カジュアルゲームの成功者 トーキング・トムと「Outfit7」が築いた10年の実績

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猫の人気キャラクター「トーキング・トム」とそれを生み出したゲーム開発会社の「Outfit7」は最近、設立から10周年を迎えた。大多数のゲームIP(知的財産)にとって、10年という歳月はリスクと到達不可能を意味するが、トーキング・トムはその活力を保つ方法をみつけたようだ。

「隠れたボス」10年の実績

Outfit7は2009年に設立され、キプロスに本拠を置く。同社は10年間でトム、アンジェラ、ベンといったバーチャルキャラクターとゲームアプリ22本をローンチした。ゲームアプリはペット系、パズル系、パルクール系、シューティング系などに及び、ユーザー数、アクティブ率、収益力を安定的に伸ばしている。

公式データによると、9月の時点で、トーキング・トムシリーズの世界でのアプリダウンロード数は延べ100億回超、月間アクティブユーザー(MAU)は3億7000万人超、デイリーアクティブユーザー(DAU)は5000万人超に上った。また2018年度のOutfit7の売上高は前年比26%増の10億7700万元(約170億円)だった。アプリ市場データと分析ツールを提供する「App Annie」が発表した2018年のiOSおよびGoogle playのゲーム総合ダウンロード世界ランキングでは、ゲーム開発・発売の仏「Voodoo」、ゲーム開発・販売の仏「Ubisoft」、中国IT大手のテンセント(騰訊控股)に次ぐ第4位だった。また中国、インド、ロシア、メキシコでのダウンロード数はいずれもトップ7に入っている。

Outfit7は2017年に中国A株上場企業の「金科文化(Jinke)」に完全買収された。36Krは先ごろ、Outfit7の銭信宇CEOに独占取材を行った。同氏は金科文化でOutfit7の買収に関わり、その後Outfit7でグローバル事業の責任者を務めている。

2018年のiOSおよびGoogle Playゲーム総合ダウンロード世界ランキング

収益モデルとIP立体化戦略

カジュアルゲームの主な収益源は広告だ。ゲームコンテンツを通じて大量のユーザーを確保し、ゲームアプリをトラフィックプールに変えれば、他のゲーム、SNS、ショッピングなどのアプリにトラフィックを誘導することが可能となる。その方法は、アプリ継続利用のための広告再生やゲーム内広告だ。トーキング・トムシリーズもこのようなかたちをとっている。

10周年パーティーの後、Outfit7の経営幹部は会議を開き「IP立体化戦略」について話し合った。10年存続する古いIPとして、連続アニメ、派生商品、遊戯施設などで新たな可能性を切り開くための検討を行った。

連続アニメに関し、トーキング・トムシリーズの動画やシリーズ短編はこれまで米国のYoutube、Netflix、中国の「優酷(Youku)」「愛奇芸(iQIYI)」「騰訊視頻(テンセント・ビデオ)」、「芒果TV(Mango TV)」など国内外の主要ストリーミングプラットフォームによって4シーズンにわたり配信され、再生回数は延べ400億回を超えた。国外でも100カ国以上のテレビ局と提携している。

また派生商品としては、金科文化は親子生活用品ブランド「トーキング・トムの家」をリリースし、親子ユーザーをターゲットに子ども服、おもちゃ、家庭用品などを展開。アリババと戦略的提携を結び、ライセンシング商品の開発、マーケティングライセンシング、空間ライセンシング、プロダクトプレイスメントを含む事業を共同で進める。

さらに子ども向け遊戯施設では、「トーキング・トム親子パーク」を合肥と紹興のショッピングモールに設けており、杭州、寧波、鄭州でも設置を計画している。

とはいえ売上比率でみると、新規事業の試みは相応の価値を生み出していない。2018年度の売上高10億7700万元の内訳は、約70~80%がゲーム(うち約9割が広告収入、1割が課金)、5~10%が動画再生で、ライセンシングおよびその他イノベーション事業による売上はわずか1%にとどまった。

グローバル展開および中国との接近

カジュアルゲームはテキスト、音楽、ストーリーなどのコンテンツに分かれ、言語や民族を超えた普及力があり、IPのグローバル化を加速させた。トーキング・トムは金科文化による買収で、今後は必然的に中国市場とのより大きな関連性を持つことになるだろう。

公式データによると、Outfit7の累計ダウンロード数延べ100億回のうち半数、および動画再生回数延べ400億回のうち7割強は買収後の2年9カ月の間に記録されたものだ。

銭氏は36Krに対し、2017年に開始したトーキング・トムの映画制作を現在も継続していることを明らかにし、「『アサシン・クリード』を制作したジャン=ジュリアン・バロンネ氏を招いて作品の制作を進めている。大人も子供も楽しめるファミリー向け映画を目指す。中国に限らず世界中で上映されるだろう」と話した。

次の10年はトーキング・トムとOutfit7にとって困難な道のりとなるだろう。とはいえ、すでに陣容が整い、ファンの基盤も十分に厚いため、今後の激しい戦いの中でもトーキング・トムは好成績を収めることが期待される。
(翻訳・神戸三四郎)

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