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世界一コンビニエンスストアが発達しているといえる日本で、ついに無人コンビニのブームが訪れるかもしれない。
ローソンは18日、川崎市に初の無人店舗を開設すると発表した。26日から限定的に実証実験を開始する。顧客は専用アプリを使って入店し、ほしい商品を手に取ってそのまま退店すると、事前に登録してあるクレジットカード経由で自動的に支払いが完了する。
ローソンの試み以前に、米アマゾンは2016年に無人コンビニ「Amazon GO」の社内実験を開始している。これを追うように中国でも3年ほど前から無人店舗ブームが巻き起こった。日本を代表するコンビニの一つであるローソンが、2020年になるまで正式に無人店舗に挑戦しなかったのは何故なのか?
最大のネックは「コスト」
日本のコンビニはあまりに進化しすぎていて、簡単にはデジタル化できないという状況は容易に想像できる。全体を刷新するためのコストは相当なものだろう。
しかし、ローソンはこれまでにも何度か「無人店舗」に挑んでいる。2018年には東京の3店舗でレジの無人化を試みており、2019年にはRFID(電子タグ)技術を用いた自動決済にも取り組んでいる。そして今年は「Amazon GO」型の無人店舗に挑戦するわけだ。
こうした挑戦の背景には、人口減少による労働力不足がある。日経新聞の既報によると、昨年1~7月の日本の出生数は前年同期比5.9%減で、過去30年で最大の減少幅になった。シンクタンク「パーソル総合研究所」と中央大学の2018年10月の調査では、2030年までに日本では644万人分の労働力が不足するという。
人材が不足すれば人件費は上がる。これに対し日本のコンビニ業界は、従来の24時間営業を改め、営業時間短縮に切り替える向きもある。セブンイレブンが昨年3月から一部店舗で時短営業をスタートしたのを皮切りに、他社もこれに追随。昨年10月時点でファミリーマートは全国632店舗、ローソンは98店舗で時短営業を実施している。
NHKの報道によると、ローソンは昨年、700店舗を閉店する計画を明らかにした。竹増貞信社長は過去に、24時間営業を維持するために店舗のデジタル化やセルフレジの導入を強化していくと述べている。
こうした店舗の無人化ソリューションとしては現在、主に「Scan & Go」「セルフレジ」「RFID」「Just Walk Out」の4つがある。
「Scan & Go」「セルフレジ」の2つは技術的にはそれほど難しくない。前者は客が手に取った商品のバーコードを自分でスキャンし、アプリ内で決済するもの。後者は日本の小売店でも見かけるが、客が自分で操作するタイプのレジだ。ただ、この方式は顧客の良心頼みの部分が大きく、人件費は削減できても盗難を防ぐことができなければかえって損失が大きくなる。事実、米ウォルマートが取り入れたScan & Goは失敗に終わった。
セブンイレブンは独自のQRコード決済「7pay(セブンペイ)」を導入したが、わずか3カ月で頓挫している。その理由の一つはQRコードの普及が難しかったことだという。日本ではすでにクレジットカードや交通系ICカードによるキャッシュレス決済が普及していたことも理由だ。
一方、「RFID」は技術面でより高度だ。各商品に電子タグを付け、スマートカートに入れられた商品の価格を自動的に識別・計算するという方式だ。ローソンは昨年、パナソニックと共同でRFIDを用いたレジの実証実験を行っている。しかし、大規模に実施するにはコストがネックになった。36Krの調べでは、電子タグ1枚にかかるコストは約0.5元(約8円)。スーパーに並ぶ商品の平均単価が約10元(約160円)とすると、電子タグのコストだけで商品価格の5%を占めることになる。
今回、ローソンが試験的に取り入れるAmazon GO方式の「Just Walk Out」とは、店内にカメラや重力センサーを設置して顧客の購買行動を認識するモデルで、コンピュータービジョンとセンサー、深層学習をかけ合わせた技術だ。顧客は入店後、欲しい商品を手に取り、そのまま退店するだけで決算まで完了できる。無論、このモデルにも相応のコストがかかるうえ、取り扱える商品にも限界がある。例えば、商品は完全に包装されていなければならず、野菜や果物などのバラ売りには対応できない。
現段階ではこのJust Walk Out方式が最も大規模展開に向いているといえる。昨年半ば時点で米国内のAmazon GOは10店舗だが、2021年までに全世界で3000店の開業を計画しているという。
しかし、ローソンによる無人店舗には制約も多い。入店時の説明書きには、手に取った商品を商品棚に戻す際には元あった場所に返すこと、手に取った商品を他の客に手渡すことは禁止と書かれている。現在の技術力でスムーズな運営を実現するには、こうした顧客の協力が大前提となっているのだ。
中国の無人店舗ブーム、その後は?
中国で数々行われた無人店舗の「実験」でも、成功に結び付いたケースはあまりない。中国メディア「界面(Jiemian.com)」によると、中国では2017年に2万5000カ所の無人売店、200店舗の無人スーパーが開業した。しかしそのブームは2年もたたずに下火となる。2018年になると営業停止に追い込まれたり、大規模に人員削減を行ったりする企業が続出している。
単純に「無人化」を追究しても課題は解決できないということが露わになった。それどころか、さらに面倒が増えてしまう。顧客側からみれば、レジが無人か有人かはさほど重要な問題ではない。商品そのものの消費期限や品質、価格がそれよりも重要であり、支払いで待たされるかどうかの方に関心があるのだ。
しかし、中国の無人コンビニ「便利蜂(Bianlifeng)」のアイディアや実践経験は参考に値するかもしれない。ビッグデータやアルゴリズムを存分に活用し、仕入れ、製造、シフト作成、価格決定といった従業員の業務の多くをコンピューターに代替させているのだ。コンビニ商品の仕入れや陳列を決定するには各商品の消費期限や天候、店舗の立地など多数の要素が絡むため、これまでは従業員が多くの時間を割いてきた。これを便利蜂ではシステムが処理してくれるのだ。
しかし、こうした実験を敢行するには資金面のバックアップと、長期的に採算度外視の運営を続けられる体力が必要だ。
(翻訳・愛玉)
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