アリババのアントが提携先に顔データを提供か 企業家の発言が物議を醸す

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9月12日夜、著名な企業家として知られる李開復氏が中国版ツイッター「ウェイボー(微博)」で、自身の発言に端を発する論議の火消しに追われた。

スタートアップインキュベーター「創新工場(Sinovation Ventures)」の会長兼CEOを務める李開復氏はこの日、「HICOOLグローバル起業家サミット」に出席。物議を醸したのは、中国顔認証技術大手の「曠視科技(メグビー)」に関して語った次のような言葉だ。「メグビーは我々が8年前に出資した企業だ」「初期には『美図(Meitu)』や『アント・フィナンシャル(後にアント・グループに名称変更)』などとの提携関係を仲立ちし、メグビーが大量の顔データを取得できるようにした」「その後の試行錯誤によって、有望なビジネスの方向性がいくつも見つかった」

この発言がネット上で波紋を呼び、同日夜に李氏はウェイボーで釈明する事態となる。投稿では、初期にメグビーが提携企業を探す上でのアドバイスやサポートを行ったこと、メグビーは提携企業にAI技術を提供するのみで、いかなるデータの共有や送信もないこと、誤解を招く発言をして各企業に迷惑が及んだことをおわびしたい、という点が示された。

李開復氏のウェイボーの投稿

李氏が公の場でアント・フィナンシャルとメグビーの提携関係に言及したことを受けて、アント・グループも同日夜にウェイボーで事実関係を明らかにした。

投稿では、アント・グループはメグビーに対していかなる顔データの提供も行ったことがなく、過去の提携ではアント・グループ内でメグビーの画像認識アルゴリズムを使用することに限定されていたため、いかなるデータの共有や送信も行っていないと明言し、現在ではすでに業務提携は解消していることを明らかにした。

アント・グループの弁明

2011年に創業したメグビーは顔認証技術の開発を手がけるAI企業で、主に個人や都市、サプライチェーンにおけるIoTの活用に特化したアルゴリズムの開発に当たっている。

李氏はメグビーの初期出資者の一人だ。同氏率いる創新工場は2013年にシリーズAで数百万ドル(数億円)をメグビーに出資、2015年にも4700万ドル(約50億円)のシリーズBに出資者として参加した。

そしてアント・グループとその親会社であるアリババも、実はメグビーに多額を投じてきた。

2014年、アント・フィナンシャルはメグビーに戦略的投資を行う。2017年10月、メグビーがシリーズCで4億6000万ドル(約490億円)を調達した際にも、アント・フィナンシャルはリード・インベスターとして参加、2018年にシリーズDで6億ドル(約640億円)調達した時にもアリババが出資に参加した。

とはいえ、アント・グループはメグビーや他のAI企業に投資するだけでなく、自らも研究開発に着手してきた。2017年にアント・フィナンシャルは生体認証に特化したテクノロジープラットフォーム「ZOLOZ」の立ち上げを発表、金融機関での使用を想定した顔認証として、生体認証技術の普及を進める姿勢を見せた。

アント・グループがすでにメグビーとの業務提携を解消したのは、顔認証技術を全て自社プラットフォームのZOLOZに移行したからだと、ある情報筋は明かす。

アント・グループはすでに1億人のユーザーの顔データを蓄積している。ユーザーに対してであれ当局に対してであれ、その生体認証データの開示には細心の注意を払うべきだろう。(翻訳・畠中裕子)

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