汎用バイオ樹脂、強度や耐熱性高く 中国・象生科技が量産化

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バイオベース材料の中国スタートアップ「象生科技(EcoGiant)」がこのほど、2度にわたる追加のエンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達した。出資は美麗境界資本(BMC)、毅達資本(Addor Capital)、納川資本(NanoTrend Capital)が主導し、英諾天使基金(InnoAngel Fund)なども参加した。資金は人工知能(AI)を用いた触媒開発プラットフォームの構築や生産ラインの拡大、工場の自動化に投じる。

象生科技は2024年1月に、深圳清華大学研究院や南京工業大学全国重点実験室を基盤に設立された。AIを用いて開発するナノ触媒と多流路マイクロリアクターと呼ばれる反応器の革新的な技術を生かし、バイオベース材料の量産する時のボトルネックの解消を狙う。

石油由来プラスチックに代わる「グリーン新材料」

日常生活にあふれているペットボトルや包装フィルムの大部分は、石油を原料とするポリエチレンテレフタレート(PET)で作られている。一方、象生科技が取り組んでいるのは、より環境に優しくPETの代替材料となるポリエチレンフラノエート(PEF)の開発だ。

PEFの中核モノマーはFDCA(2,5-フランジカルボン酸)で、トウモロコシやわら、木屑などの再生可能なバイオマスから抽出できる。持続可能な原料であるうえ、工業的な堆肥化によって完全に分解され、カーボンフットプリントは従来のプラスチックを大幅に下回る。

また、高い性能も特長だ。酸素と二酸化炭素に対するバリア性はPETの4~10倍で、機械的強度や耐熱性にも優れている。牛乳パックに使えば消費期限が2倍に延びるほか、ビール瓶にすれば炭酸ガス漏れや品質劣化が起こりにくくなる。将来的にはポリエステルやポリアミド、エポキシ樹脂などさまざまな高機能材料に用途が広がる可能性もある。

象生科技はAIを使って触媒を選定する

画期的システムで量産化のボトルネックを解消

FDCAは、米エネルギー省の「有望な12種のバイオ基幹化合物」に選定されるなど潜在力は高い一方、従来は工程の複雑さやコストの高さが普及の壁だった。象生科技は生産方式を見直し、効率的に化学反応を実行できる革新的なシステムを開発した。

1つがAIを活用したナノ触媒の選定だ。AIを用いて触媒の構造と性能の関係を予測し、多数のサンプルを同時に反応・処理するハイスループット実験を通じて、化学反応を促す活性が高く、特定の反応だけを促進して目的の生成物をつくる選択性に優れたナノ触媒を迅速に選定することで、反応効率を高め原料ロスを低減する。

もう1つが微細な流路内で化学反応を行うマイクロリアクター技術だ。精密に設計されたマイクロリアクターを使って反応プロセスを正確に制御し、安全性と収率を両立する。FDCAを「1ステップ合成」へ簡素化し、安定運転とコスト低減を実現する。

26年に年産1000トン

同社は現在、生産能力100トン規模のFDCA生産ラインを建設中。製品は機能性ポリエステルフィルム、高級繊維、ナノコーティングなどの分野で活用されており、フォーチュン・グローバル500の複数社も提携の意向を示しているという。創業者の于超氏は2026年に年産1000トンのフレキシブルラインへ増強する計画を示した。

象生科技の流体シミュレーション

「1+N」戦略で収益源を多角化

象生科技はFDCA単品に依存しない。再現性が高く、さまざまな化学反応に素早く対応可能なモジュール化プラットフォームを生かして「1+N」の事業戦略を採用している。

「1」に当たる中核事業は新しいバイオベース材料の開発で、海外の高級ブランドといった顧客をメインターゲットとしている。技術サービスを指す「N」では、電子材料化学品や有機光電変換材料などの分野にCRDMO(研究開発・製造受託)のワンストップソリューションを提供し、中国で国産化への切り替えを後押しする。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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