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テンセント、京東(JD.com)、Uberなど輝かしい投資実績を持っている著名プライベートエクイティ(PE)の「高瓴資本(Hillhouse Capital)」が、このほどスタートアップへの投資を専門とする「高瓴創投(GL Ventures)」を設立すると発表した。主な投資分野はバイオ医薬品と医療機器、ソフトウェア・サービスとイノベーション、コンシューマ向けインターネットとテクノロジー、新興の消費者向けブランドとサービスの4つである。投資分野ごとに担当パートナーが1名任命されている。
高瓴創投の資金総額は100億元(約1600億円)であり、人民元とドル両方での投資が可能だ。投資金額は300万元(約4800万円)から最大3000万ドル(約33億円)までと設定されている。これだけの幅があれば、シリーズPre Aから成熟期までをすべてカバーできる。
VC分野では久しく大きなニュースがなかったが、高瓴が参入したことは大きな変化をもたらしそうだ。同社はこれまでも、直接的な投資こそほとんどなかったものの、外部パートナーを通してスタートアップを育ててきた経験がある。さらに2018年に、社内でVCチームを立ち上げている。したがって、高瓴創投は突然設立されたものではなく、同社が手掛けてきたVC関連業務を再編し、新たな段階へと押し上げる一歩として考えるべきだ。
また、同じく2018年夏に、セコイア・キャピタル・チャイナも総額5億ドル(約550億円)のシードファンドを立ち上げると公表した。
高瓴創投設立の意味
高瓴創投の設立には少なくとも3つの意味がある。
まず、企業のブランディング戦略としての意味だ。これまでの高瓴は典型的な大型ファンドとされてきたため、スタートアップへの投資という分野で本格的に業務を展開するためには、イメージを変える必要があった。高瓴創投の設立は、まさにスタートアップを重要視することの決意表明だ。
次に、社内での位置づけの明確化である。担当パートナーを任命したことは、スタートアップが高瓴でより注目され、これまで以上のサポートを受けられることを意味する。高瓴はこれを「投資後の資源共有」と呼び、人材、技術、管理、ブランディングなど様々な角度からのサポートを約束している。
そして、最も重要な意味は、意思決定プロセスの変化だ。これまでも大型ファンドがスタートアップへの投資を試みたことがあったが、考え方の違いなどにより意思決定が遅いことがネックとなっていた。このことについて、高瓴創投は「独立かつ効率の良い意思決定プロセス、独立したチームと運営モデルで専門性の高いVCとして活動し、PEと異なる論理で運営していく」と表明している。
この点についての詳細は判明していないが、一般論として考えれば、最大の違いは各投資分野を担当するチームに意思決定の権限を付与したことである。グループ全体の投資委員会の審議を必要とせず、担当パートナーが同意すれば投資が可能となっている。一定金額を超える投資案件に限っては、グループ全体の投資委員会で審議するように定める可能性もある。
4名のパートナー
高瓴が今回任命したパートナーは下記の4名である。バイオ医薬品と医療機器担当の易諾青氏、ソフトウェア・サービスとイノベーション担当の黄立明氏、コンシューマ向けインターネットとテクノロジー担当の王蓓氏、新興の消費者ブランドとサービス担当の曹偉氏だ。
彼らの年齢や経歴を見てみると、ベテランから若手まで揃っていることがわかる。こうした人事から、高瓴がより親しみやすいイメージを市場に持ってもらおうとしていると見ることができるだろう。高瓴創投設立の情報を発表した際も、同社がこれまで貫いてきた淡々とした口調ではなく、文学作品を連想される表現を使っていた。
高瓴以外の中国の大型PEもスタートアップへの投資を重要視するようになっている。前述のセコイア・キャピタル・チャイナのほか、「博裕資本(Boyu Capital)」も「万物資本」という名の新しいファンドを立ち上げている最中だ。
中国ではシステマチックな投資機会の減少とプライマリー・マーケットの流動性不足のため、VCのブームが下火になりつつあった。特に2019年は、混乱した局面と悪いニュースしか出てこないような状況だった。しかし、高瓴がこの分野に参入したことは、大きなドラマが待っていることの予兆かもしれない。
(翻訳:小六)
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