【北京モーターショー2026】最大規模で見えた変節点——「脱・EV一辺倒」と部品勢の台頭

2年ごとに開催される「北京国際汽車展覧会(通称:北京モーターショー)」が今年も閉幕した。北京モーターショーは4月中旬に上海モーターショーと交互に開催される中国の国際モーターショーだが、今年は例年の会場に加え、隣接する新会場の2つで開催、展示面積は過去最大規模の38万平方メートルとなった。17個ある展示ホールには約2000以上の出展者が集い、そのうちの約80以上が自動車メーカー・ブランドとなる。展示台数は初公開車種181台、コンセプトカー71台を含む計1451台にのぼる。

今年の北京モーターショーで強く感じたのは、部品サプライヤーの影響力がかつてないほど増しているという点だ。従来から中国のモーターショーでは、車載バッテリーや自動運転、オーディオシステムを手がける企業が、自動車メーカーと同じホールに出展する傾向があった。それが今年は会場の拡大に伴い、その傾向がさらに加速。これまでの分野に加え、AI音声認識や半導体、地図データといった幅広い業種の出展者が姿を見せている印象を受けた。取材する側としては、北京は上海や広州に比べて会場が小さくて助かっていたのだが、今年はそうも言っていられないほどのダイナミックな催しとなった。

規模が拡大された北京モーターショー2026(36Kr Japan撮影)

「HEV回帰」の兆しーー税制変更と航続距離の不安が戦略を動かす

中国の各自動車メーカーではここ数年、プラグインハイブリッド車(PHEV)やレンジエクステンダー付きEV(EREV)への傾向が強まっていたが、今年は一転して、日本メーカーの得意分野であるストロングハイブリッド車(HEV)に関する出展も目立った。吉利汽車(Geely)や奇瑞汽車(Chery)、長安汽車などは揃って新たなHEVシステムを発表、これまでのEV開発で培った技術をフィードバックした新世代のシステムであることを強調した。

脱EV一辺倒 中国・吉利、熱効率48.41%の新HEVシステム発表

中でも、奇瑞汽車の新システムは、通常は駆動用バッテリーに1〜1.5 kWh程度のものを搭載するところ、それよりもはるかに大容量な5 kWhクラスを採用している点をアピールした。このおかげで従来よりも多い領域でのモーター走行が可能となり、より低い燃料消費率を実現できるとしている。

中国では2026年からPHEVに対する取得税の優遇措置が「全額免除」から「50%減税(上限1万5000元)」へ削減されるなど、以前よりもBEVやPHEVにおける導入コストの安さを享受しづらくなっている。いまだ根強い航続距離に対する不安も相まって、各メーカーは新たな選択肢としてHEVラインナップの強化も図っている。

シャオミ「SU7」が火をつけた電動スポーツセダン

スマートフォン・IoT家電大手のシャオミにとって初の自動車「SU7」が大ヒットを記録して以降、中国では同様の電動スポーツセダンが流行りを見せている。ファーウェイもその流行りに追随する存在のひとつで、同社が上海汽車に製造を委託するブランド「SAIC(尚界)」からはSU7をライバルに見据える「Z7」が登場した。

Z7はSU7のようなクーペ風ボディを持つ4ドアセダンだが、一方で大きく異なるのはリアゲートを追加した5ドアモデル「Z7T」も用意する点で、これはSU7もベンチマークとして掲げた独・ポルシェのBEV「タイカン」と「タイカン クロスツーリスモ」を意識していると言える。Z7はバッテリー容量81 kWh/モーター出力354 hp、100 kWh/354 hp、100 kWh/582 hpの3グレードを用意、メーカー希望小売価格は21万9800〜29万9900元(約500〜700万円)と、スペックと価格の両面でSU7に真っ向から勝負を挑む。

シャオミ新型EV「SU7」、発売3日で3万台受注予約 テスラ「モデル3」の約2カ月分に迫る

ファーウェイは他にも、広州汽車との「奕境(エピックランド)」、そして東風汽車との「啓境(アイスタランド)」の2ブランドを新たにローンチさせ、手がけているブランドはこれで7つとなった。アイスタランドからは先述のZ7Tと同様の純電動5ドアスポーツワゴン「GT7」が登場したが、スペックが酷似しており、グループ内でのキャラ被りが気になるところだ。

アイスタランド GT7 (加藤ヒロト撮影)

実用的なSUVやミニバン以外にも、スポーツセダンやスポーツワゴンといった趣味性の強いEVにも挑戦できるのは中国メーカーの面白い点と言える。一方でそれらには欧州や日本メーカーが紡いできたような歴史、ブランド力、カリスマ性は無く、どれも似たり寄ったりな「金太郎飴」のようなEVばかりだ。

