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鉱山の無人化ソリューションを手掛ける「青島慧拓智能機器(WAYTOUS)」(以下、慧拓)がシリーズB1で、1回の調達額としては業界最高の2億元(約35億円)超を調達していたことが明らかになった。これで同社の累計調達額は5億元(約85億円)を超えた。
今回のリード・インベスターは、国有中央企業に出資する政府系ファンド「中国国新控股(China Reform Holdings)」傘下の「国新央企運営投資基金」で、中国政府が指定する「戦略的新興産業」への投資に特化している。また、慧拓をインキュベートした中国科学院自動化研究所(CASIA)傘下の投資機関「中自投資(CASPARK)」や既存株主の「賽富投資基金(SAIF Partners)」など5社も出資に参加している。
同社は、鉱山の無人化に関する総合的なソリューション・製品・サービスを提供している。創業者の陳竜CEOは「鉱山の無人化は求められ続けてきた」と強調する。首席科学者の王飛躍氏は、自動運転車両の運行において情報システムと実際の運転システムを連動させることを主眼とする「並列運転理論」の考案者だ。同社はこの理論をベースに、鉱山の無人化に関する総合ソリューション「愚公(YUGONG)」を開発した。愚公は、鉱山用車両のクラウド管理システムや自動運転システムなど六つのシステムで構成されており、全ての車両タイプに対応できるソリューションとしては世界唯一となっている。また、露天掘りと坑内掘りのいずれにも対応できるソリューションとしては中国唯一だという。
陳CEOによると、同社はすでにドメインコントローラのほか、リモート運転システム、V2X(Vehicle to Everything)による車路感知連携システム、ドライブ・バイ・ワイヤによる車両制御ユニット、衝突防止システムなど自社開発製品の大量納品を始めている。今年下半期の発注量は、これまでの3倍になる見込みだという。
慧拓の製品は、国有電力大手の国家能源集団(CNEG)や中国華能集団(CHG)、国家電力投資集団(SPIC)、中国大唐集団(China Datang Corporation)のほか、中国鉄鋼最大手の中国宝武鋼鉄集団(Baosteel Group)、石炭大手の中国中煤能源集団(China National Coal Group)などに属する鉱区20カ所余りで大規模導入されている。
同社は、数多くのプロジェクトに参画した経験を生かし、さまざまな鉱区に適用できる運営モデルを大規模展開している。すでに業界最大規模となる無人ダンプトラック400台分の運営を受注しているほか、内モンゴル自治区ホーリンゴル市にある国家電力投資集団の炭鉱における電動無人ダンプトラックの運営事業も先ごろ落札した。今年7月末までの総受注額は3億5000万元(約60億円)で、リピート受注が半数に上る。受注プロジェクトは石炭、冶金、非鉄金属およびセメントの各業界を網羅している。
石炭業界においては今年、国家能源集団大雁公司および「航天重型工程装備(Aerospace Heavy Industry)」と共同で、極寒環境で5G通信を利用した220トン積み無人ダンプトラックの運用プロジェクトを開始している。すでに氷点下42度の環境下におけるテストで24時間連続作業に成功しており、間もなく実際の運用に入る。慧拓は昨年、国務院国有資産監督管理委員会による優れた国有企業のリスト「大国重器英雄榜」に入選している。
冶金業界においては昨年9月、中国宝武鋼鉄集団傘下の「馬鋼集団(Masteel)」と共同で、自動運転と有人運転を併用した鉱山用車両の運用を開始し、鉄鋼業界の先頭を切って保安要員の削減を実現した。
非鉄金属業界においては昨年8月、「雲南錫業集団(Yunnan Tin Group)」傘下の「雲南華聯鋅銦(Yunnan Hualian Zinc & Indium)」と提携。夏は多雨による道路のぬかるみに見舞われ、冬には霧が発生しがちな雲南省で、無人ダンプトラックの運行を成功させている。
セメント業界においては「冀東水泥(Jidong Cement)」と提携し、鉱山における自動運転プロジェクトを実施している。完全電動化とデジタル化を実現し、5Gにも対応する自動運転プロジェクトとしては、中国セメント業界初の事例となった。
陳CEOは、坑内掘り鉱区の無人化はより切実に求められている上、市場も大きいと指摘する。慧拓は昨年から坑内掘り鉱区の無人化を手掛けており、無人輸送や坑内での位置検知など関連するキーテクノロジーの実用化を進めているという。今年6月には「陕西煤業化工集団(Shaanxi Coal and Chemical Industry Group)」傘下の「小保当煤鉱」および中国電信(チャイナ・テレコム)と共同で、5Gと人工知能(AI)を活用した坑内掘り鉱区を建設した。
同社は現在、露天掘り鉱区と坑内掘り鉱区に対応するソリューション・製品・運営サービスを提供できる中国唯一の企業となっている。坑内掘り鉱区に関する累計受注額は、年内にも9000万元(約15億円)に達する見通しだという。
陳CEOは、シリーズB1で調達した資金の用途を四つ挙げて説明した。
1)無人リジッドダンプトラックと坑内掘り鉱区向け無人化システムの開発。
2)石炭・冶金・非鉄金属・セメント業界を対象とした全鉱区無人化プロジェクトの推進。
3)鉱区運営サポートセンターのネットワークを全国各地の鉱区に広げ、スマート化された運営プラットフォームの構築と活用の推進。
4)グローバル戦略の一環として、まずオーストラリアやウクライナ、モンゴルなどで産業チェーンの川上と川下の提携企業との関係を深め、産学連携でスマート鉱業のエコシステムを構築する。鉱山の脱炭素化を図ると同時に、中国政府が掲げる二酸化炭素(CO2)排出量のピークアウトとカーボンニュートラル(炭素中立)に関する目標の実現に寄与していく。
今回の出資について、国新央企運営投資基金の投資責任者は「慧拓への出資は、鉱業関連の中央国有企業のスマート化や鉱山における生産の安全性を高める上で重要な意義がある」と説明。賽富投資基金の蒋馳華パートナーも「自動運転はAI分野で活用の幅がもっとも広い技術で、鉱山は最も早く自動運転が商業化された現場の一つだ。慧拓のソリューションと製品は業界最大のシェアを誇る上、昨年以降は受注額と実施プロジェクトの件数が倍増している」と慧拓を評価した。
(翻訳・田村広子)
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