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エビチリ、酢豚、レバニラ…。日本人にも馴染みが深いこれらの中華料理は、中国ではそれほどメジャーではなく、日本人が食べやすいようマイルドにアレンジされている。これらは「町中華」と呼ばれ、昭和の時代から日本人の胃袋を支えてきた。
一方、火鍋やマーラータン、羊肉の串焼きなど、中国で広く食べられ、日本でも現地と同じ味付けをしている中華料理は、「ガチ中華」と呼ばれる。ガチ中華を出す店は東京の池袋や高田馬場、大阪の心斎橋など、中国人が多く住んでいる地域を中心にここ3-4年で大幅に増え、街中華と対を成す存在に成長した。
ガチ中華が市民権を得るにつれて、街中華とガチ中華の両方を提供する二刀流中華も増加している。
フードデリバリー経由で実店舗にはない中国人向けメニューを展開
東京では、2020年頃からUber Eatsのような在日中国人向けフードデリバリーサービスが普及し始め、「Hungry Panda」や「EASI(イージー)」など複数社が都内で展開中だ。アプリをダウンロードして開くと池袋や高田馬場、新大久保などに出店しているガチ中華のお店が並ぶ。
筆者も中国人向けのフードデリバリーアプリを利用しているが、この数カ月、筆者が住む板橋区でも対応店舗がぽつぽつと出てきた。都営三田線板橋区役所前駅近くにある「四川料理 楼蘭」もその1つだ。桜蘭はどこの駅前でもみかける町中華で、お昼時は麻婆豆腐やレバニラ炒めなどの定食、夜にはアルコールドリンク1杯と中華2品が選べる晩酌セットや食べ飲み放題を提供している。Google Mapや食べログの口コミもほとんどが日本人によるもので、安くて美味いと高評価だ。オーナーの錦さんによるとお客さんのほとんどは日本人だという。
桜蘭は2021年10月に、Hungry Pandaを通じてデリバリーも行うようになった。同アプリから同店舗のメニューを見てみると、日本人にはあまり馴染みがない「麻辣香鍋(肉や野菜の麻辣炒め)」や「水煮牛肚鍋(牛ハチノスの激辛煮)」など現地系のメニューが目立つ。一部、実店舗にはないメニューもあり「フードデリバリーで注文してくれる中国人向けにメニューを変えています。」と錦さん。アプリの同店舗の下に表示されている3店舗も楼蘭が運営しているそう。デリバリーはコロナ禍で来店客が減る中で売り上げに貢献しているそうだ。
iPadの裏メニューがあるお店も
池袋東口から歩いて7~8分の場所にある温州坊も見た目は典型的な町中華だ。オフィスが多いエリアにあるため、ランチタイムにはエビチリや回鍋肉定食を、夜はビールと餃子を食べに来る日本人であふれかえる。一方で池袋がガチ中華激戦区として有名になると、2021年11月頃から温州料理(浙江省温州市は上海と福建省の中間に位置する)を中国人向けに提供し始めた。オーナーの夏さんは「池袋は四川料理や東北料理のお店が多く、飽和しています。私は温州出身で、地元のローカル料理なら東京でも食べれるお店が少ないので、差別化できると思いました。」と語る。
店員さんに温州料理が食べたいとお願いすると、iPadに写真が入っただけの裏メニューが渡され、温州料理を注文できる(2021年12月時点)。ワタリガニの醤油漬けは生姜やネギを薬味として使っていて、日本人にも受け入れられそうだ。
池袋の温州坊は日本人に向けに町中華、中国人向けにガチ温州料理を提供するハイブリッド営業だが、2021年12月には日暮里にガチ温州料理をメインに出す新店舗 「瓯味(おうみ) 温州坊日暮里店」をオープンさせた。まさに町中華とガチ中華の二刀流だ。
ハイブリッド経営は広がるか
Hungry Pandaのアプリを眺めていると、中野区や世田谷区などこれまでガチ中華のお店がほとんどなかったエリアでも店舗が表示されるようになった。コロナ禍で実店舗への集客が苦戦する中、フードデリバリーに対応する店舗はさらに増えることが予想できる。中国人向けフードデリバリーの対応エリアが広がれば、これまで町中華として経営していたお店も中国人向けのガチ中華を提供するようになるだろう。あなたの家の近くにある町中華も、あなたが知らないガチ中華「裏メニュー」があるかもしれない。
阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng
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