向性に対する寛容度を低下させ、業界全体の革新の余地を狭めるというマイナスの側面がある。それでも利益追求の圧力に駆り立てられた「アプリ工場」が立ち止まることはないだろう。

作者:「深響」、依民

(翻訳・田村広子)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録