産業インターネットで変わる基礎素材業界 生産タスクベースの管理を実現

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

産業インターネットで変わる基礎素材業界 生産タスクベースの管理を実現

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

現在、中国国内における従来型の製造業の生産能力は過剰状態にあり、生産コストが上昇しているため、デジタル化による構造転換・高度化に対する市場のニーズも急増している。中国のコンサルティング会社「CCID」のデータによれば、中国のインダストリアルインターネット(産業のインターネット)の市場規模は昨年年末時点で6109億2000万元(約9兆2900億円)に達しており、市場は今後3年間で14.1%の年平均成長率で安定的に成長し、今年の市場規模は6970億6000万元(約10兆6000億円)に達すると見込まれている。

既存の製造業は複数の分野に細分化されており、各業務シーンにおける業務プロセスの差が大きい。インダストリアルインターネットのプラットフォームを提供する企業にとって、いかに実際の業務シーンにマッチした技術を提供するかが課題となっている。このほか、特定の業界に属する顧客のデジタル化によるモデルチェンジへの認識や、設備配置の過程においてプラットフォームと既存設備との効果的な接続をどう果たすかも現時点での課題だ。

基礎素材業界にインダストリアルインターネットのSaaSプラットフォームを提供する「博依特科技(POI-TECH)」は2014年に設立された。同社は特定業界を足がかりに、現在は主にセラミック、セメント、製紙、ガラス、食品業界の顧客を抱えている。

業務に関する今年最大の進展は、同社のプラットフォーム4.0版が各シーンをベースとした生産タスクの管理を実現した点であり、プラットフォームは今年6月に投入し商用化される予定だ。同社の李継庚氏によれば、従来型のMES(製造実行システム)の多くは生産要素の管理をベースとしたものだという。しかし通常、企業の日常管理およびコスト精算は生産任務を1ユニットとしているため、SaaSは生産任務の管理をベースとしたものに転換していくべきだという。そうしてこそ技術と業務のより良い融合が実現し、ユーザーに高頻度で活用されるデジタル化運営ツールとなる。またこれは、業界の今後の発展トレンドでもあるとの見方を李CEOは示している。

李CEOは基礎素材業界から切り込んだ理由について、主に以下の3点を挙げている。

・上記の領域は中国国内ですでに100年以上にわたる歴史があり、設備の自動化とプロセスの成熟度が比較的高いが、現在ではおおむね生産能力過剰の問題に直面している。このほか、石油や鉄鋼などの独占性の強い業界とは異なり、こうしたプロセス製造型工業は十分な市場競争が存在する領域であるため、構造転換・高度化へのプレッシャーが比較的大きい。

・基礎素材業界の生産プロセスは高い類似性を有しており、大まかに言えば原料の準備、成形、後加工の3段階に分けられる。生産要素には人、原料、設備、エネルギーが含まれるが、企業間の生産管理プロセスは似通っている。このため、生産業務に共通する生産・運営のユニットプロセスを抽出しクラウドプラットフォームを構築することで、汎用型システムを生み出すことができる。また基礎素材業界における設備の接続難易度はやや低い。なぜならこうした設備の自動化レベルが高い上に、通信プロトコルのオープン化が可能なためであり、データ収集という視点からも実現しやすい。

・同社の中心メンバーはプロセス製造分野での豊富な就業・研究経験を有しており、工業における生産フロー、生産工程、プロセスの数学モデル、コンピュータ-シミュレーション、プロセスの最適化、省エネルギーなどに関する深い理解があるため、製品と実際の業務の融合においての基礎的な優位性がある。同社のメンバーは約100人で、中心的な技術者はアリババやファーウェイなどのIT企業出身者だ。

現時点で、既存のクラウドプラットフォームは企業149社の設備1808台、計器5316台に接続済みであり、取得データは515億件に上る。プラットフォームがどのように企業のコスト削減・生産効率向上に寄与するかについて一つの例を挙げる。製紙企業「維達紙業集団(Vinda)」の品質管理では、博依特科技のシステム導入までは、生産した1原紙ロール当たり長さ5万メートルの最後の1メートルの品質を検査室で検査していた。ところが同社の品質予測システムの導入後は、生産された原紙につき1メートルごとの品質フィードバックが可能になった。このため、リアルタイムの品質変化に応じて各繊維原料の配合を調整し、品質を保ちつつもやや高額な繊維の使用を減らすことが可能となり、これにより生産コストを引き下げるとともに、生産時の不確実性の低減も実現した。

指示看板

同社の顧客は主に各業界の大企業であり、顧客の投資回収期間は2年以内となっている。売上高はSaaSによる年会費およびソフトウエア・ハードウエア一体型案件の販売によ

る。今年の業務では、生産における完全なデータリンクの実現に重点を置いており、これには膨大なデータ量が関係するほか、高いデータ分析能力も求められる。このほか、同社が自社開発したデジタル化運営ソリューションは昨年、中国工業・情報化部のインダストリアルインターネット試験モデル事業に選出されている。
(翻訳・神部明果)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録