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携帯電話「Blackberry」が8月に販売を終了すると発表して間もなく、台湾のスマートフォン大手企業だったHTCがVIPスマホコミュニティを閉鎖した。
HTCはこれに先立ち、2020年2月7日付で同社の中国公式コミュニティを閉鎖、ユーザーはWeChat(微信)に「HTC公式サービスアカウント」を追加することで、今後もHTCとの連絡を行えると公式コミュニティで発表した。
コミュニティの閉鎖は、HTCが携帯事業を完全に手放すことを意味している。同社のVIPファンコミュニティ「HTC Elevate」では、全ての会員が招待を受けることで同コミュニティに登録でき、そのユーザーの多くがHTCのコアなファンだ。
実のところ、HTCの携帯電話事業からの撤退に意外性はない。同社は2017年9月、同事業をGoogleに売却し、Googleは自社向けのスマートフォン「Pixel」を開発していたHTCの部門を買収、一部特許の利用権を取得した。だがHTCは自社ブランドのスマートフォン事業については売却していなかった。
しかし、それからわずか2年弱の2019年5月、HTC中国の長期経営戦略上の理由から、HTCの「京東(JD.com)」および「天猫(Tmall)」の旗艦店が一時的に閉鎖されることが公式に発表された。HTCはこうして中国本土市場をほぼ放棄することになった。HTCファンの一縷の望みは、同社による公式コミュニティーの閉鎖によって完全に絶たれたことになる。
HTCのスマートフォンは、全盛期にはアンドロイド搭載機の頂点に君臨していた。同社は2008年9月、世界初となるアンドロイド搭載のスマートフォン「T-Mobile G1(HTC Dream)」をローンチ。カスタムROM(ユーザーが独自開発したOSをインストールすること)が流行した当時、HTCが翌年の2009年に発表した「HTC HD2(HTC Leo)」はカスタムROMの神モデルと評されていた。
2011年に同社の事業はピークを迎える。IT専門調査会社であるIDCのリポートによると、HTCの同年の販売台数は約4350万台、グローバル市場のシェアは9%に達し、世界第5位にランクインした。今では想像もつかないが、HTCの時価総額はこの年に2000億元(約3兆2000億円)を突破、Blackberryの製造元である旧リサーチ・イン・モーション・リミテッド(現在は社名もBlackBerryに変更済み)とフィーチャーフォンの王者だったノキアを立て続けに抜いたほか、携帯メーカーの中ではアップルに次ぐ時価総額を誇っていた。
HTC中国エリア総裁の任偉光氏は当時、アップルを追い抜く自信があると豪語している。さらに同社の王雪紅董事長も「今後もし携帯メーカーが2社しか残らないとすると、HTCは必ずそのうちの1社になる」と言い放った。投資機関も当時はHTCの発展を有望視し、ゴールドマンサックスは今後3~5年以内に同社のスマートフォンの販売台数が2億台、タブレットの出荷台数は3000万台に達し、スマートフォンの市場シェアはトップ3に入るとの予測を示していた。
しかし、HTCの好調な業績はその後長続きしなかった。同社は2010年以降、アップルとの間で2年にわたる特許紛争を繰り広げ、これに続いてIntellect Wireless、ノキア、日亜化学工業なども軒並みHTCを提訴、HTCの成長の勢いを削いでいった。さらに、大陸市場への軽視、サプライチェーンの管理不足、全価格帯のモデルをくまなく販売する事業戦略の失敗など、複数の要因がHTCの数年後の失敗につながった。HTCのスマートフォン販売台数は2016年になるとわずか1000万台まで落ち込んでおり、ファーウェイ、シャオミ(小米科技)、OPPO、vivoの足下にも及ばないと暴露した業界関係者もいる。この翌年、HTCはGoogleのOEMとして請け負っていたスマートフォンPixelの研究開発部門をGoogleに売却した。
長年にわたる大幅な業績悪化の結果、HTCの昨年の売上高はピーク時の40分の1にも達していない状況だ。決算報告によると、昨年の売上高は前年比57.82%減の100億1000万台湾元、人民元で23億2600万元(約370億円)となった。これに対し、2011年のピーク時の売上高は4658億台湾元、人民元で1007億4000万元(約1兆6100億円)だった。
売上高の大幅減に伴い、HTCの時価総額もピーク時に比べ9割以上下がっている。今では、市場で販売されているHTCのスマートフォンに手を伸ばす人はほとんどいない。この数年で同社の事業の中心はVRに移ったが、VRブームは思ったようには到来していない。HTCの進むべき道はどこにあるだろうか。
※アイキャッチおよび本文中の画像はHTC公式ウェブサイトによる
(翻訳・神部明果)
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