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10月13日、新興自動車メーカー「天際汽車(ENOVATE)」がこのほど50億元(約780億円)を調達したことが分かった。インベスターは地方政府の産業引導基金と大型国有銀行だ。調達した資金は今後、新車種の開発やスマート製造、販売チャネル、サービス体系の構築、ブランドPRなどに充てられる。
同社はIPOの申請手続きを進めており、2021年の上場を計画している。同社CEOの張海亮氏は「上場するまで、手元の資金でまったく問題ない」と自信をのぞかせている。
業界に詳しい関係者は、出資者は天際汽車の電気系統、スマート運転、コネクテッドカー(ICV)などの分野における研究開発力を見込んでいるという。張海亮CEOはこれまでも、今後の方向性に関してはしっかり自社の手中に収めているとの発言を繰り返ししてきた。「ソフトウエアに力を入れている。スマートコックピットのHMI(マンマシンインターフェース)とクルマ全体の電気制御だ。この二つはコアとなる部分で、自社開発をしなければならない」とも述べている。
天際汽車は今回の資金調達後、ブランド体験ができる天際センター、販売を行うスマートスペース、安心安全な工場、アクセスしやすい販売店網を作り上げる計画だ。2020年末には20都市で30店舗を目指す。2025年までにはすべての一級・二級都市と一部の三級都市をカバーし、販売店舗数を200店超にする。
このほか、天際汽車は中国国有送電最大手の「国家電網(State Grid)」、EV用充電スタンド「星星充電(Star Charge)」などの充電サービス関連企業と提携し、地域社会、ビジネスエリアや高速道路などをカバーするクイック充電ステーション、専用の充電スタンド、公共用充電スタンドなどの充電サービス体系を整えていくという。
天際汽車は中国の新興自動車メーカーで、その前身は2015年に創設された「電咖汽車(Dearcc)」だ。2017年にミドル・ハイエンド路線をスタートした。同社の開発チームの多くがフォルクスワーゲン、GM、米自動車部品サプライヤーの「アプティブ(旧デルファイ・オートモーティブ)」、自動車部品大手のドイツ「ボッシュ(Bosch)」、ドイツの自動車部品メーカー「コンチネンタル(Continental AG)」など大手自動車メーカーや部品メーカーの出身者で、全従業員の半数を占める。2020年は新興自動車メーカーにとっては厳しい一年となったが、同社は量産への大きな一歩を踏み出した。初となるスマートカー「天際ME7」はユーザーテストをスタートし、9月19日には販売が始まった。新欧州ドライビングサイクル(NEDC)基準で航続距離410㎞と530kmの二車種からの選択が可能で、補助金を使えば販売価格21万8800元(約340万円)~28万9800元(約450万円)となる。
張CEOは「北京モーターショー2020」で、大手自動車メーカーが電気自動車市場に次々と参入し、市場競争が激化しているものの、市場基盤が大きくなればなるほどチャンスも増えるとの考えを示し、「クルマづくりに新旧の差はない」と語った。
販売台数は、新興自動車メーカーのクルマが「走り出せる」かどうかを見きわめる基準の一つだ。新興電気自動車(EV)メーカー「蔚来汽車(NIO)」の2020年1~9月の新車納車台数は累計2万6375台、一か月当たり2930台だった。うち9月単月は4708台となった。中国のEVメーカー「理想汽車(Li Auto)」は同時期の新車納車台数は合計1万8160台、一か月当たり2017台だった。うち9月単月は3504台となった。テスラの中国市場での月別販売台数は数万台規模で安定している。これらに対して販売価格を20万元(約300万円)~30万元(約450万円)に設定している天際ME7がどの程度の市場シェアを得ることができるかは、今のところ未知数だ。
同社の計画では、2021年にはフラッグシップモデルの二車種に加え、小型SUV車ME5を販売する計画だ。2021年の販売目標を2万~3万台、できれば4万台を目指す。この目標達成に向け、都市ごとの販売戦略を採用し、各都市に提携パートナーを一社だけ置くとしている。(翻訳:lumu)
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