中国の自動車学校で「ロボット教官」活躍、1台で10人分の作業代替 合格率も向上

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人工知能(AI)技術の急速な進化が、従来の産業にかつてない変革をもたらしている。中国・北京に拠点を置くテック企業「易顕智能(Envision Intelligent Technology)」は、AIを活用した革新的な自動車教習システム「RoboCoach」を開発し、自動車学校の現場を大きく変え始めている。

2015年に設立された同社は、AIやビッグデータ、音声対話などの先端技術を駆使し、教習業界のデジタル化を後押ししている。創業者の馬宏氏は、自身が自動車教習所9校を運営した経験から、教官の指導レベルのばらつきや教習内容の不均一さといった業界の課題を痛感。これが教習生の受講体験に影響を及ぼすだけでなく、安全面のリスクにつながると考えた。こうした問題を解決するため、北京航空航天大学の教授と共同開発した自動運転車のプロトタイプを使って、AI教習システムをリリースした。

このシステムは簡単に言うと、AIによる運転指導を可能にする「ロボット教官」だ。高精度センサーと高度なアルゴリズムによって、実演指導やルート計画、運転実技モニタリングを自動で行い、音声や画像、動画などで教習生に合わせたアドバイスやフィードバックを提供する。教習所などのニーズや予算に応じて、ハイエンドからローエンドまで3つのバージョンが用意されている。

さらに、独自のAIモデル「GoDrive」により、基本的な操作から複雑な道路状況での運転まで教習のあらゆるシーンに対応し、効率的な指導を実現している。

AI教習システムは、すでに中国29の省・直轄市・自治区で6000台以上が運用され、同分野での市場シェアは93.6%に達した。2024年の売上高は1億元(約20億円)を超え、著名な投資機関の達晨財智(Fortune Capital)からも出資を受けている。

AI教習システムによる標準化された教習サービスを通じて、教習のクオリティと教習生の受講体験を向上させただけでなく、自動車教習所の運営コストを削減し、業界全体の効率を上げた。馬氏は「RoboCoach搭載車を1台購入すれば、教官10人分の作業を肩代わりすることができ、年間で約9人分の人件費を節約できる一方、教習所は設備に投じるコストを1年で回収できる。コスト削減分を教習料金に還元することで、価格に敏感な顧客層の満足度向上にもつながる」と話した。

同社は複数の大手教習所と提携し、事業拡大を進めている。代表的な導入例として、中国最大手の教習所「東方時尚(Eastern Pioneer)」がある。2019年に中国初の24時間利用可能な「スマート教習所」を開設し、わずか7人のスタッフで260台のRoboCoach搭載車を管理する。効率的な運営を通じて、年間3000万元(約6億円)以上のコストを削減した。責任者によると、RoboCoachの教習生はテストの平均合格率が80%で、教官にマンツーマンで教わる従来方式の合格率を5~10ポイント上回るという。

今後は、さらなる浸透率の向上を目指す。向こう5年でAI教習システムの導入台数を20万台に増やし、1000万人の教習生をカバーする計画だ。また、アジア市場を中心に海外展開にも意欲的だ。

高度な自動運転技術の普及が進んだ将来にも、自動車教習は必要かという問いに対し馬氏は、自動運転が絶対に安全だとは言えず、AIが全ての状況を学習することはできないと指摘。AIが人間の判断力を完全に超えない限り、運転を学ぶということの価値はなくならないとの見方を示した。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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