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ショート動画プラットフォームの「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」はこのほど、米国でアプリ「Zynn」をローンチした。このアプリのUIは同じショート動画プラットフォームである「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」と酷似している。米国ではすでにFacebookがTikTokと似た機能を持つ「Lasso」というアプリをローンチしており、この3社の競争が始まろうとしている。
TikTokと模倣者たち
TikTok、Lasso、Zynnはそれぞれ2017年8月、2018年11月、2020年5月にローンチされた。機能とターゲット顧客などの面で、3つのアプリは共通しているが、UIに関して言えばLassoだけがタイプが異なる。LassoはInstagramの「発見」タブを独立させたようなアプリで、UIもInstagramと似ている。Facebookの戦略は、LassoでTikTokがまだ浸透していない国のシェアを獲得し、その後米国に回帰するというものだ。
しかし、Lassoのダウンロード回数はあまりにも少ないと言わざるを得ない。2018年11月から2019年10月の間、TikTokのダウンロード回数が6.4億回だったのに対し、Lassoのダウンロード回数はわずか42.5万しかなかった。一方、Zynnは快手が得意とする報酬スキームを駆使し、ローンチから20日未満でiOS米国エリア無料エンタメアプリランキング1位に上り詰めた。
Lassoはダウンロード回数とアクティブユーザー数ともに振るわないが、母体のFacebookとTikTokはすでにEコマースでも競争を始めようとしている。
抖音の中国国内での展開からわかるように、TikTokが海外でEコマースを開始するのは時間の問題である。この分野でのFacebookの主力はLassoではなく、TikTokと同様に大量のインフルエンサーを抱えるInstagramだろう。
今年5月、Facebookは「Facebook Shops」サービスの提供を開始した。事業者はFacebookとInstagramでオンラインストアを開設することができ、MessengerやWhatsAppを使ってユーザーと直接やり取りすることができる。ほかにもFacebook上に広告を載せたり、Facebookの決済機能を利用したりすることができる。
模倣だけでは勝てない
快手のZynnはローンチから一カ月でiOS米国エリア無料エンタメアプリ1位に上り詰めた。同社得意の報酬スキームの威力が再び証明された格好だ。
現在の同社の報酬スキームは次のようになっている。Zynnをダウンロードすれば1ドル(約100円)、新規ユーザーを1人招待すれば20ドル(約2000円)、5人招待すれば100ドル(約1万円)に加えボーナスの10ドル(約1000円)が受け取れる。動画視聴の報酬は10分あたり20セント(約22円)、1時間視聴すれば1.25ドル(約140円)となっている。
快手のばらまき戦略と比べ、FacebookはLassoを大々的に宣伝していない。現在行っているのは、InstagramでフォローしているユーザーがLassoでもアカウントを開設したことをプッシュ通知で知らせることくらいである。しかし、そうした宣伝戦略の違い以上に、Lassoの位置づけが不明確という課題がある。Instagramのタブの延長でしかないのであれば、新規ユーザーにとっても、Instagramのユーザーにとっても、魅力が不足している。
しかし、Zynnの強気の戦略は諸刃の剣でもある。ばらまきが終了したあと、どれくらいのユーザーが引き続き利用してくれるのかわからない。現在のZynnのコンテンツはほとんど快手から提供されたものであり、Zynnだけでコンテンツを生み出し続けることはまだできない。したがって、今後米国のコンテンツ製作者との契約、音楽の著作権使用料、ローカライズ人材の確保などでも巨額な予算が必要になるだろう。
また、TikTokと比べ、米国に進出した時期が遅いことも大きな障害である。TikTokは2017年にローンチされ、Lassoより1年、Zynnより3年近く早い。その上、TikTok を運営する「字節跳動(Bytedance、バイトダンス)」社は2017年11月にショート動画アプリの「Musical.ly」を買収し、後者の2億人のユーザーを一気に獲得した。
TikTokの最大の強みは、膨大なユーザーデータに基づくアルゴリズムの力である。2020年4月、TikTokの全世界でのダウンロード回数は20億に達した。国や言語ごとにユーザーの好みは大きく異なるが、20億ものユーザーがいればアルゴリズムによってかなり正確なレコメンドが期待できるだろう。
もちろん、TikTokにも課題がないわけではない。ユーザーデータの使い方に関しては各国の規制当局が問題視しており、収益化も順調ではない。新しく就任した同社のCEOケビン・メイヤー氏の手腕の見せ所だろう。
(翻訳:小六)
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