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中国で自動運転技術を手がけるスタートアップ企業、深圳元戎啓行科技(DeepRoute.ai;以下「ディープルート」)の周光CEOがインタビューに応じ、自動運転に使う人工知能(AI)の技術を巡り日本企業と協議を進めていると明らかにした。
2024年8月に中国で量産化を開始した最先端の自動運転プラットフォームは、わずか4カ月で3万台を超える乗用車に搭載された。「25年には少なくとも20万台、26年には50万台に達する」と語る。周CEOは「中国企業は開発スピードが速く、技術を次々と進化させているが、世界で最強のライバルはやはり米国のテスラだ」と述べる一方で、自社のAI技術が抜きんでていると力説した。HDマップ(高精度3次元地図)を必要とせずに、周辺環境の認知から運転の操作までをすべてAIが担う「エンド・ツー・エンド(E2E)」技術を実現したという。
「最強ライバルはテスラ」
ディープルートは高度なE2E自動運転プラットフォーム「DeepRoute IO」に強みを持つ。このIOプラットフォームは、HDマップに依存せずに、センサーで感知した情報を基に、自動車を動かすことができるソリューションだ。センサーでの感知から制御までの膨大な量のデータをAIの訓練に活用することで、システムによる複雑な運転をさらに改善することができる。周CEOは「中国の道路状況は非常に複雑で、道路工事が多く、スクーターも突然飛び出してくる」と述べ、エッジケース(想定が難しい極端な事例)にはHDマップだけでは対応に限界があると強調した。
ディープルートは、OEM(相手先ブランド生産)先に合わせて商品を開発することができる。同社製品を搭載した電気自動車(EV)は現在、1台当たり30万元(約630万円)程度で販売されている。昨年11月にディープルートに1億ドル(約156億円)の出資をした中国大手の長城汽車のほか、メルセデス・ベンツと吉利汽車が共同出資するEV事業「智馬達汽車(Smart Automobile)」にも供給している。量産化が進むにつれ、今後は搭載コストがさらに削減される見込みである。
ライバル視するテスラは、中国百度(バイドゥ)傘下の地図サービスを活用するほか、イーロン・マスクCEOはかねてからLiDARを高価でムダな投資だとして「頼るものは破滅する」と主張してきた。カメラだけで自動運転を実現できると従来から発言してきたが、昨年からLiDARへの投資も報じられている。
周CEOはLiDARの有無よりもAIの完成度が重要だと指摘し、使うかどうかはOEM先のニーズに応じて対応すると説明しており、路線の違いが今後の普及にどう影響するか注目だ。
日本進出の可能性
「AIの学習には仮想データは含まれるか?」「現実にはほとんどないエッジケースはどのように学習させるのか?」「LiDARがない場合の安全性の違いはどうか?」
1月22日に開幕した「オートモーティブワールド2025」のディープルートのブースには、日本の大手自動車メーカーの新規事業部門の担当者が質問攻めにしていた。周CEOの講演の終了後にも名刺交換の列ができた。
周CEOは「日本の自動車メーカーのAI技術はまだ初期段階にある」との見方を示す。ディープルートはわずか8カ月でレベル2+自動運転ソリューションの量産を実現し、たった4カ月で都市部向けNOA(ナビゲーション・オン・オートパイロット)市場で約10%のシェアを獲得した。今年は中国国内でのシェア拡大を強化していく。
一方で、日本をはじめ、海外企業との協業も視野にいれてる。今年、欧州のドイツにもオフィスを設立し、路上テストを開始する予定だ。
「うまくいけば28~29年ごろには日本でも実用化したい」と述べた。中国の自動車メーカーでは、新車開発のサイクルは最短で6ヶ月間にまで短縮されているが、日本企業は慎重な姿勢が根強く、開発期間が約3年程度と時間がかかることが主な理由だ。
関係者によると、ディープルートはすでに日本の大手自動車メーカーや1次サプライヤー(Tier1)のほか、ドイツや韓国などの自動車メーカーとの商談が持たれている。
1月20日にはトランプ米大統領が就任。中国製品に対する追加関税を打ち出しているほか、半導体の調達などにも影響が出る恐れもある。周CEOは仮に中国国内での生産が難しくなれば「海外にライセンスを販売することも選択肢になる」と説明した。
最終ゴールは「AGI」
「AIはかっこいい」と周CEO。高校生のときにロボットオリンピックで金メダルを受賞したことがすべての始まりだという。ロボットで20年以上、AIで10年以上の経験を持つ周氏が、最終目標は「ロボットのための、人間と同等かそれ以上の知能を持つAGI(Artificial General Intelligence)だ」と語った。
25年半ばには、視覚、言語に加えて行動のデータを統合し、ロボットが自分で環境認識して、自然言語の指示を理解して行動できるVLA(Vision-Language-Action)モデルを自動運転車両に搭載する計画だ。テスラの「フルセルフドライビング(FSD)」のバージョン13に匹敵するレベルだという。
「最初に普及するロボットは自動車だ。既に自社技術を搭載した3万台を動かすことができている」と成果を誇った。最終的には、自動運転技術をてこにAGIに近づき、人間のように多様なタスクをこなす「汎用ロボット」の実現を目指す。
*1元=約21円、1ドル=約156円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)
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