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中国のスマートフォン業界は、前例のないメモリ危機に直面している。 11月初めに韓サムスン電子はスマホ業界に対し、生産能力が逼迫しているため、メモリチップ「LPDDR5」の受注を一時停止すると通知した。これは2026年のスマホ市場に必ず大きな影響を及ぼすことを意味している。
LPDDR(低消費電力ダブルデータレートメモリ)チップは、スマホやタブレットなどが動作する際のメモリであるRAM (Random access memory)向けの主力製品で、これに対して、HBM(高帯域幅メモリ)は 米NVIDIAの画像処理装置(GPU)といった人工知能(AI)の訓練チップに用いられる。両者は同じDRAM(ディーラム) に属するが、HBM は最先端の3D積層技術を採用し、プロセスがより複雑で、単価も高い。HBM3Eの価格はすでにLPDDR5の数倍に達している。

ストレージは「AIに呑み込まれた」
2025年、AI業界は爆発的に成長した。世界の大規模AIモデルの訓練の急拡大を支えるため、NVIDIA は2025年に300〜400 万個のGPUを出荷する見込みであり、一つのGPUには80〜140ギガバイトの HBM が必要となる。ざっくりとした計算では、その年間メモリ消費量は約2000万台のスマホのRAM(1台あたり12GBと計算)に相当し、中国の年間スマホ出荷量の10分の1に近い量に相当する。

さらに、NVIDIAが「前払い+長期の専属契約生産」という戦略を採用し、サムスンやSKハイニックスなどの大手メモリメーカーの最先端プロセスの生産枠を大量に確保している。一方、スマホメーカーは通常は4半期ごとの通常発注のため、交渉力が弱く、生産能力の争奪戦では劣勢にある。
限られた生産能力の下で、HBMの利益率はLPDDRよりはるかに高いため、メモリの大手メーカーはこぞって生産能力をHBMに傾斜させている。サムスンとSKハイニックスはすでに最先端プロセスの生産能力をHBMに優先投入することを明確にしており、LPDDR4/5 などの旧来型の製品のラインを削減している。2025年はもともとシリコンサイクルにおけるメモリの上昇周期にあり、需給はすでに逼迫していた。
結果は明らかだ。LPDDR4Xの価格は 6ドル(930円)から 25ドル(3900円)に上昇した。LPDDR5も同様に暴騰し、11月以降はサムスンが外部からの受注を停止した。市場は「価格があっても製品がない」という状態に入った。業界関係者は、このサプライチェーンの異常による不足は少なくとも2027年まで続くと予測する。
中国スマホメーカーの修羅場
メモリの売り手市場の下で、スマホメーカーの注文はしばしば30〜40%削減されてしまうようになった。「今はどれだけ製品が欲しいかではなく、工場がどれだけ生産能力を回せるかだ」とある業界関係者は吐露した。
市場調査会社Omdiaの調べによると、2025年第7~9月期の世界出荷量は3億2010台に達し、サムスン電子と米アップルがそれぞれ19%と18%を占め、残りの6割はほぼ小米科技(シャオミ)、OPPO、vivo、伝音(Transsion)など中国のスマホメーカーが占めている。メモリの不足と価格高騰は必然的に中国勢に大きな影響をもたらすことになる。
実際、スマホの製品への影響は既に顕在化している。現在、一部メーカーのフラッグシップ機はすでに流行の24GBの大型メモリから16GBに仕様をダウングレードした。同じスペックの機種でも、発売時の価格が軒並み数百元(数千円)値上がりしている。
また、中国産メモリの採用が加速した。シャオミや華為技術(ファーウェイ)などは長鑫存儲(ChangXin Memory Technologies)などのサプライヤーとの協力を模索し、従来スマホのサプライチェーンに入れなかった中国メーカーがチャンスを獲得している。
米調査会社のIDCの予測によると、2026年のスマートフォン市場は全面的な圧力にさらされる。ハイエンドの機種は引き続き値上がりし、ミドルレンジはアップグレードが鈍化、エントリーモデルは製品ライン縮小の可能性がある。
*1ドル=約155円、1元=約22円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)
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