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企業向けに税務管理SaaSプラットフォーム「税紀雲(Taxera)」を提供する「華盟科技咨詢(Huameng Technology Consulting)」が、このほどプレシリーズAで1000万ドル(約11億6000万円)を調達した。リード・インベスターは「深圳市創新投資集団(Shenzhen Capital Group)」および「梅花創投(Plum Ventures)」、コ・インベスターとして「光遠資本(Forebright Capital)」、「深創投索斯福基金(SOSV-SCGC China Fund)」が参加した。資金はプラットフォームの改良や海外向け商品の投入、国内市場向けサービスシステムの構築などに充てられる。
税収は国の財政収入の重要な源の一つだが、中国政府は税務システム構築に毎年多額のコストを費やしており、2020年には関連プロジェクト1万4139件に総額36億1300万元(約660億円)を投じた。背景には、税務のデジタル化が長期間にわたって解決されていない問題があった。
例えば、納税申告書は現在も手動で入力されている。これまでデジタル化を試みた企業も、一部の単純な自動申告もしくは税務計算が簡単な零細企業へのサービス提供にとどまっていた。
税務管理のデジタル化が難しいのは、中国税務が非常に複雑であることに加え、市場の変化に応じて税務規定が絶えず変化することに起因する。例えば、新型コロナウイルス流行時に政府が導入した税制優遇措置に関して、企業は税控除の要件を満たすかどうかを判断した上で政策に沿って控除額を決定する必要がある。
1つの税種でも数十項目の税会不一致による差額を調整しなければならない場合もある。中国には18の税種と120種類以上の税務申告書が存在するため、税務全般に渡るデジタル化改革には課題が多く、困難を極める。
一方、税務専門家の不足から企業の税務管理コストは高止まりが続いており、税務のデジタル化が急務となっている。人手だけに頼って税務政策の理解や企業運営の整理等を行うと、どうしても不注意による漏れや判断ミスといった事態が発生する。
これを踏まえ華盟科技咨詢は2021年4月、税務管理SaaSプラットフォーム「税紀雲(Taxera)」を発売した。他商品と比較して「税紀雲」には3つの大きな特徴がある。
第1に、「税紀雲」はワンクリックの税務申告および支払い機能を備えている。RPA(ロボットによる業務自動化)で企業と電子税務局を直接結び、APIで財務システムデータを取得し税金を自動計算すると同時に適切な税務申告表を作成、税務申告と支払いをワンクリックで完了させる。企業にとっては手動入力が必要なくなり、企業運営が効率化しコストを削減できる。
第2に、「税紀雲」にはさまざまな大型データベースが組み込まれている。華盟科技咨詢の財務・税務専門家が変化する関連法規定をタイムリーに確認し、即座に「税紀雲」の更新を行うことで、常に現行の法規定に即した税額計算を行うことを可能とする。また、中国の財務および税務関連法規定を集めた独自のオンライン法規ライブラリはリアルタイムで更新され、ユーザーは最新の法規定を確認することができる。
華盟科技咨詢の共同創設者兼最高経営責任者(CEO)廖红暉氏によると「税紀雲」には財務・税務情報を含む上場企業のデータベースが組み込まれている。これにより顧客企業に対して同業他社の税負担率の比較等を提示し、税負担状況を相対的に示すといった適切な税務管理サポートを提供できる。
第3に、「税紀雲」がカバーする分野は多方面にわたる。業務、財務、手形、税務を包括的に網羅し一体化を実現。また、企業の研究開発、調達、生産、販売のバリューチェーン全体の税管理をプラットフォームに統合。加えて、グループ管理、本店・支店管理、リスク管理などのセクションを設け、企業がワンストップで税務管理できるようにしている。
