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中国版テスラとも称されるEVメーカー「NIO(蔚来汽車)」の状況は、半年前と大きく変化した。死の淵からよみがえり、今年は米ドル市場で約9億ドル(約940億円)、人民元市場で70億元(約1050億円)を調達、無担保無抵当で104億元(約1560億円)の借入にも成功した。李斌(ウィリアム・リー)CEOの言葉にも自信や落ち着きが戻ってきた。
李CEOは7月24日、四川省成都市で開催された「2020成都国際汽車展覧会(成都モーターショー)」で、新型SUVモデル「EC6」のバッテリー容量や航続距離、外装、内装、スマートコックピット、販売価格などの詳細を明らかにした。EC6は即日、NIOのアプリと公式ウェブサイトから予約できるようになった。バッテリー容量70kWhのモデルが第1陣として9月下旬に出荷、100kWhモデルは12月に出荷される予定だ。
NIOのバッテリーパック交換モデルに勝算はあるのか、技術開発やマーケティングの戦略とは、そして今後の展望は。李CEOと秦力洪総裁がインタビューに答えた。以下はその抄訳である。
バッテリーパックの交換・レンタルはNIOの主力事業
ーーNIOのバッテリー交換事業はどのように発展してきましたか。
李CEO「我々は新世代のスワップステーション開発を加速している。現在、週に1店舗ずつスワップステーションを開設しており、来年はさらに増えるだろう。研究・開発が成功すればコスト削減や効率化も進み、より大規模な利用が可能になる」
秦総裁「現時点でNIOのスワップステーションは合計139店舗、この数字は毎週増えている。平均すると毎週1店舗だが、週に2、3店舗オープンさせることもある」
ーーNIOはリユースバッテリー管理会社を立ち上げるおつもりですか。
李CEO「我々は確かにそのような会社を設立する必要がある。EV業界ではバッテリーの資産管理こそがビッグビジネスになる。中国の自動車2億台がEV車になったと仮定すると、各オーナーがバッテリーのレンタルに年間1万元(約15万円)使った場合、レンタル料は総額2兆元(約30兆円)になる」
ーー他メーカーの車でもNIOのバッテリースワップステーションを使えますか。
李CEO「スワップステーションでのバッテリー交換には複雑なシステムが必要になるため、特に緊密な戦略的パートナーを除けば、今のところ他メーカー車の受け入れは考えていない。ただし、業界統一の安全基準についての意見交換なら誰とでも大歓迎だ。300kWのスーパーチャージャー、充電スタッフ招請アプリ『一鍵加電』、移動充電車、バッテリー容量測定は一般に開放しており、現にNIOオーナー以外の利用もある。我々はブランドを強調しているわけではない」
EC6は価格を上げずに性能アップ、自動運転でも妥協はしない
ーーNIOのEC6とテスラのコンパクトSUV「モデルY」との競合をどうご覧になっていますか。EC6や「ES6」の位置付けについてはいかがでしょうか。
李CEO「EC6とモデルYが直接競合していることに疑問の余地はない。価格設定を行う際にはもちろん長期的な競争戦略を考えている。我々が採用したのは、最初に価格を設定し、その後、自社の規模と販売量を引き上げることで徐々に効率化を進め、粗利益率を向上させるという手法だ。マイクロファイバー天井や高性能オーディオの標準装備、絶え間ない性能アップ、アフターサービスなどをプラスしても値上げ額はたったの1万元(約15万円)。これは結構お値打ちだ」
「NIOの強みはほかにもある。まず、テスラのモデルYや『モデル3』はシングルモーターだが、NIOは全車種ツインモーターだ。テスラが安いのは、シングルモーターだからかもしれない。私個人の意見ではEVにシングルモーターはいただけないのだが、テスラにはテスラの戦略がある」
「もう一つ、当社は車からバッテリーを外しての交換が可能だ。近い将来、BaaS(Backend as a Service)式のバッテリー・レンタルサービスを始めるつもりだ。自動車産業所轄部門もこの路線を支持してくれている。今後、EC6の出荷が始まれば、BaaSバッテリーレンタルサービスも当然開始する。車とバッテリーを別々にできれば、EV車本体の購入代金、頭金、月々のローン返済額をもっと安くできる」
「BaaS導入はシステムのイノベーションであり、想像以上に大変だ。今年に入ってもう16回は会議をしているが、まだ作業が残っている」
ーーNIOはL4自動運転で米インテル傘下の自動運転技術企業「Mobileye(モービルアイ)」との提携を選択されましたが、将来的には自社開発に切り替えるおつもりですか。
李CEO「ADAS(先進運転支援システム)は我々の重点プロジェクトの一つだ。昨年パワーアップした中国チームがADASの中核になっている。 研究開発にはモービルアイのチップを使うが、制御システムすべてのインテグレーションはNIOが行う」
「長期的には、チップ、システム、アルゴリズム、データの4分野でADAS機能を向上させる。当然、4分野すべてで開発能力を確立すべきで、最も優れたチップを採用したいと思う。今のところ、モービルアイのQ4チップが最も優れているということだ」
「自社開発に切り替える可能性もなくはない。次のバージョンは、現在のいくつかの量産車を直接超えるよう、より高いレベルで製造したいと考えている。我々は妥協も人真似もせず、正攻法でシステムを確立する」
競争激化を見越し、海外展開を加速
ーー自動車メーカーがこぞってオフライン販売網を強化していることをどう思われますか。
秦総裁「NIOは早くからオンラインマーケティングを確立しており、これが新型肺炎流行中に先発優位として利いてくれた。だが一方で、オフラインストアも重視し、強化している。当社は2タイプのオフラインストアを展開している」
「一つはショールーム機能に加え、NIOオーナー同士の交流の場にもなるイベント型巨大ショールーム『NIO House』。もう一つは面積80〜300平方メートルの小型ショールーム『NIO Space』だ。NIO Houseの建設には1年以上かかることもあり、当社の業績が芳しくなかった昨年はNIO Spaceの開設に専念していたが、現在はNIO Houseの建設も再開している」
「NIO HouseとNIO Spaceは現在、計134店舗あり、年末までに200店舗以上にする。今後も新規出店を進め、より身近な場所で実際にNIOの車に触れてもらうチャンスを増やしていく」
ーー今後3〜5年は競争激化が予想されますが、海外へも進出されるおつもりでしょうか。
李CEO「もちろんだ。自動車を売るのは簡単だが、中華系自動車メーカーが海外で地歩を固めるとなると、圧力や挑戦はとりわけ大きい。近年、中国自動車メーカーが数多く海外進出を果たしてきたが、欧米の主流市場にはまだ参入できていない」
「NIOは欧米の高級車市場への参入を考えている。昨年末以来、我々はグローバル計画について多くの時間をかけて議論してきた。海外展開や戦略的計画のための特別な内部部門間組織も設立した。もうだいぶ考えがまとまってきており、少しずつ計画を実行に移し始めている」
「NIOはドイツ、英国、米国にも研究センターを持ち、2015年の設立当初からグローバルなスタートアップ企業と位置付けられている。米国市場についても、既にいくつか良いアイデアがある」
(翻訳・永野倫子)
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