QRコードより手軽で安全、アリババとテンセントが「手のひら認証決済」開発急ぐ

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スマートフォンを開き、二次元コード(QRコード)の読み取りによって決済することが中国人の日常となった。アリババと騰訊控股(テンセント)をはじめとする電子決済技術大手の努力によって、モバイルインターネット時代に入ってから10年以上が経ち、中国でもキャッシュレス化が進んだ。

これらの企業はすでに次世代のモバイル決済技術を開発し始めている。

アリババ傘下のモバイル決済サービス「支付宝(アリペイ)」は「掌紋決済」機能を開発中で、すでに「掌紋認証端末」「掌紋認証装置」「生体認証端末」「代金受領端末」などに関する特許を取得すると共に、オフライン決済時にユーザーが認証エリアに手のひらを置くだけで決済可能な掌紋決済端末のプロトタイプを複数開発している。

アリペイ、掌紋決済機能を開発 顔認証に比べプライバシーに配慮

競合相手のテンセントも遅れをとってはいない。公表された資料によると、騰訊科技(Tencent Technology)は「微信支付(WeChat Pay)」の掌紋認証機能「微信刷掌」の図形商標を申請している。複数の業界関係者によると、掌紋認証決済は顔認証決済と二次元コード決済の中間形態として、個人認証と決済の総合的な体験が優れているため、支付宝と微信支付が導入を進めているという。

テンセント、顔認証に代わる「掌紋認証決済」装置の特許を取得

二次元コードにはスマートフォンのロック解除、アプリの立ち上げ、コードの読み取りという3つのステップがあり、NFC決済やクレジットカードに比べるとやや不便だ。また、二次元コードは偽造されやすいという問題もある。顔認証はストレス無く決済できるが、顔データの収集が煩雑なだけでなく、セキュリティのリスクもあり、顔の写真や動画などを使って認証システムを騙すという問題も発生している。

これに対して掌紋認証は手のひらをかざすだけで決済できる上、掌紋の身体的特徴を完全に抽出することが難しいため、安全性が比較的高く、消費者の心理的な抵抗も少ない。

しかし、手のひらをかざして決済するというアイデアは素晴らしいが、実現は容易ではない。指紋認証、顔認証、そして掌紋認証でも、収集した生体データをデータベースに置かれているデータと対比し、一致するかどうかを類似度の「閾値」で判定するため、「閾値」が生体認証のコア技術となる。

大量のデータを基に、深層学習などの人工知能(AI)技術に支えられている顔認証技術の数は多い。対象的に掌紋認証は、AIに学習させるための十分なデータサンプルが無いことも精度に影響を及ぼしている。

掌紋決済にはコスト的な弱みもある。加盟店にとって、決済コードを印刷するだけで良い二次元コードのコストはゼロに近いが、掌紋決済を使うには掌紋を読み取る専用端末が少なくとも1台必要で、これは間違いなく追加出費になる。例えば支付宝は、初めて顔認証決済を普及させ始めた時、「蜻蜓」という専用端末を1999元(約3万8600円)で発売した。仮に支付宝が加盟店に補助金を出しても、ハードウエアに加え、導入後のファームウエアのアップグレードやメンテナンスなどにかかる費用が加盟店の導入意欲を削いでいる。

また、中国ではユーザーの個人情報に関する懸念が高まっている。中国支付清算協会が2022年4月に発表したアンケート調査結果によると、ユーザーの20.2%は生体認証技術を使った個人認証と取引認証を受け入れていない。指紋認証と顔認証を経験したユーザーは、以前と同じように手のひらの情報を渡すのだろうか。

中国で掌紋認証決済が急速に普及するには、まだ大きな課題がある。

(翻訳・大谷晶洋)

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