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中国の環境保護法では「鉄鋼企業が生成したスラグは加工処理を経ずに排出された場合、1トンあたり25元(約400円)の環境保護税を課す」と規定されている。中国の製鉄所における粗鋼生産量は年間10億トン前後、発生するスラグは年間約3億トン、鉄鋼スラグの累計保有量は2020年時点で約20億トンとなっており、スラグの処理・実用化が喫緊の課題となっている。
従来のスラグ処理方式ではまずスラグを選別し、回収利用できる金属鉄とマグネタイトを取り出す。残ったスラグはさらに小さい粉末に加工して建築材料として建材業界に販売するか、長期にわたって埋め立て処理をするしかなく、スラグの循環利用率は30%に満たなかった。再利用できないスラグの埋め立ては土壌と地下水を汚染することになる。
環境保護産業チェーンの中で、鉄鋼メーカーは川上に位置する。川中の汚染処理では40%の企業が水質汚染の防止を切り口としており、固体廃棄物はニッチな分野で、まだ十分に発展の余地がある。
独自開発の新技術をスラグの回収処理に応用
「瀜鉱科技(Greenore technology)」とその全額出資子会社「瀜鉱環保」は固体廃棄物の整備予防に照準を合わせており、従来のスラグ回収処理とは異なる革新的なソリューションを提供している。
瀜鉱は冶金後に発生する鉄鋼スラグと二酸化炭素に対し独自の新技術を用い、スラグ処理に使用する強酸で生じる水と空気の汚染を防ぐ。また、処理後に発生するマグネタイトや純度の異なる炭酸カルシウムも冶金の原料として循環利用させる。これにより原料調達費を減らせるだけでなく、固体廃棄物を地面に埋め立てるコストも削減、環境に優しくSDGs(持続可能な開発目標)も達成できる。
同社のコア・コンピタンスとなるのが世界で唯一、実験室規模の技術を拡大し事業化した点だ。4年にわたる研究開発を経て、2015年からプリテスト、パイロットテストを開始し、実用化による規模拡大後も設備を安定運行できるかという挑戦をしている。
瀜鉱は精密化工製造を通して、製紙、塗料、プラスチック、ゴムなど高付加価値業界向けにCO2削減を実現する環境に優しい原材料を生産するとともに中国国内の製鉄所、製紙メーカー、プラスチック工場などと提携して、実験室の技術を実際の工業シーンに応用することに成功している。同社は中国鉄鋼大手「包鋼集団(BAOGANG GROUP)」と合弁会社を設立し、世界初となる1000トン規模のモデル工場の運営に成功。今年末から同工場で年間10万トンの鉄鋼スラグ処理を開始する予定だ。
コアメンバーとビジョン
同社の創業チームは大学の実験室からスタートしたものの、工場で豊富に経験を積んでいる。同社とその親会社である米「GreenOre CleanTech LLC」はコロンビア大学工学部、同校地球研究所の科学研究チームなどが共同で設立したスタートアップ企業だ。同大学の周小舟博士がCEOを、趙黄経博士がCTOを務めている。
同社は昨年から今年にかけ、1000万元(約1億6000万円)の売上高を実現している。また、現在すでに1000万元(約1億6000万円)規模の資金調達を準備しており、調達した資金は以下の用途に充てるとしている。まずは研究開発チームの拡大、次に工業技術チームによるスラグ工場建設とモジュール化設備の整備。そしてマーケティングチームを構築して大手製鉄企業との結びつきを強化し、市場シェアのさらなる拡大を計るとともに積極的に政府や社会の環境保護活動に参加し、知名度を挙げていく。最後に、AIとビッグデータを扱う第三者プラットフォームとの提携を強化し、中長期目標である「クラウド工場」を実現する。(翻訳・山口幸子)
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