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米EV(電気自動車)大手のテスラが1月25日に発表した決算は、予想通り振るわないものだった。2023年の年間売上高は、前年同期比19%増の967億7300万ドル(約14兆3800億円)で過去最高を記録したが、営業利益は35%減少して88億9100万ドル(約1兆3200億円)にとどまった。粗利益は15%減の176億6000万ドル(約2兆6200億円)、年間粗利益率は昨年から7.35ポイント下がって18.2%だった。
決算発表後にテスラの株価は12.13%下落し、2020年以降で最悪の一日となった。本稿執筆時点では、決算発表前に比べ12.8%安の181.06ドル(約2万7000円)で、時価総額は5766億ドル(約86兆円)だった。
テスラの年間利益が減少したのは実に7年ぶりとなる。その主な要因は自らが引き起こした価格競争だ。
テスラは2023年に先頭を切って値下げに踏み切り、後には引けない値下げの連鎖に突入、人気の小型車種「モデル3」の中国市場における価格は一時22万9900元(約480万円)にまで下がった。競合の多い中国では特にEVの価格競争が激しく、「モデル3」や「モデルY」の競合車種が数多く市場に投入され、価格の最低ラインは一度ならず引き下げられていった。こうしたことがテスラにとって大きなプレッシャーとなったことは間違いない。
それでもテスラの23年の生産台数は世界で約185万台、納車台数は約181万台に上り、年間販売目標を達成した。うち10~12月期の納車台数は、前年同期比19.5%増の48万4500台だった。四半期の納車台数としては過去最高を記録したものの、EV販売世界一の座は中国EV最大手「BYD(比亜迪)」に明け渡すことになる。BYDは10~12月期に52万台以上を売り上げ、四半期の販売台数で初めてテスラを上回った。
終わりの見えない価格競争でテスラは泥沼に陥っており、さらなる競争激化が予想される2024年にその自信も揺らぎ始めている。2024年の販売目標は発表されていないが、「販売台数の伸び率は23年より大幅に低くなる」との見込みを明らかにしている。そこでテスラは年明け早々中国で再び値下げに踏み切り、改良版モデル3を最大で1万5500元(約32万円)値引きした。
繰り返す値下げは利益を圧迫することになり、高い粗利益率も過去のものとなった。テスラは決算報告書の中で、今は大きな成長の波のはざまにあることを認めている。最初の成長の波はモデル3とモデルYがけん引したもので、次の成長の波は次世代車両プラットフォームが世界に拡大することで始まるという。
つまり、2024年はテスラにとって端境期の1年になるということだ。計画中の低価格モデルはまだ量産できず、電動ピックアップトラック「サイバートラック」もようやく納車が始まったばかり、定番モデルは四方をライバルに取り囲まれている。いかに大幅な減益を回避しながら2024年を乗り切るか、これがテスラにとって最大の試練と言えよう。
*2024年2月6日のレート(1ドル=約149円、1元=約21円)で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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