中国市場では欧州のハイパフォーマンスEVは輸入車扱いとして販売価格が高騰するため、中国勢の価格優位性が確保できる。一方で、海外展開においては国内価格の維持は難しく、伝統メーカーのブランド力にも及ばない。性能とブランド力の両面で鍛え上げるには世界的なモータースポーツ競技への参戦もひとつの手段であるが、現状どの中国メーカーも本格的かつ長期的な参戦を視野に入れていない現状を見ると、中国のハイパフォーマンスEVが真に世界で受け入れられるのはまだまだ先のことになりそう。

BYDの圧倒的物量作戦

BYDの超急速充電「閃充」(加藤ヒロト撮影)

比亜迪(BYD)は1つのホールを丸ごと借り上げ、自社が展開する4ブランドのブースや1.5 MW級の急速充電「閃充」、そして高度運転支援機能「天神之眼」の技術展示で会場を埋め尽くした。

BYD高度運転支援機能「天神之眼」の技術が展示された(36Kr Japan撮影)

主力ラインナップ「海洋シリーズ」からはセダンとSUVのフラッグシップ「Seal 08」「SeaLion 08」、「王朝シリーズ」からは「元PLUS」のフルモデルチェンジを発表した。元PLUSの現行モデルは日本でも「ATTO 3(アットスリー)」として販売されており、完全にプラットフォームを刷新してボディを拡大した2代目モデルの投入にも期待だ。

BYD シール(加藤ヒロト撮影)

また、欧州市場への本格進出を先日発表したBYDブランド「騰勢(DENZA、デンツァ)」からは電動スポーツカー「Z」の量産モデルを公開し、まずは4人乗りのオープンモデルから発売するとした。これらに加えて「方程豹(Fangchengbao)」ブランドからは「方程S」のプロトタイプを発表、シャオミ SU7が切り拓いた電動スポーツセダン市場への参入を強めていく形だ。

DENZA N9(加藤ヒロト撮影)

BYD傘下高級EV「DENZA」が欧州上陸、価格は2000万円超 1500kW超急速充電で地元勢を圧倒

日系メーカーの「現地化」の明暗

日産が発表した「テラノPHEVコンセプト」(加藤ヒロト撮影)

日系メーカーの出展内容は例年と比べて落ち着いた印象で、世界初公開モデルよりも中国で発売したばかりの新モデルを中心とした展示となった。その中でも日産は新たなPHEVコンセプト「テラノPHEVコンセプト」「アーバンSUV PHEVコンセプト」の2モデルをお披露目し、1年以内に中国市場で量産モデルを販売すると明かした。前者は1990年代、日本でのかつての「RVブーム」で流行った車種の復活を告げるものであり、発表の様子は大きな反響を呼んだ。ほかにも、4月に発売した中国向け電動SUV「NX8」やPHEVのピックアップトラック「フロンティア プロ」、そしてフルモデルチェンジを果たした小型セダン「シルフィ」などを展示し、幅広い選択肢を揃える「現地化」戦略をアピールした。

日産以外にはトヨタ/レクサスやマツダ、ホンダがそれぞれブースを構えた。トヨタでは3月に発売した純電動セダン「bZ7」を前面に押し出しつつ、需要の高まるHEV車種や自動運転タクシー用車両も展示した。

トヨタbZ7(加藤ヒロト撮影)

マツダはここ最近、毎年新車種を発表していたが、今年は2025年に発売した電動SUV「EZ-60」の「午年記念モデル」を発表するにとどまり、来年以降はまた新たなEVをお披露目すると予告した。一方で中国での業績が悪化の一途をたどるホンダは新車種の発表はなく、他の日系メーカーと比べて閑散としていた印象を受けた。中国向けに投入をかねてから予告していた5ドアスポーツBEVも開発が中止になったとされており、立て直しに向けた「次の一手」が不可欠な状況だ。

マツダ EZ-60午年記念モデル(加藤ヒロト撮影)

自動車の祭典ではあるが、今回気になったのは会場内のあちこちで「ロボット」が出展されていたという点だ。同時期に北京市内で人型ロボットのマラソン大会が開催されていたことも影響していると考えられ、複数の中国メーカーのブースでは受付やメインステージ前に二足歩行・四足歩行ロボットを立たせて来場者に自動車以外の技術も実証してみせた。

北京ハーフマラソン、人型ロボット300台が公道を疾走 日中連携の可能性も

(文:中国車研究家 加藤ヒロト)

日本企業のDXを促進するプラットフォーム「CONNECTO」
無料コンテンツ公開中

最新記事