AIだとわかると、むしろ心を開く——「調査会社に頼む時代」を終わらせるTrooly.AI

AIエージェントを活用したユーザー調査のプラットフォーム「Trooly.AI」が、開設から4カ月を待たずにシードラウンドで約1000万ドル(約16億円)を調達した。藍馳創投(Lanchi Ventures)や高瓴創投(GL Ventures)、美団(Meituan)共同創業者の王慧文氏が参加した。

Trooly.AIの主力サービスは、45分間ほどのユーザーインタビュー調査を行うAI音声エージェントだ。設定はわずか10分で完了し、24時間以内にインタビューデータやインサイトレポートを手にすることができる。調査会社に委託するこれまでの方法が1、2カ月かかっていたのに比べ、大幅な効率化となり、コストも従来の20%程度に抑えることができる。

車で寝泊まりする女性の涙を、AIは1時間聞き続けた

ある製品のユーザー調査で、米国の若い女性がインタビューに応じた。Trooly.AIがその製品を使う理由をたずねたところ、女性はしばらく沈黙し、やがてすすり泣き始めた。両親に家を追い出され、車で寝泊りしていたのだ。AIは彼女の感情の動きを素早く察知し、製品の話を続けるのではなく、家庭のことを話すように静かに促した。まる1時間、AIは親身になって彼女の話に耳を傾け続けた。

従来の調査では決して引き出せなかった、購入に至る本当の経緯と感情が浮かび上がった瞬間だった。

興味深いのは、対象者があらかじめ「インタビュアーはAIだ」と告知されていた点だ。それでも——あるいはそれゆえに——女性は心を開いた。人間のインタビュアーが相手だと、声のトーンや肩書、見た目への警戒心が無意識に働く。AIは完全に中立で、判断も先入観もない。その「何者でもなさ」が、かえって本音を引き出す。

共同創業者の王震氏は、「ユーザー調査では、目に見えている事実よりも、背後にあるリアルなストーリーのほうが重要だ」とし、「ユーザーと製品の本当の結びつきを理解してこそ、メーカー側が抱く想定と現実との間にある大きな溝を埋めることができる」と指摘する。

Trooly.AIのインタビュー画面(加工済み)

人間より公正で、物知り

王氏ともう1人の共同創業者・孫皓氏はいずれも、AIチャットサービス「Museland」を手がけたスタートアップの初期メンバーだった。このサービスはDAU(デイリーアクティブユーザー数)ランキングの上位に入り、新規ユーザーの約4割が翌日も利用を継続した。心の支えを求めて、1000回以上やり取りするユーザーもいた。

Zulution AIを辞職して、ユーザー調査の分野で起業を決意したのは、王氏自身のある経験がきっかけだった。クライアントとして外部企業にユーザー調査を依頼し、約4万元(約90万円)を支払った。1カ月待たされてようやく得たものは、たった20数件のサンプルだった。王氏は「待っている間、もっといい方法があるはずだと思った」という。

進むべき方向が明確になったところで、Muselandが培ってきた雰囲気づくり、感情の読み取り、動的な問いかけという機能が、インタビューに必要なスキルと重なっていることに気づいた。王氏は「対話の本質は人とAIのやり取りだ。私たちは共感の構築や感情への反応、対話スキルをすべて1時間のインタビューに凝縮した」と語る。

AIインタビューの技術的な難しさは、大規模言語モデルの性能より、会話テンポのコントロールにある。

「一般的なAIエージェントは相手が黙ると口を挟もうとする。考えこんでいることや悲しみを理解していないからだ」と孫氏は指摘する。Trooly.AIはAIエージェントに雰囲気づくりを学習させている。こうしたコンセプトは画面のデザインにも反映されており、対象者が静かな空間に身を置けるよう、キャラクターは用いず、音声の波形と落ち着いた配色だけで構成されている。

AIエージェントには膨大な専門知識が組み込まれ、ユーザーの文化的背景や回答内容、感情のサインに応じて、質問のレベルを調節できるようにした。「人がインタビューするよりも公正で、しかも物知りだ」と孫氏は語る。2年にわたって取り組んだ結果、市場にある既存のAI調査ツールと明確な差別化に成功した。

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本音は売るが、データは売らない

顧客開拓について王氏は、従来型の営業経験はゼロだと語るものの、これまで自ら訪ねた顧客とはいずれも契約に成功している。法人向けの営業で大切なのは誠実さと洞察であり、話術で押し切るのではなく、顧客の抱えている本当の課題に直接向き合うことが必要だと考えている。顧客企業にとって最大の懸念のひとつは、データセキュリティだ。Trooly.AIは創業当初から顧客データをAIモデルの学習に二次利用しないことを約束し、徹底したコンプライアンスと透明性を掲げている。

ターゲットとする顧客は、ゲームやデジタル機器、ベンチャーキャピタルなど、難しい判断を迫られるうえ、一度の判断ミスが巨大な損失を招くような分野に集中している。こうした業界では高度なユーザー調査に対するニーズが極めて高い。

王氏は「私たちの使命は消費者の声をそのままメーカーに届けることだ」と語る。「もし世界中の製品開発者がこの方法で認識のずれを埋め、リソースの浪費を減らして、本当に役立つ製品を生み出せるなら、それこそが私たちの最大の望みだ」。

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*1ドル=約159円、1元=約23円で計算しています。

(作者:暗涌Waves、翻訳・編集:36Kr Japan編集部)

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