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中国IT大手アリババとその提携パートナーが、ベトナム最大の複合企業「マサングループ(Masan Group)」で小売りを手がける子会社「The CrownX」に4億ドル(約440億円)を出資をした。これを報じたブルームバーグでシニア・アナリストを務めるVey-Sern Ling氏は、「この動きは、東南アジアEC大手『Lazada』が、同地域での競争力を高めるために生鮮ECビジネスの強化を目指し、シンガポールのネットスーパー『RedMart』を買収したのとよく似ている」と述べている。
生鮮ECはオンライン通販の主要なカテゴリの1つだが、東南アジアではまだ黎明期にある。フェイスブックが過去に発表した「東南アジアデジタル消費動向分析」によると、生鮮ECは東南アジアのオンライン通販市場で最大のブルーオーシャンの1つだ。その市場規模は約3500億ドル(約38兆700億円)だが、2020年時点で普及率は0.3%に過ぎず、他カテゴリに比べてはるかに低い。
The CrownXへの出資はアリババにとってベトナムで初の投資となる。2018年にLazadaに20億ドル(約2200億円)の追加出資を行ったのに続き、東南アジアにおける最大規模の投資の1つとなった。
しかし、百戦錬磨のアリババが確たる理由なく投資を決めることはない。The CrownXへの出資は、同社が傘下に収める流通大手「ビンコマース(VinCommerce)」と、彼らが運営する2600店規模のスーパー&コンビニチェーン「ビンマート(VinMart)」を見据えてのことだ。投資銀行「CrossASEAN Reseaarch」の創業者Angus Mackintosh氏は「The CrownXとの提携はアリババにとってLazadaとの『縄張り争い』だ」と述べている。
今回の出資が完了したら、Lazadaはベトナムの生鮮EC事業ではビンコマースを商品供給源とし、さらにビンマートの店舗を商品の受け取り場所として活用する計画だ。
現在東南アジアの生鮮ECには3つのモデルがある。1つめは全商品を配送センター1カ所に集約し、そこから自社配送でユーザーまで商品を届けるモデルだ。2つめはユーザーがアプリで注文すると、プラットフォーム側が注文を第三者の小売り店へ転送するO2Oモデル。3つめは企業がコールドチェーンなどの物流を使って、商業地区や住宅地にある倉庫型店舗へ商品を配送するモデルだ。
2016年、LazadaはRedMartを買収して生鮮EC事業を開始した。RedMartは自社配送モデルを採用しているが、全体の商品ロス率が20%を超えている。生鮮食品は輸送の過程で傷みが生じるが、そのロス率が10%以下でないと利益を出すことは難しい。ロス率の高さによってRedMartは長い間黒字化を達成できず、シンガポール以外への展開もできなかった。
このような状況が今回のアリババとビンコマースの提携を後押ししたのかもしれない。ユーザーがLazadaのプラットフォームで注文し、ビンマートで商品を受け取るモデルは実質、ベトナム国内に多数存在するコンビニ店舗を活用したO2Oモデルと言える。ECプラットフォーム側はオンライン注文のチャネルを提供し、コンビニはユーザーに商品の受け取り場所を提供する。つまりコンビニがECプラットフォームの配送先と倉庫を兼ねることになる。
この方式が成功すれば、アリババにとっては極めて少ない投資で高い収益を上げることが可能となる。アリババは仕入れ、倉庫管理、輸送、店舗運営などに投資をする必要がなく、2600店あまりのビンマート店舗を通じて、生鮮ECのネットワークをベトナム全土に広げられるからだ。
東南アジアで事業を運営する大手EC各社は、同地域おける生鮮ECのポテンシャルをすでに見出していた。コロナ禍以前から、配車やフードデリバリーを手掛ける「Grab」や「Gojek」、EC大手「Shopee」などが、試験的なサービス提供に乗り出している。新型コロナが感染拡大してからは、ベトナムのEC大手「Tiki」、フィリピンの日用品デリバリー「MetroMart」など、新人プレーヤーもこの分野に参入している。
日用品デリバリーと生鮮ECは、昨年のEC業界で最も成長が著しかった分野で、現在も成長の勢いは衰えていない。しかし、生鮮ECのように高いロス率と低い利益率の中で戦わざるを得ない市場では、急増する需要を満たすだけではなく、確実に利益を上げられるビジネスモデルを見つける必要がある。
(翻訳・普洱)
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