中国版StockX「ポイズン」、業績拡大にブレーキか バイトダンスが株式売却検討

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中国ネット大手のバイトダンス(字節跳動)が現在、限定スニーカーの売買で知られる電子商取引(EC)プラットフォーム「得物(Poizon、ポイズン)」の株式(出資比率10%未満)の売却を検討しており、すでに協議を進めているという。ブルームバーグが報じた。

バイトダンスがポイズンの株式を取得した経緯は公表されていない。しかし、バイトダンスは2019年、ポイズンの大株主でスポーツ専門ポータルサイトなどを運営する「虎撲文化伝媒(HUPU Sports Media)」(以下、虎撲)が実施したプレIPO(新規株式公開)ラウンドで出資したことが分かっている。その際、間接的な形でポイズンの株式を取得したとするのが業界の共通認識となっている。

ブルームバーグによると、ポイズンの現在の評価額は100億ドル(約1兆3500億円)を超えている。2019年4月に実施した資金調達の際の評価額10億ドル(約1350億円)の実に10倍だ。

ポイズンは、虎撲の共同創業者である楊冰氏が15年に設立した「毒App」を前身としている。当初はスニーカーの鑑定に特化した情報交換プラットフォームだったが、ユーザーの増加に伴ってECシステムを導入し、取引仲介事業を展開。米国発のスニーカー専門マーケットプレイス「StockX」と類似したスタイルに発展した。

スニーカー取引市場に横行する偽物を排除するため、ポイズンは「鑑定後の商品発送」方式を採用し、取引成立ごとに手数料として技術サービス料、振替手数料、検査料、鑑定料および包装サービス料を徴収。スニーカーの価格が上がれば手数料も上がる仕組みとなっている。

このビジネスモデルが投資家の注目を集め、ポイズンは18年10月から19年4月までの半年間で3回の資金調達に成功した。虎撲のほか、セコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)、ロシアのDST Globalなどが出資に参加し、評価額は10億ドルに達した。

ポイズンはスニーカー取引市場の限界を見極めていた。20年1月には正式名称を毒Appから得物に改め、「トレンド商品のオンラインショッピングコミュニティ」をコンセプトに掲げ、取扱商品の幅をスニーカーから衣料品、アートトイの分野まで広げた。

ターゲットユーザーはZ世代を中心とする若者だ。ビッグデータ分析の「易観千帆」によると、22年4月時点のポイズンのユーザーの年齢構成は、24歳未満が16.99%、24〜35歳が63.87%と35歳以下が8割強を占めていた。ポイズンは取扱商品で若者の心をつかんだ。ネットサービス大手「新浪(Sina)」が若者を対象に実施した「最も注目しているトレンド商品」に関するアンケート調査では、21.68%が衣料品、19.86%がスニーカーと回答している。

ポイズンは21年、流通総額(GMV)が800億元(約1兆6000億円)に達し、中国9位のECプラットフォームとなった。同年5月の月間アクティブユーザー数(MAU)は8100万人、1日当たりの利用者数(DAU)は1200万人だった。上海市内2カ所に設けた実店舗にも多くの若者が足を運んでいる。

しかし、GMVとユーザー数が拡大する一方で、新規ユーザーの獲得は難しくなり、運営コストも増加した。しかも、大手各社が続々と若者をターゲットにトレンド商品を取り扱うソーシャルECを打ち出しており、市場競争も激しさを増している。

21年には京東集団(JDドットコム)がSNS「微信(WeChat)」のミニプログラムとしてトレンド商品を巡るコミュニティ「芥麽」を開設し、バイトダンスがトレンドファッションに特化したソーシャルECアプリ「抖音盒子」をリリース。22年3月には新浪傘下で地域密着情報を提供する「新浪同城」がトレンドに敏感な若者向けのソーシャルECアプリ「Hobby」を、4月にはアリババ集団もトレンド商品を取り扱うソーシャルECアプリ「態棒」を打ち出した。

ポイズンは積極的な事業拡大を試みているが、サービスの品質に対するクレームも相次いでいる。上海市市場監督管理局が22年初め、ECプラットフォーム9社を対象に衣料品や靴、カバンなどの抜き取り検査を実施したところ、ポイズンの不合格率が5割と最も高かった。新浪傘下の消費者サービスプラットフォーム「黒猫」にはここ1カ月でポイズンに対するクレームが7639件寄せられ、これまでの累計が15万1800件に達した。クレームの大半が、偽物、鑑定時間の長さ、返品対応の遅さの3点に集中している。

バイトダンスによる株式売却の報道は、厳しい状況に直面するポイズンに深刻な影を落としている。

原文提供:雷達Finance(WeChat ID:radarcj)
(翻訳・田村広子)

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