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ショート動画やライブ配信プラットフォーム「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」が、SNS機能を強化している。抖音アプリ内にビデオチャット機能を追加するなど、SNSとしての利用を促すため苦心している。
抖音のSNS機能
現在、抖音でビデオチャットを行うには2つの方法がある。まず、互いにフォローしたユーザー同士なら、直接抖音内でビデオチャットを行うことが可能だ。次に、同じく「字節跳動(バイトダンス)」社が運営するチャットアプリ「多閃(Duoshan)」でフレンド承認済みなら、相手の抖音アカウントにビデオチャットを申請することができる。抖音から多閃にビデオチャットを申請する場合には、抖音内でもう一度互いにフォローする必要がある。
ショート動画で若年層のユーザーを確保した抖音がSNSに意欲を見せているのは、周知の事実である。今年3月、 抖音は音声のライブ配信にボイスチャット機能を追加し、配信者が最大8人のボイスチャットルームを開設できるようになった。4月初頭には、ビデオチャット機能の内部テストが行われた。ビデオチャットを利用するには、本人確認、携帯電話番号確認、顔認証が必要となる。
業界に精通するアナリストによると、抖音のこうした試みは、SNS機能でユーザーのロイヤルティを高めるだけでなく、ショート動画アプリからSNSアプリへの転身を図ろうとするものだという。
字節跳動のSNS事業の失敗
抖音を運営する字節跳動は、かねてからSNS事業を展開したいと考えていた。その理由の一つが、SNSの王者「WeChat」による機能の制限だ。2019年3月の字節跳動7周年記念講演会において、同社創設者兼CEOの張一鳴氏は、「現在WeChatで抖音の動画のリンクを貼ろうとしても自動的にブロックされる。この問題はなんとしても解決しなければならない」と語った。
そこで、字節跳動は2019年1月15日に多閃、2019年5月19日にオンラインコミュニティツール「飛聊(flipchat)」を発表。2020年1月には、飛聊のPC版もローンチしている。
しかし、これらのサービスはいずれも成功したとはいい難い。そこで字節跳動傘下でもっとも成功した抖音がこの重責を担うことになった。抖音の最大の強みはトラフィックで、特に新型コロナ禍の今、MAU(月間アクティブユーザー数)も月間平均使用時間も大きく伸びている。
また、抖音の動画には多くのユーザーがコメントを寄せており、このアプリ内でテキストのやり取りをするのは自然なことになっている。抖音はそれをチャットの形式に変えたいのである。
狙うはWechatの牙城
モバイル・インターネット専門の情報会社「QuestMobile」の「2020年中国モバイル・インターネット春季レポート」によると、WeChatなどテンセント系列のサービスの月間使用時間の全体に占める比率は2.4ポイント減り、字節跳動系列のサービスは同1.2ポイント増となった。
しかし、それでも両社の間には30ポイントの大差がある。SNSは通常、使用時間が長く、字節跳動は使用時間を伸ばすことを必要としている。さらに、抖音のトラフィックが持つ価値を最大限に生かすためにもSNSの役割が期待される。
2019年、抖音でのライブコマースによるGMV(流通取引総額)は400億元(約6000億円)となり、2020年にはさらなる上積みを目指している。同社のデータによると、2月は教育系配信の視聴者が550%増えている。SNS機能があればこうしたコンテンツのシェアが見込まれ、有料コンテンツの視聴者も増えてくる。また、字節跳動は2019年にカジュアルゲームのパブリッシング最大手になったが、より大型なMOBA、FPSゲームはマルチプレイが前提となるため、この市場に進出するのならSNSは不可欠だ。
ECはアリババの中核であり、ゲームはテンセントの持ち場である。抖音はアクティブユーザー数の強みで、この2強に戦いを挑もうというのである。もちろん、テンセントも抖音の動きを座視しているわけではない。WeChatはすでに動画機能を強化しており、抖音を念頭に置いているのは明らかだ。
抖音のSNS化戦略の道のりは、長い戦いになりそうだ。
(翻訳:小六)
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