2022年のガチ中華の動きを振り返る:池袋エリアの飽和、次の激戦区は……【中華ビジネス戦記】

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2022年はガチ中華がテレビや雑誌で何度も取り上げられ、ユーキャン新語・流行語大賞の候補にも入るなど昨年よりも知名度が大きく向上した。筆者自身もガチ中華を食べ歩いていてブログで発信していることから、新聞社やWebメディアなどから原稿執筆や店紹介などを依頼されることも増えた。2022年のブログを振り返ってみると記事の更新が約70件、そのうちおよそ50店舗が今年オープンした店舗だった(記事にしていない店や行きたいリストに入ったままの店も多いので100店舗以上はオープンしているはずだ)。今年オープンした店の傾向を店の場所と料理の地域から紹介したい。

池袋より熱い上野・御徒町エリア

2022年に出店が目立ったのは上野・御徒町エリア。15店舗以上が新たにオープンした。本連載でも紹介した内モンゴルの羊肉焼売が食べられる一笹焼売や、中国の火鍋チェーンの譚鴨血などだ。アメ横の中でも中国人が経営する店は増えており、御徒町から湯島に向かう春日通り沿いも新店が目立つ。これまでは一部のビルに集中していたが、ここ1~2年で上野・御徒町エリア全体に広がりをみせた。丸の内などのオフィス街からもアクセスがいいため同エリアに住む中国人も増えており、近くで働く中国人の層を狙った店が増えているようだ。

内モンゴルの羊肉焼売

同エリアに出店した九年食班は1980~90年代の中国をイメージした内装が話題を呼んだ。オーナーによれば客層は30~40代の中国人がメインだという。

池袋でも10店以上がオープンしているが、上野・御徒町エリアより少なかったのはすでにガチ中華の店が飽和状態になりつつあるからだろう。評判が良くない店が閉店するケースも見られ、来年以降池袋や上野御徒町エリアでは競争がさらに激化しそうだ。

クラシックな内装が話題を呼んだ九年食班

料理もバリエーションも増加

さらにこの1年で料理のバリエーションが広がった。これまでは中国東北出身のシェフが作る東北料理や四川料理の店が多かったが、他店と差別化を図るためにオーナーの出身地の郷土料理を押し出す店や現地から料理人を呼び寄せる店が増えたのだ。海南省のココナッツウォーターを使った椰子鶏火鍋や広西チワン族自治区桂林の名物である桂林米粉、広東省潮汕名物の潮汕牛肉火鍋など数年前の日本では食べられなかった中国の地方料理も数多く見られるようになった(これらの店も三河島や浅草、湯島など上野から近いエリアに出店している)。いずれの料理も四川料理のような唐辛子をたっぷり使った派手な見た目とは違い、一見地味だが素材の味を生かした料理が多いのでぜひ食べてみてほしい。

海南島名物の椰子鶏火鍋

一方でオペレーションが比較的簡単で参入しやすい四川・重慶火鍋の店もここ数年、かなりの勢いで増えており池袋や上野ではそれぞれ10店舗以上になった。もちろん火鍋のスープの出来や素材の新鮮さなど、店によって違うのだが、大きな差別化が難しい店舗では価格競争に走ることも多く、火鍋店ではお昼の時間にランチバイキングを始めた店も現れた。来年以降も火鍋店の出店が続けば淘汰が一層激しくなりそうだ。

ランチバイキングを始めた火鍋店

中国がゼロコロナ緩和を宣言し、日中間の往来もコロナ禍以降最も活発になりそうな2023年。知り合いのガチ中華店オーナーはコロナ禍で中国から料理人を呼び寄せることができないと嘆いていたが、来年以降は解消され、さらにガチな料理が食べられるようになるかもしれない。

阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng

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