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米中の人工知能(AI)が日本の業務効率化を巡って競争を激化させている。音声認識技術で先頭を走る中国AI大手の科大訊飛(iFLYTEK、アイフライテック)は、ビジネスを支援する文字起こし機能付きのAIボイスレコーダーを次々に日本市場に投入している。4月17日には大阪・関西万博の会場で、2画面搭載のAI翻訳機「デュアルスクリーン翻訳機2.0」を発表し、8月に日本で発売する計画だ。2画面で折りたためるようにすることで、翻訳結果を双方がリアルタイムで確認できるようにした。85の言語に対応しているという。
アイフライテック日本法人の趙翔社長がインタビューに応じ「日本市場は十分に大きく、大きな可能性を秘めた市場だ」と強調した。アイフライテックは、中国では通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)や、新興企業ディープシーク(DeepSeek)とも連携するテック業界有数の大手企業で、そのAIはスマートフォンのアプリやボイスレコーダーなどを通じて、世界で1億3000万人以上のユーザーに、累計40億台以上の端末で活用されている。

一方で、米OpenAIのChatGPTを活用し、文字起こしや要約などができるボイスレコーダーを販売しているのが、米スタートアップ企業のPLAUD(プラウド)だ。実業家の堀江貴文氏が紹介するなど日本で話題となっている。4月24日に記者会見を東京都内で開催し、法人向けサービスの開始を発表した。ネイサン・シューCEOは「最近、AIを使ったハードウェアがトレンドだが、私たちはスタートアップとして世界で最も消費者に支持されていると自負している」と語った。PLAUDのAIボイスレコーダーは112の言語での文字起こしが可能で、世界で70万人以上の利用者がいる。日本でも急成長を遂げて15万人(5月時点)のユーザーのアカウントがあるという。

特徴的な機器で差別化
アイフライテックは中国でも、スマートフォンのアプリなどでサービスを提供しているが、日本ではボイスレコーダーの販売を強化している。電子ペーパーの画面に手書きでメモを取りながら、文字起こしをしてくれるノート型のボイスレコーダー「AINOTE Air2」も4月に日本に投入した。日本市場でスマホアプリではなく、ハードウェア機器の訴求に注力するかについて、趙社長は「専用の機器とすることで、スマホよりも優れた音声で録音ができる」と述べ、「中国の優れたサプライチェーン(供給網)を使うことができる優位性もある」とも強調した。日本のセキュリティ意識の高い企業での使用を想定し、インターネットに接続せずにハードウェア内に音声をとどめて文字起こしができるボイスレコーダーのほか、クラウド経由で処理する場合も日本やシンガポールのサーバーを使用し、中国国内とは完全に切り分けて、ビジネス展開しているという。今後は、日本市場に特化した商品の開発も検討するという。

PLAUDは2023年に、板状でスマホの裏に貼り付けるなどして使う「PLAUD NOTE」の販売を開始した。2024年にはより持ち運びしやすく、小型のボイスレコーダー「PLAUD NotePin」を発売。製品を購入後も、定期的に料金を支払うサブスクリプションが必要で、安定した収益モデルを実現している。シューCEOは「ビジネスの際にスマホを取り出さなくても、録音できる」として独立したデバイスとすることで、業務の効率性を高めることができると強調した。
日本市場の深掘り
アイフライテックは、ビジネス向け機器以外に、中国では教育分野も重要な柱となっている。中国では受験戦争の過熱を背景に、2021年に政府が開始した学校の宿題と塾の学習負担を軽減する「双減」政策で、塾業界が大打撃を受けた一方で、自宅で使える学習関連の機器のが急拡大し、新たな産業として定着している。日本市場では英語学習のアプリなどを提供しているものの、まだ「日中の間では学習の内容などに違いがある」(趙氏)として進出できていない。将来的には「教育熱心な日本は中国と似ている部分が多い」として、日本進出の機会をうかがっている。
プラウドも、スタートアップながら今年に日本法人を立ち上げた。シューCEOは「日本を市場としてのみとらえるのであれば輸出すればよいが、日本社会に貢献したいと考えている」と述べた。日本での従業員の現地採用を強化し、エンジニアなど10名程度の雇用を増やす方針を明らかにした。今後は100人規模としていく方針だ。また、日本の大手企業との提携や、現地データセンターの確保なども課題として挙げた。「日本人のエンジニアとの共同開発により、ユーザーに安心感を与えたい」と強調し、日本市場の深掘りを今後も継続していく意欲を示した。
(36Kr Japan編集部)
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