「税紀雲」は、企業所得税の計算・納税を完全自動化で行える中国唯一の税務SaaSプラットフォームでもある。華盟科技咨詢の創設者兼董事長の孫桂華氏は「最も難易度の高い所得税の計算・納税を可能にして初めて主要大手企業を顧客にできるため、所得税専門チームが一年がかりで取り組んだ」と所得税モジュールの重要性について語る。
実際、税務市場の全体的な傾向から見ると、税務管理はより緻密化する傾向にある。2021年に中国は、税務情報管理をデジタル化する国家プロジェクト「金税4期」に入り、「請求書による課税」から「税のデジタル化」への過渡期を迎えている。
「税のデジタル化」とは、税務当局や銀行などの機関が手形情報に加え業務および財務データを共有し、税務徴収を図るのだ。過去の「請求書による課税」段階では、税務当局は企業の請求書のみを用いて納税額を計算せざるをえなかった。
税のデジタル化段階に入って企業により高い情報開示が課されたこともあり、税務のデジタル化市場が形成されている。科学技術系シンクタンクの甲子光年は、2021年の中国のスマート財税務市場規模は697億元(約1270億円)となり、今後5年間に年平均15%のペースで成長を続け、2025年には1230億元(約2兆2400億円)に達すると予想する。
中国の法人向けサービス市場は、財税務の情報化の構築というメインテーマの影響を受けている。1981年の会計デジタル化は中国の会計情報化の出発点と考えられており、それ以来「請求書による課税」へと税制改革が進み、「用友(Yonyou)」「金蝶(Kingdee)」といった会計ソフトウェアが多くの場面で使用され、企業内で浸透することとなった。
財務管理のデジタル化の発展ペースは相対的に迅速であり、すでに比較的整備された産業と市場空間が形成されつつあるものの、税務システム全般に技術を広範に取り入れ、税務のデジタル化水準を向上させる必要がある。
廖CEOは、税務のデジタル化は、IT主導ではなく税務専門主導で行われるべきであり、税務デジタルトランスフォーメーション(DX)を行うために、税が基本となる。そのため、税を理解した上で研究開発を進めるのは「税紀雲」の特徴であり、同社の優位性だと考える。
華盟科技咨詢では、従業員の多数が世界四大会計事務所のマネージャーまたはパートナー経験者であり、税務専門の研究開発人員は50人と全体の30%近くを占める。また、20人以上のコンサルタントが、「税紀雲」プラットフォーム以外でも一部企業による個々のニーズに対応し、税法に関する知識および特別案件の経験を蓄積している。
2019年の立ち上げから2年以内に「税紀雲」は中国国内税(法人税と個人税を含む)全種類のデジタル化商品を発表した。華盟科技咨詢の創設者である孫桂華氏は今後1年の展望について、今年は中国の増値税輸出還付と外国税額還付に対応し企業の海外進出を支援するほか、来年にはクロスボーダー関連取引の所得税申告のほか、香港および海外税務の申告も可能にする計画だと述べた。
経営陣は、創設者の孫桂華氏は過去に財政部と国家税務総局に勤務し、深圳の大手会計事務所のチーフパートナーを務めたほか、世界四大会計事務所で働いた経験がある。共同創設者廖CEOは、ウォルマート・チャイナのバイスプレジデントやワンダ・スポーツのグローバル最高財務責任者を歴任。共同創設者の羅聖濤CIOは、中国大手会計事務所でITコンサルティングと大企業の情報化を管理した経歴を持つ。
今回の投資家である梅花創投の創設者、呉世春氏は「デジタル・インテリジェンス」は、予想を大きく上回る速さで我々周囲の様々な産業を大きく変革させた。税務分野のデジタル・インテリジェンス改革には、十分なインテリジェント化技術のほか大中小企業毎に異なる現状を踏まえ業界慣行に沿った判断が必要であり、地域ごとの状況に適した方法で税務知識を少しずつ蓄積していくことが最適ルートと言える。華盟科技咨詢は同方面で卓越し、税務管理分野でも多数のトップ企業から高く評価されていることから、「税務SaaS」分野のユニコーン企業として成長することを期待しているとコメントしている。
(翻訳・大沢みゆき)
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