業績好調のアリババ、海外大手投資ファンドも相次いで株を買い増し

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業績好調のアリババ、海外大手投資ファンドも相次いで株を買い増し

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8月20日、中国EC最大手アリババグループは米株式市場の取引開始前に2021年第1四半期(2020年4~6月)の決算を発表した。グループ全体の売上高は、前年同期比34%増の1537億5000万元(約2兆3700億円)で、市場予想の1480億5500万元(約2兆2800億円)を上回った。純利益(non-GAAPベース)は前年同期比86%増の397億7000万元(約6100億円)となり、市場予想の190億8800万元(約2900億円)を大きく上回った。

第1四半期を振り返ると、アリババのサプライチェーンは新型コロナウイルスによって深刻な打撃を受けたが、業績は良好な成長を維持し、堅調に推移した。第2四半期は、中国国内の経済活動の再開によりサプライチェーンが回復し、供給のボトルネックが解消され、アリババの業績はV字回復している。

なぜアリババは歓迎されるのか?

海外の大型投資機関の最新保有株を見ると、ゴールドマンサックスやブリッジウォーターなどがアリババ株を大幅に買い増ししている。

アリババの最大の強みは、巨大なグローバルサプライチェーンと消費マーケットにある。今期、アリババ傘下のECモール「天猫(Tmall)」のGMV(流通取引総額)は前年同期比27%増で、中でも海外ブランドの輸入品を扱う「天猫国際(Tmall International)」はGMVが前年同期比40%以上も伸びた(未決済の取引は除外)。

中国の小売業全体の売上高は、前年同期比34%増の1012億2000万元(約1兆5700億円)となり、そのうちニューリテールと関連する直営業務の売上高は、前年同期比80%増の301億元(約4700億円)を占めた。

また同四半期においてアリババの中国国内BtoB事業、越境およびグローバル小売事業も成長しており、売上高はそれぞれ前年同期比16%、26%増の34億8000万元(約500億円)、70億2000万元(約1100億円)となった。

主要事業から見ると、アリババは小売事業の比率が大きく、そのサプライチェーンは非常に健全だ。

一方で、新型コロナウイルスの流行によってゲーム業界は多くの新規ユーザーを獲得したが、感染症の流行が収まり、企業活動が正常化してその他の娯楽サービスが再開されれば、市場の縮小は避けられない。この傾向はテンセントの決算報告にも反映されている。

マクドナルド理論

かつて米ジャーナリストのトーマス・フリードマン氏が提唱した「マクドナルド理論」によると、マクドナルドがある国同士は戦争をしないという。その理由は、冷戦後にマクドナルドが進出した国々はグローバルなサプライチェーンに組み込まれるようになり、もしそのような国同士が戦争を行った場合、双方が支払う代償が大きすぎる、というものだ。

このためサプライチェーンが複雑化し、自社と海外の提携先との利益の結び付きが強まるほど、リスクに対抗する力は自然と強くなっていく。

テンセントは最近、ロビー団体を利用して、ホワイトハウスへの働きかけを行っている。アップルをはじめ大手企業も連名でトランプ大統領へ書簡を送り、微信(Wechat)の禁止撤回を求めている。これらの大手企業の利益が微信と結びついているためだ。

アリババと結び付きの強い企業は、テンセントよりはるかに多い。アリババを締め出せば、長期にわたって中国市場を手放すことになる。資本主義国家の企業にとってこれは受け入れ難いことだ。

ビジネスの門戸を開く

アリババの取締役会長兼最高経営責任者の張勇氏は、新型コロナウイルスの流行に加え、米中間の緊張が高まっていることが、新たな不確定要素となっているとの認識を示し、「国際的な貿易と提携関係は続くものと信じている。アリババは『世界に不可能なビジネスはない』を使命にそれを実践していくことが中国の利益となり、同時に米国の利益にもなると信じている」と述べた。

データから見ると、外資は米中関係が緊張する中、却って投資を強化している。

調査会社ロジウム・グループのレポートによると、過去18カ月間、外資の中国における企業買収額はここ10年間で最大となっている。2020年1月~5月、外資の中国における企業買収総額は90億ドル(約9500億円)に達し、数量および買収額において中国の対外投資を上回っている。

同レポートは企業買収が増加している理由として、中国の巨大市場の吸引力、外資規制政策の緩和、いくつかの業界における中国企業の台頭などを挙げている。

中国の経済誌「経済学人(ChinaEconomist)」によると、新型コロナウイルスが流行する中、中国は以前にも増して世界の工場としての力を発揮した。中国は新型コロナウイルスのコントロールに成功し、いち早く生産を再開し、輸出企業はシェアを拡大した。日本の5月の輸入品目のうち30%が中国産で、過去最高を更新した。欧州の4月の輸入品目のうち24%が中国産で同様に記録を更新した。

データ提供:ロジウム・グループ

EU政府は欧州企業に対して、産業チェーンの分散化やEU周辺地域への移転を絶えず奨励しているが、中国の産業チェーンに組み込まれている欧州企業は真逆の考え方を示している。中国に進出している欧州企業で構成される「欧盟中国商会(CCCEU)」が発表した調査結果では、回答した欧州企業のうち89%以上が中国から他の国への移転を検討していないことが明らかになっている。この比率は過去10年間で最も高い。

データ提供:欧盟中国商会(CCCEU)

これは、多くの企業が利益を生み出す中国市場から撤退したくないということを意味し、サプライチェーンによる結び付きが政治的リスクに対抗する手段となっていることを示している。

市場における役割から見ると、アリババは中国の実物商品の小売市場を代表する企業であり、テンセントより市場規模は大きく、サプライチェーンも複雑であるため、政治的リスクに対抗する能力もより強い。

アリババの好調な決算報告の背後には、混沌とした政治環境の中において、同社が大国間の駆け引きの安定装置として作用していることがある。このため海外の投資機関はこの政治危機を絶好の買い時と判断し、アリババ株を買い増しし、不安定な環境下における利益を享受しようとしている。(翻訳・普洱)

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