全固体電池量産の壁、「超臨界コーティング」で破る 中国新興、蓄電市場から商用化
中国の全固体電池メーカー「純鋰新能源(Lipure Energy)」がこのほど、プレシリーズAの追加ラウンドで北京亦荘国際投資発展(E-Town Capital)から数千万元(数億円)を調達した。資金は製品開発、市場開拓および生産ラインの建設に充てられる。
純鋰新能源は2022年5月に設立され、23年4月には北京市郊外の亦荘鎮にある北京経済技術開発区に小規模パイロットラインを建設して、容量10Ahの全固体電池セルの生産を開始した。同年5月には河南省開封市蘭考県で500MWhの量産ラインの建設を開始し、24年10月に50Ahの全固体電池セルの量産を実現。25年に打ち出した第1世代の全固体電池は、中国合格評定国家認可委員会(CNAS)認定機関による安全認証(CNAS GB/T36276-2018)を取得している。
超臨界コーティングで「固固接触」の課題を解決
全固体電池は、エネルギー密度の高さと本質的な安全性を兼ね備えていることから、業界では次世代電池の「大本命」とされている。しかし固体電解質は、液体電解質のように電極との間に浸潤することができないため、容量の減衰につながってしまう。この「固固接触」が全固体電池量産の最大の課題として立ちふさがる。
純鋰新能源の打ち出した解決策は、有機・無機複合の固体電解質だ。酸化物とポリマーを組み合わせたもので、酸化物のイオン伝導率や性能の高さと、ポリマーの強みである柔軟性や加工のしやすさ、コストの低さなどを兼ね備える。創業者の楊帆氏によると、同社は三元共重合ポリマー材料と新型酸化物材料を独自開発し、両者の効果的な結合に成功した。
キーテクノロジーの「超臨界コーティング」では、材料を超臨界状態(液体でも気体でもない状態)にしたうえで粒子材料の隙間に均等に浸透させることで、固体電解質に液体電解質と同等の浸潤効果を持たせることができる。楊氏はより重要な点として、超臨界コーティング技術を用いて開発した全固体電池は、実際の利用時に加熱や加圧を必要としないことを挙げ、この点が商用化の重要な基盤になると強調した。
第1世代の全固体電池にはリン酸鉄リチウム正極とグラファイト負極を採用しており、エネルギー密度は200Wh/kg以上、サイクル寿命は6000〜8000回、充放電レートは1C(1時間で満充放電)となり、二輪車や低速モビリティ、蓄電システムなどに活用できる。楊氏によると、原材料の価格が低いことや歩留まり(率)の高さにより、すでに大幅なコスト削減に成功して市場競争力を獲得しているが、生産規模を拡大すればさらなるコスト削減が見込めるという。
まずは蓄電市場参入から
「中国固体電池産業発展白書(2025年)」では、2027年に全固体電池の小規模量産が実現し、30年にはより大規模な出荷に移行できるとの予測を示している。
純鋰新能源は現在、蓄電市場への参入を優先しつつ、低速モビリティの動力向けなどで検証を進めている段階だ。
蓄電用途では、全固体電池の安全性の高さが際立つ。また、高いサイクル性能を備えているため、使用寿命が向上し、ライフサイクルコストの低減につながる。すでに国家電力投資集団(SPIC)や国家電網(State Grid)、北京能源集団(Beijing Energy Holding)などと共同プロジェクトを立ち上げている。
低速モビリティについては、2025年6月に北京経済技術開発区で電動二輪車の電池交換実証プロジェクトを立ち上げ、全固体電池1500個、車両1000台、ロッカー型の電池交換設備100個分を投入。運用評価によると、航続距離は従来の30〜50kmから最大100kmまで高め、使い勝手も大きく向上した。
高速モビリティについては、電動バイク向け製品の開発が完了し、市場投入を段階的に進めている。これと並行し、乗用車および商用車のトップメーカーと共同で、駆動用全固体電池の開発を展開している。

河南省蘭考にある純鋰新能源の生産ライン
目下、500MWhの量産ラインが稼働しているほか、1GWhクラスの生産ラインの建設も進んでおり、2026年内の操業開始を予定している。26年は売上高1億元(約23億円)突破を目指しつつ、よりエネルギー密度の高い製品を開発し、より広い用途の動力電池や消費者向けドローン、ロボット、ポータブル電源などに対応していく方針だという。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・田村広子)