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AIマーケティングを手掛ける中国スタートアップ「橙果視界(深圳)科技(Oran.AI)」が新たに数千万元(数億円)を調達したことを発表した。雲天使基金(Cloud Angel Fund)が出資を主導し、力合資本(Leaguer Capital)と金沙江聯合資本(GSR United Capital)も参加した。調達した資金は、データ規模をさらに拡大し、業界に特化した事後学習用大規模モデルのアップデートを進め、AIマーケティングツールのビジネス利用を加速するために活用される。
橙果視界は2024年5月に設立され、AIマーケティングツール「PhotoG」「DataG」「VoyaAI」を通じて、的確なインサイトからクリエイティブなコンテンツ、SNSマーケティング、グローバル展開まで、AIを活用した総合マーケティングソリューションを提供しており、家電や美容、日用消費財、ファッションなどさまざまな分野で世界的トップクラスのブランドと提携している。
注目に値するのは、中心メンバーがいずれも1995年以降に生まれた若い世代であることだ。創業者の劉昆CEOは98年生まれで、同済大学の建築学科を卒業している。橙果視界はオープンソースコミュニティ「AID Lab」のプロジェクトからスタートし、わずか1年でビジネス化にこぎ着けた企業として広く注目を集めるようになった。設立から半年後には中国ネットサービス大手のテンセントと提携し、中国初のAIGC(AI生成コンテンツ)デザイン共同実験室を開設して、業界の標準化を進めている。
この数年でAIGCの波が一気に押し寄せ、AI広告のポテンシャルにもスポットが当たった。しかし課題も存在する。市場では、AI広告のクオリティは低いという認識が根強いほか、AI技術を実際の課題解決に落とし込みつつ、データの有効活用やコスト削減をいかに実現するかについて懸念が残る。劉CEOは、「これらの課題の解決にはもう少し時間が必要」とした。
さらに劉CEOは「エンドツーエンドのAIエージェントにより、さらに完成度の高いサービスを提供したいと考えている」と説明。こうした方法により、市場ニーズに対するインサイトからコンテンツ戦略立案と画像・動画生成までを自動で完結させ、ワンクリックで複数のSNSにアップするという一連のサイクルを構築することができ、作業コストは従来のコンテンツマーケティング費用の10分の1以下に抑えられるという。
商用化するうえでネックとなるのが、生成されたコンテンツの一貫性や再現性だ。劉CEOは、「商品・利用シーン・コピー文については、すでに高い理解精度を実現している。生成の面では、フレーム間の一貫性と物理的事前知識を活用することで、鮮明かつ安定した高品質の画像生成を実現した。生成モデルの性能評価ベンチマーク『VBench-2.0』で、人の衣類評価などマーケティング関連の総合評価は最高水準に達し、一貫性は0.92を超えている」とした。
しかし、高品質のコンテンツ生成は始まりにすぎない。劉CEOは、ビジネスの本質は「見て、理解し、取引する」ことだと考えている。この考え方に基づき同社は、視覚言語モデル「Oran-VL 7B」から全モダリティ理解の大規模言語モデル「Oran-XL 72B」までをそろえた認識マトリクスを構築し、AIが単に「見る」だけでなく複雑なビジネスシーンやユーザーのニーズを「理解」できるようにした。
劉CEOはさらに、大規模言語モデルの性能を競うだけでは差別化は難しいと指摘。本物の優位性はデータの質や即時性、特にコンテンツのトレンド洞察やコンバージョン率などのデータ面にあると語る。
橙果視界の売上高は今年に入ってすでに1000万元(約2億円)を超え、国内外の美容、日用品、ファッション、家電などを中心に40社以上の大手顧客と提携している。こうした顧客はマーケティング予算が潤沢で、意思決定が速く、マーケティングプロセスが短めなため、AIのサポートや効果が分かりやすい。
将来的には生成AIによって広告業界のロジックを根本から再構築し、労働集約型だったマーケティング業界でAIを活用した自動化を進め、アイデアや意思決定、広告投入などの部分にもAIを拡大させたいと考えている。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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