AI採点、バーチャルキャスター、スマートロボット・・・北京冬季五輪で活躍した最新テック

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北京で冬季オリンピック・パラリンピックが開催され、このイベントに合わせてAI技術をはじめ、様々な最新のテクノロジーが導入された。

AI支援採点システム

オリンピック種目の中には、羽生結弦選手が注目されたフィギュアスケートや、谷愛凌選手が話題になったスキーフリースタイルなどで、短時間に高速回転を行う競技がある。これらの競技の選手の動きの判定は観客や視聴者でも分かる人は少なく、競技に通じていないと難しい。

フィギュアスケートでは、AI企業「第四範式(4Paradigm)」が開発した「中国フィギュアスケートAI支援採点システム1.0」、スキーフリースタイルではバイドゥ(百度)のクラウドサービス「百度智能雲」を利用した「時空定格」テクノロジーが導入された。

前者の「中国フィギュアスケートAI支援採点システム1.0」は冬季オリンピック直前の1月に導入されたものだ。画像分析とディープラーニングを組み合わせ、動画から判別する人体の骨格や動作から識別して機械的なスコアリングをし、理想形をCGで見せることで選手にアドバイスをする。またスコアリングの根拠についてわかりやすく提供することで、競技判定の安定性と可視性を実現するシステムだ。第四範式は、引き続き中国フィギュアスケートAI支援採点システム2.0の開発を行うという。

後者の「時空定格」は、選手の連続した動きを3D空間でフレーム化し、レース画像を3Dで復元することで、大事な瞬間を360度から見ることができる。様々な角度から表示するだけでなく、近景遠景など様々な映像で表現することで、視聴者や観客にわかりやすく解説できる。また選手の動きを技術的に数値化して分析し、スピード、高さ、着地距離、回転角度などの一連の動作データの数字を画像とともに表示可能になる。百度の技術はウィンタースポーツに限らず、夏季オリンピックでも飛び込みや卓球の中国代表選手のトレーニングに活用された。

AI訓練補助システム

スキージャンプやノルディックバイアスロンの中国選手の育成には、「清德智体(北京)科技」が開発した「上海体育学院2021体操教学訓練AI補助システム」を採用した。これは中国の測位システム「北斗」やドローンを活用し、選手の滑走、ジャンプ、飛行や着地の姿勢を体系的に分析·測定して、コーチや選手がトレーニングプログラムを調整できるよう科学的にデータをサポートするシステムだ。

選手の育成ではAI以外にもビッグデータを活用し、身体的·精神的な特徴などから強いスポーツ選手のモデルを構築して、それを基にアスリートのスキルアップトレーニングを支援するシステムを準備しているという。

コーチや選手がトレーニングプログラムに導入したAIシステム

AI翻訳・バーチャルキャスター

AIといえば忘れてならないのは翻訳だ。中国で音声系AIと翻訳に強いアイフライテック(科大訊飛)は、大会での自動音声変換·翻訳の独占サプライヤーとして、北京オリンピックの音声認識、音声合成、機械翻訳、自動質問応答などの機能をサポートするプラットフォームを提供した。オリンピック会場利用者が入れるアプリ「冬奥通」や、会場内に設置された端末に導入された。このプラットフォームでは、60言語の音声合成、69言語の音声認識、168言語の機械翻訳に対応し、主要言語の精度率は95%以上、1センテンスあたりの平均応答時間は0.5秒以下という性能を実現している。

メディアでもAIは活躍する。バイドゥとテンセント(騰訊)は、それぞれ自社のクラウドシステムを活用して手話キャスターをリリースした。バイドゥの名前なき手話キャスターとテンセントの手話キャスター「聆語」は中国手話辞典をベースに忠実に動き、百度の手話キャスターについては百度智能雲の手話翻訳エンジン、自然運動エンジン、仮想画像駆動エンジンを組み合わせて、視聴者に専門的で正確な手話解説を提供する。バーチャルキャスターの生成は百度智能雲のデジタルヒューマン生成とコンテンツ制作を統合したプラットフォーム製品「デジタルスター運営プラットフォーム」によるもので、これにより放送局向けや、ブランド向けのバーチャル司会や、バーチャルアイドルや、CMキャラクターなどの制作·運営ができるという。

AI手話キャスターが視聴者に専門的で正確な手話解説を提供する

天気予報も男性のキャスター「馮殊」氏にそっくりなバーチャルキャスター「馮小殊」がニーズに応じて逐一報じる。このキャスターを動かす各種エンジンは中国企業ではなくマイクロソフトが提供し、1週間のニューラルレンダリングによる学習を通して本人そっくりに動くようになったという。天気予報のための天気分析についてもビッグデータやAIを活用し、より細かいスポット単位で予想できる気象予報システムが導入された。

会場外ではアリババのバーチャルキャラクター「冬冬」が、毎日夜7時半から2時間程度オリンピックオフィシャルストアのライブコマースでグッズを販売。また2月2日のオリンピック文化節の開幕式では、ボーカロイド発のバーチャルアイドル「洛天依」が曲「Time to shine」を披露した。各社がこれまで培ったAIをはじめとした技術を使って、五輪の場でバーチャルキャラクターが活躍した。

男性のキャスター「馮殊」氏にそっくりなバーチャルキャスター「馮小殊」が天気予報を報じる

無人運転車・サービスロボット

ロボットにおいては、会場でAIが欠かせない無人運転車が活躍。オリンピック村内の移動のバスにインテルの子会社Mobileeyeのシステムが導入されたほか、会場内外を自由に人が出入りできない代わりに活躍するモノを運ぶ物流ロボットは京東物流が提供、他にも会場を巡回しマスクの着用をチェックするロボットや、噴霧による消毒作業を行うロボットが活躍した。会場内のレストランでは調理から配膳手前まで全自動で行う碧佳園のロボットレストランソリューションが導入され、120台のロボットにより24時間中華料理や洋食を選手らに提供、またドリンクバーもまたロボットアームが稼働したという。食材の安全にはブロックチェーンを活用した。

調理から配膳手前まで全自動で行うロボットレストランソリューションが導入された

また会場内の案内では「AI四小龍」と呼ばれるMegviiやSensetimeがARナビゲーションシステムを提供した。北京や張家口の各会場でアプリとカメラを通じて周囲の環境を識別し、目的地へのナビゲーションをARで案内し、確実に到着できるようサポートした。

AI以外では新型コロナウイルス対策で磨いたリモート医療ソリューションや、アリババクラウドによる高解像度映像配信ソリューションなどが導入された。北京冬季オリンピックはこのように中国国内外のハイテク企業のソリューションが多く導入されて次世代のテクノロジーを見せてくれた。

(作者:山谷剛史)

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